能力に見合った作業の割り当てを
2003年度作成
| 事業所名 | 株式会社三重ニック | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 三重県度会郡度会町 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | クリーニング業 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 39名（平成15年12月末現在） | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 11名
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1.障害を持った方の雇用のきっかけ
| 株式会社三重ニックは平成6年に操業を開始した。創業時において、会長と社長の意向が『地元に少しでも貢献できるような事業所』を目指していたことから、地元の住民を雇用する中で、障害を持った方にも一般の人とともに作業をする中で一定の役割を持ってもらいたいと考えた。地元の知的障害者更生施設や公共職業安定所にも相談をして、その知的障害者施設の利用者の方を雇用したのが最初のきっかけとなった。 |
2.三重ニックの仕事は・・・
| 株式会社三重ニックの業種はクリーニング業であり、主に病院や高齢者福祉施設等から、大量のオムツ、タオル、おしぼり、寝具（寝間着）、シーツ類などを引き受けている。オムツは様々な色があり、それに加えてサイズ別に分類をしなくてはならない為非常に手間がかかる作業である上に、夏場は乾燥機を設置しており非常に暑いとの話であった。また、引き受け先によっては機械たたみでよいものと、そうでないものがあり、意外と人の手を必要とする作業でもある。 |
3.障害者雇用の状況
| 平成15年12月末現在で、身体障害者手帳の交付を受けている方が2名、療育手帳の交付を受けている方が9名で、合計11名の方が在籍している。全従業員（アルバイト等を含む）にしめる割合は、およそ28％になっている。操業当初から在籍している者が4名で、現在までで8年7ヶ月在籍をしている事になる。その他の方を含めた平均の在籍期間は約5年になっている。もちろんこの中には最近採用した方も含まれるので、一概には言えないかもしれないが、定着率も比較的安定しているものと考えられる。過去に退職をされた方については、障害の程度が重度化し、作業に耐えることが困難となったり、高齢のために自己退職といったケースであった。 職業能力判定では全員が重度の判定となっており、全員が最低賃金除外申請を受理されている。しかしながら、その中でも若干の昇給は実施されており、直近では2名の方の時給を引き上げた例もある。 |
4.素直に、やるべきことを地道にしていれば
| ここまで雇用が継続している要因として、障害を持つ従業員が『素直に、やるべきことを、地道にしている事』を工場長は挙げておられた。工場としては『障害を持つ従業員に対してノルマを課すようなことはなるべくせずに、本人が1日に出来る事を、出来るだけすれば良い』という考えを持っているそうである。これが結果として長期に渡る雇用につながっているのではないかと、工場長は話をしておられた。 この他に、雇用継続の要因としては、トイレ休憩や水分補給などは各自が必要な時に必要なだけとることが認められていることが挙げられる。クリーニング工場であるので非常に暑く、水分補給が必要不可欠である事もその要因となっているのだと考えられるが、障害を持つ従業員も自分たちの役割を理解しているので、過剰に休憩を取ることもあまりないようであった。 |
5.他の従業員との関係は
| 作業における従業員との関係は『特に問題はなく、障害を持っている方のほうから職場に順応しているようにも思われる。また、日常的な対話を通じて、それぞれの障害を持つ従業員に対する配慮は行き届いている』と、作業場のリーダーの方は言っていた。 アフターファイブでの交流については、工場と施設の間をバスで送迎をしている為に、他の従業員との交流は全くない。また、休日での交流についても、ほとんどの方が施設に居住している事もあり、施設の夏祭りに参加する程度という事であった。 しかしながら、職場での福利厚生については『花見や従業員同士の食事会等には可能な限り参加をしてもらうようにしています。』と工場長が話しており、機会としては限定されるが、年に数回全ての従業員が参加する形での食事会や行事に参加をしているという事あった。 |
