オートメーション化のなかで中途障害者の雇用継続を実現
2003年度作成
| 事業所名 | 王子板紙株式会社 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 岐阜県中津川市（中津川工場） 岐阜県恵那市（恵那工場） | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 製紙業 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 209名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 10名
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1.事業所の概要
| 1946年、段ボール原紙の生産を行う「中央繊維工業所」が恵那市に設立され、1949年より「中央繊維（株）」となり、1953年より中津川工場が開設される。1961年より「中央板紙（株）」と社名を変更。2002年10月、王子製紙の段ボール原紙4工場と、高崎三興株式会社、北陽製紙株式会社と中央板紙株式会社が統合され、全国に11カ所の工場を擁する「王子板紙（株）」として新たに出発した。王子製紙（株）が100％出資する子会社となる。 段ボール原紙製造の工程は、まず、原料の古紙をパルパーと呼ばれる坩堝状の撹拌機でどろどろにする。そこから粘着物やビニルなどの不純物を除去し、さらに除塵、叩解をして製紙に適合するように繊維を調成する。それを抄きあげプレスで機械的に絞り、ドライヤーで乾燥させて紙ができる。広大な構内に最新式の巨大な機械が設置され、轟音とともに運転される様子は、見る者を圧倒する。 工場の従業員は、中津川工場が60名、恵那工場が100名で、事務部門の従業員は49名である。中津川、恵那工場とも、主要河川のほとりにあり水資源を豊富に利用でき、またJR中央線の駅近くの交通の便が大変よい所に立地している。 |
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2.障害者雇用の状況
| 中津川工場、恵那工場合わせて10名の障害者が就労している。すべて、以前から働いていた人が病気、事故などで中途障害を負い、障害者として認定を受け、職場に復帰し就労を続けている。 中津川工場には、6名の身体障害者が就労している。障害者の統括をするTさんは、ご自身脳梗塞で入院していたが復帰し、障害認定を受ける予定である。なかには岐阜県身体障害者福祉協会の副会長という要職にある者もいる。恵那工場には、4名の身体障害者が就労している。 全員が、上肢あるいは下肢障害で、障害の等級は3級から6級（中～軽度）のいずれかである。勤続30年～40年という人も多く、組長、操業長などの役職にある者もいる。 |
3.勤務時間や労働条件
| 部署ごとに仕事に必要な人数が決まっており、休むと補充しなければならない。3交代制で、7～15時、15～22時、22～7時という勤務帯である。したがって、障害者といえども、夜勤を含めふつうに働ける人を前提としている。また、製紙工場ということで制約もあり、特別に障害者に対して環境整備をするということはしていない。現在の障害認定を受けた人は、基本的にそのままの労働条件で就労を続けている。職務内容も、希望があれば配置転換をしているが、就業できない場所はないので、以前の仕事を続ける場合がほとんどである。就労や生活上の相談は、本社のカウンセラーが対応している。希望があればフォローする体制を整えている。 |
4.安全管理
| 障害者を含めて、就業規則や安全管理などについての教育や訓練は、日常的に実施しており、相互に注意し配慮し合う良好な人間関係ができている。 特に、安全管理には気を遣っており、作業は遠隔操作が基本である。回転している機械が多く、危険な部署は直接人が関わったり機械に触れることはない。点検保守、修理のとき機械を止めるが、そういったときに事故が起きやすいので、危険予知訓練を怠らずに実施している。 |
5.今後の展望
| 段ボール業界は、中国や東南アジアの生産が伸びてきており、また、国内の需要がなかなか伸びない、という状況にある。景気に左右されやすく、物流がさかんにならないと売れない。海外との競争が激しくなるにつれ、コストダウンのために、人件費を削減し機械化、合理化して行かねばならない。したがってこのところ新規に従業員を採用しておらず、今後も厳しい状況は続くと思われる。 |
6.コメント
| 大手製紙会社の子会社で、段ボール原紙を生産する工場である。広い敷地には、資材を搬入したり、製品を搬出するトラックが行き交い、工場内もリフトなどが往来する。見学者も，ヘルメットと脚絆の着用を求められ、構内の安全を確認しながら案内していただいた。安全第一ということは、当たり前すぎるモットーだが、それが言葉だけでなく細心の注意をもって励行されていることがひしひしと感じられた。 障害者は、中軽度の方が大半だとはいえ、すべて同じ労働条件で働いている。障害を負っても、同じ仕事を継続できるということは、当事者にとって非常に心強いことであろう。そのための物理的な、あるいは情緒的な支援も当然必要になると思われるが、これまでのサポート体制に加えて、王子グループが蓄積してきたノウハウがこれからも活かされることであろう。 |
| 執筆者：中部学院大学短期大学部助教授 稲垣 貴彦 |
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