「障害者に働く場を」と「非鉄金属リサイクル」を会社設立の柱に
2003年度作成
事業所名 | 株式会社 アクス | |||||||||||||||||||||
所在地 | 本社工場 京都府綴喜郡宇治田原町 第2工場 長谷山工場(リサイクルプラザ エコ・ポ-ト長谷山) | |||||||||||||||||||||
事業内容 | 廃家電のリサイクル事業(非鉄ミックスメタルの選別業務) 缶・びん・紙パック・ペットボトル等の再資源化処理事業 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 30名(本社工場 12名、第2工場 18名) | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 21名
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1.事業所の概要
(1)企業理念 |

株式会社 アクス は、ハンディを持つ人達も、全員が労働を通じて社会参加し、自立を目指すと同時に、リサイクル、エコロジー、ノーマライゼーションを共有し、社会に貢献しようと会社の名称を愛(Ai) 協調(Kyocho) 進歩(Sinpo) の三文字の頭文字から「アクス」と名付け、「愛」「協調」「進歩」を会社の基本理念としている。 |

(2)会社の設立 |

昭和61年5月1日 |

(3)代表者 |

代表取締役社長 山田 季定 取締役工場長 山田 美智子(人事・労務担当責任者、職業生活相談員) |

(4)障害者の担当職務 |

ミックスメタルの選別作業(本社工場・・・・・3名) 缶・ビン・ペットポトル類の選別、圧縮作業(長谷山工場・・・・・18名) |

(5)障害者の勤続年数 |

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(6)障害者生活相談員 9名 |

障害者が配置されている選別ライン等に配置され、選別業務を自らも行いながら、一人ひとりの障害者の特性、適性などを把握・理解し、それに適合した仕事上の指導や生活面の指導・援助などに従事している。 |

2.障害者雇用の経緯
個人形態の「山田商店」として、素材販売のみの金属問屋業を経営してきたが、金属廃棄物のリサイクルに事業を拡大し、平成61年2月、(株)アクスを設立した。 新しくはじめた 「非鉄金属のリサイクル(選別と再利用)事業」 は、15~16種の非鉄金属(主に、ミックスメタル)の選別を手作業で行わなければならないため、多くの人手が必要で従業員の雇用を考えなければならなくなった。会社の設立に際し 「障害者に雇用の場を提供する」という目標と、地球環境問題である 「非鉄金属のリサイクル」よる社会への貢献を目指した。 さらに、平成12年2月から、城南衛生管理組合(別添資料1)から、「資源ごみ」 の再資源化の処理の委託を受け、再資源化処理施設(リサイクルプラザ「エコ・ポ-ト長谷山」)内において、缶・びん類・ペットボトルの再資源化のための選別等の処理(委託9事業を行うこととなり、従業員も大幅に増員した。また、平成16年2月17日、環境マネジメントシステム ISO14001:1996の適合が確認された。 作業の内容は、磁石等では吸引されない破砕金属や、材質、形状、大きさなどがそれぞれ異なる資源ごみ(缶・びん類・紙パック・ペットボトル)を、機械的、自動的に分別、選別することができないため、その形、デザイン、色・艶や大きさ、重さ或いは破壊面の形状などによって、人間の目と手を使った選別作業である。選別の作業は、高度な或いは特別な技術・技能・知識が求められるものではないが、ひたすら分別、選別を繰り返す必要のある単調な仕事である。 障害のある人達の就職が難しいことを聴いていたことから、何の知識も持ち合わせないまま単純に車いすの人や聴覚障害者或いは知的障害者達が分別、選別の手作業に向くのではないかと考え、「京都障害者職業相談室」(京都七条公共職業安定所)を訪ねて相談し、最初に紹介を受けたのが聴覚障害者と知的障害者であった。 初めて手掛けた障害者の雇用は、予想以上の厳しい壁に突き当たり、失敗や試行錯誤を重ねたが、「職業相談室」や養護学校の先生方のアドバイス、励ましにも支えられ、障害者の雇用を続けている。現在では社員30名のうち、知的障害者21名を雇用しており、定着率も高い。「自閉症者」も頑張っている。 |

3.知的障害者が安心、安定して働ける作業工程の見直し、職場環境の整備
障害者の雇用を経験し、試行錯誤を重ねるうちに、障害やハンディをもつ人を雇用するには、各障害者がもつ個性、適性(隠れた能力を含め)などを的確に把握し、障害者を理解することから始まることを認識した。それとともに、障害者の能力(特性)に適合する一定範囲に絞った仕事に従事できるよう、作業工程を手直し、改善や機械機器の開発、導入を行った。さらに、職場における安全対策に万全を期すことなど、積極的に職場環境の改善整備をすすめた。 ※ 別添資料2 「再資源化処理の作業工程と障害者の配置」 参照 |