6.障害を持つ従業員の作業内容
| 障害を持つ従業員の作業内容は、主に作業補助と呼ばれるもので、女性の場合は、オムツやタオル、おしぼりを伸ばして拡げる作業をしている方がほとんどとなっている。この作業は、次にたたむ作業をする人がいるわけだが、それの前準備という位置づけでなされているものである。また、男性の場合は、大型乾燥機から出てきたオムツを、たたむ作業をする場所に移動させる作業をしたり、大型の洗濯機に種類ごとの洗濯物（オムツやタオル、おしぼり、シーツ等）を投入し、洗濯機から乾燥機へ投入する作業などをしていた。 また2日に1度、シーツをたたむ作業があるということで、シーツを1枚ずつ広げて、機械たたみの準備をする作業なども設定されていた。作業内容は1日におよそ4種類程度あり、作業変更についてはその都度担当の従業員から指示が出るとのことであった。ただ、作業内容はある程度安定して出来るものを選択しており、戸惑うことが無い様に配慮されていた。 これらの作業については、勤続年数が長い人であれば、体で覚えている為にほとんど指示がなくてもこなしていき、経験が浅い人も指導者の指示によって安全に作業が行えるように配慮がなされていた。 |
7.助成金を活用しています
| 男性が従事している作業場は非常に高温になる為に、助成金を活用し扇風機を増設したとのことである。また工場内の段差をなるべくなくす為に作業場をフラットにしたり、手元が見やすくなるように照明の照度を上げるなどの設備についても助成金を活用している、とのことであった。 工場としては、重度障害者介助等助成金を活用して業務遂行援助者を2名配置して5名の障害従業員の作業指導に当たっており、また重度障害者特別雇用管理助成金（第3種か継続雇用）によって1名の援助者を配置して3名の障害従業員の作業指導に当たっている。それ以外の障害を持つ従業員に対してもほぼ1対1に近い形で指導をしているとのことである。 この他に工場として対応していることに、障害を持つ従業員のほとんどは施設から通勤をしているが、その送迎をしている事が挙げられる。若干名は同じ工場に勤務している親と出勤してくる方や、バスで通勤している方もいるが、それ以外はすべて工場から車を出しており、職場定着の大きな要素となっているようである。 |
8.今は苦労していることはないのですが
| 現在では雇用面で苦労していることはほとんどないが、実習生の受けいれ時には苦労していることがあるとのことだった。実習期間中、常に落ち着きがなく周囲がどうしても気になるようで、いくら指導しても作業を継続する事が出来なかった方や、理解不能な行動をとり他の従業員に迷惑をかける方、次の作業移動指示に従うことが出来ない方、この他にも実習時間中にトイレに行くといったまま帰宅してしまう方などがおり、対応に苦慮されたそうだ。時々、地元知的障害者更生施設の職員が訪問され、障害を持つ実習生と話をしてくれてはいるが、それでも対応できない方には実習を断ることもあるとのこと。 今後のことについては、『事業量が拡大すれば、積極的に障害を持つ人を採用していきたい』と工場長は話していた。『障害を持っていても、社会の一員である事を自覚してもらいたい。そのためには自分たちと一緒に働くことが良い』、だから『今後も障害を持つ人が働ける場所を作りたい』という事も挙げておられた。課題として、『障害者雇用には家族の方の会社（工場）に対する理解が必要だ』とも工場長は話していた。そのために今後、可能であれば家族と工場とで話し合いをする場を持ち、障害を持つ方の仕事をしている状況を直接見てもらうなどの工夫が必要だと言っておられた。 |
9.まとめにかえて
| 株式会社三重ニックにおいて、障害者雇用を9年近く継続できている要因には、一つに企業としての意識の高さがあると考えられる。地域に根ざして事業を行うために、地元の方を採用する事はどこの事業所でも同じだが、障害を持っている方に対しても同じ様に門戸を開き、可能な限り働く場所を提供するという姿勢がうかがえた。 障害を持っていても、社会の一員としての役割を、事業所の中で他の障害を持たない従業員と共に働く事によって持ってもらいたい、また障害を持っていても社会の一員であるという事を自覚してもらいたい、という積極的な姿勢を今後とも継続・発展されることと期待したい。 |
| 執筆者：佛教大学大学院博士後期課程社会学・社会福祉学研究科 尾崎 剛志 |
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