(1)工程と設備の見直し |

破砕金属(銅、アルミ、ステンレス等)の選別作業を、複数の従業員で進められるよう、作業設備をコンベアシステムに改良した。分別、選別作業は、資源類がベルトコンベアによって流れる過程で、目と手を使った手作業によって、そこに配置された全員(障害者と指導員)の協同作業で選別作業を担当する仕組みを取り入れている。 長谷山工場の再資源処理施設では、資源ごみの搬入から分別、選別、圧縮、梱包、出荷等の作業を、徹底した機械化、自動化された作業工程で流している。その節目節目において、障害者が担当する分別、選別、搬送作業を配置している。 | ![]() 本社工場でのミックスメタル選別作業 |

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(2)災害防止 |

機械には安全停止装置などを完全に取り付け、災害防止に万全を期している。 |

4.「指導員」とのペア配置と障害者の育成指導方針
(1)指導員の配置 |

各障害者の職場には「指導員」(社員)を配置し、障害者と同じ作業に従事しながら、必要に応じて障害者に対する個別指導や障害者が行った仕事のチェックやフォローなども行っている。障害者と指導員が同じ立場や同じ目線で同一作業をすることにより、障害者も一体感、安心感を持ち、仕事への励みになっている。健常者は9名全員を「障害者職業生活相談員」に任命。実務に従事しながら、障害者の個性・適性、特性などの把握や作業にかかわる指導、育成また職業生活に係わる相談援助なども担当している。 |

(2)障害者に対する会社の育成方針 |

障害者といえども、企業に雇用されている限りは仕事をしてもらうことが基本。 「働くことの厳しさ」を具体的な体験をとおして知ってもらうことを日頃から心掛けている。 また、実際の仕事のやり方やその結果などをとおして、各障害者が持つ能力(隠れた能力も含め)を見極め、各人毎にどのような支援が必要か、また協力出来ることはなにかを見極めることとしており、障害者と一緒になって頑張っていくことを当社の人事方針としている。叱るときも本気で叱り、叱りながら一生懸命褒めるところを探しておくよう心がけており、叱られ、褒められながら少しづつでも育ってくれることを期待している。 社長の口癖「やったらやれるんや、やらさへんだけや」。また、工場長「やって見せ、言って聞かせて、やらせて見せて、褒めてやらねば人は動かじ」 の言葉。それぞれ、この社の障害者に対する指導・育成理念を言い表しており、そのとおりのことが職場で実践されていることをひしひしと感じる。 |

(3)社内体制 |

「障害者職場定着推進チ-ム」を昭和63年12月編成。社長と障害者職業生活相談員で構成している。 月1回、「推進会議」を開催し、職場における作業状況、問題点や職場適応、定着等に係わる指導、援助に関する協議や個別のケース会議を行っている。 |

5.他の障害者の環境整備、育成対策、定着対策
(1)障害者とのコミュニケ-ションと 「父母の会」 |

「障害者職業生活相談員」7名を障害者が就労している現場に配置し、同種の選別作業を障害者の傍らで一緒にしながら、指導、育成とコミュニケ-ションを図っている。 |

「父母の会」を当初に結成し、父母(保護者)との連絡等を図って来たが、現在では、会社としては「父母の会」の自主的運営に任せている。会社では毎年、「花見会」 と 「忘年会」を実施している、その際には「父母の会」に連絡し、障害者と一緒に楽しんでもらうようにしている。 職場適応上の問題が生じた場合などは、当該(関係)障害者の父母や、場合によっては「父母の会」と連絡をとり、協議、対策等を講じることがある。 社長としては、障害者の父母(保護者)には、障害者を自立させ、社会参加させるという育成義務が会社と同じ様にあると考えている。 | ![]() 社員休憩室・食堂(一部)(長谷山) |

(2)通勤バスの配車 |

毎日、出勤時と退勤時には、近鉄 「大久保駅」 から通勤バスを運行している。 |

6.今後の課題、展望
(1)今後の課題は |

知的障害者がほんのわずかづつではあるが成長していることに気づくにつれて、知的障害者が個々に持っている特徴(隠れた能力も)を引き出し、職域の拡大を図りたい。また、多くの障害者の雇用の拡大を目指したいと考えている。 |

(2)将来への夢は |

定年等でリタイヤした人達とも一緒に働ける共同作業施設等を作りたいと夢を描いている。 別添資料.1 【城南衛生管理組合】 1. 城南衛生管理組合とは 宇治市、城陽市、八幡市、久御山町、井出町の3市3町が、環境廃棄物行政の推進のために作った特別地方公共団体 (所在地)京都府八幡市 2. 業務の内容は [1] ごみの処理、処分、リサイクル [2] し尿の収集、運搬、処理、処分 [3] し尿処理手数料の徴収 [4] リサイクルプラザの運営 [5] 広報紙の発行など広報啓発活動 3. リサイクルプラザ(エコ・ポート長谷山)ノノ資源化センター・リサイクル工房 (事業内容) 「容器包装リサイクル法」(平成7年6月広布、9年4月施行)を具体化させるため、また、リサイクル社会の構築に向けてのPR活動を行うため設置、次の機能をもつ
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執筆者:労務管理サービス牧岡事務所 社会保険労務士 牧岡 健治 |

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