知的障害者福祉工場における雇用拡大と職場定着に向けた取り組み
2003年度作成
| 事業所名 | 社会福祉法人桃の木会 知的障害者福祉工場マルワック | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 和歌山県那賀郡桃山町 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | ホテル向けリネン品の洗濯業務 洗濯主要製品 シーツ、掛カバー、包布、枕カバー、タオル類、クロス類、ナプキン、ガウン、浴衣 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 56名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 32名
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 全景 |
1.設立の経緯
| 社会福祉法人桃の木会は、平成6年6月に福祉工場と福祉ホームを併設した施設の設立を和歌山県知事に申請し、平成6年7月5日に設立認可をいただいた。 設立母体である株式会社丸和の代表者が、自社工場で雇用していた障害者の就労状態に鑑み、作業能力がありながら対人関係や健康管理が上手く出来ないために、一般企業に就労の機会が少ない障害者に雇用機会と雇用の場を提供できる施設として、桃山の第二工業団地内に工場用地（10,035.25m2）を求め、この内4,452.44m2を株式会社丸和から社会福祉法人桃の木会に贈与し、障害者雇用を主体とした福祉工場「マルワック」（定員30名）と、福祉ホーム「ローズ桃山」（定員26名）を設置することとなった。 建築工事は約1年を要し、平成7年6月に完成、工場機械設備設置に約3カ月かかり、平成7年10月1日にようやく稼動するに至った。 操業当初は、施設入所者に雇用の場を提供することから始め、自宅待機者や一般企業で就労しているが職場に馴染めないでいる者の雇用を積極的に行なった。 しかしながら、開設当初は雇用しても仕事に慣れず離職する者も多く雇用の増加はなかなか見込めず、雇用の拡大と職場定着に向けた取り組みが必要とされた。 |
2.雇用拡大と職場定着に向けた取り組み
| 平成9年からは、雇用の安定を図るためにも各養護学校への求人募集や、就職を希望する者の就労と福祉ホームでの宿泊体験の場を提供し、雇用の拡大と定着化を図った。 こうした取り組みにより徐々に定着率が高まり、途中採用から定期採用へのシフトと、若い労働力の確保による作業能力のアップにもつなげることができた。 また、職場定着に向けては以下のような各種の取り組みを行なったことにより、大きな成果を得ることができた。 |
（1）従業員とのコミュニケーション |
| 従業員ひとり一人に指導員がケース担当として張り付き、何か問題が起これば自分の担当指導員に相談するシステムをとっている。 そして、原因が他の従業員にある場合や、担当部署でのトラブルといった事も多いので、指導員会議、ケース会議を毎月1回開催し、その場で問題点を出し合い解決している。 また、担当指導員は従業員への生活指導（整理、整頓、毎日の洗濯）、食事指導、健康管理、金銭管理、買い物支援といったほぼ全般に亘る指導を担当している。 |
（2）作業指導と作業方法の改善 |
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工場内作業風景 |
 福祉工場の作業職場は大きく分けて、［1］不潔職場でのサバキ作業、［2］ミニ連洗による洗濯と乾燥作業、［3］バッチ洗濯と乾燥及び再洗い作業、［4］仕上げ職場でのロール機への投入作業、［5］仕上げ職場での品物受け検品作業、［6］浴衣、ガウンのロール機投入と受け結束作業、［7］タオル類仕上げ作業に分類されるが、それぞれの作業職場には担当指導員がいて、自分も作業をしながら従業員の指導にあたっている。また、基本的には適材適所の考えを入れ配置しているが、同一作業ばかりが続くと厭きがくるのと、作業効率の面でも悪くなる場合もあるので、一部の従業員について定期的に移動して幅広く仕事を覚えてもらうことにしている。 尚、当法人では平成13年7月より、「ISO14001」の認証取得に向けた活動を展開し始めた。 その結果、それまで機械操作についての作業マニュアル位しかなかった各作業の手順書がほとんど作成され、この中でかなり多くの改善が図られた。 そして機械操作の一部について、責任をもって操作できる従業員が育ってくるなどの良い成果も表れてきた。 |
（3）資格、免許取得等への支援 |
| 指導員は勿論のこと、従業員にも自分がどういう資格や免許を取得したいかをひとり一人に働きかけ、これに対する支援を施設長を中心に指導員が協力して推進し、この結果、従業員でフォークリフトの免許1名、アーク溶接技能1名、原付免許1名、ヘルパー2級資格4名の取得者が誕生した。 そして、今またパソコン講習に7名が受講を予定しており、これらは日々働きながらの受講であるため全員の協力が必要であるが、いつかは自分もその立場になることから、全員が協力体制に理解を示してくれた。 |  資格取得「ヘルパー2級」 |
（4）地域行事への参加と余暇活動 |
| 当法人は、開設当初から地域の行事に積極的に参加し、地域との連帯を強めている。 障害者スポーツ大会、桃山町民運動会、桃山町主催「ふれ愛ひろば」へのたこ焼店出店、きらめき健康福祉フェスティバルでのたこ焼店出店、養護学校3校との交流ソフトボール大会等で地域との係わりが当福祉工場の理解にもつながっている。 一方、職場内の親睦や意思疎通を図るために、桃の木会で恒例となっている清水町有田川への日帰りキャンプ（川遊びとバーベキュー、ゲーム大会）や、年2回の余暇活動（パン作り、ケナフ紙すき体験）年1回の日帰りバス旅行等を実施することで、働く意欲の引き出しと職員との意思疎通、従業員同士の親睦に努め、職場での定着化を図っている。 |  和歌山障害者スポーツ大会  桃山町行事「ふれ愛ひろば」 たこ焼き店出店 |
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（5）ボランティア活動 |
| 地域との係わりを深める反面、ボランティア活動にも積極的に参加し、自分達が地域の方々に支えられていることを体験させることも重要なひとつと考えている。 昨年は、加太海岸の清掃ボランティア、重症心身障害児施設でのボランティア活動体験等を実施し、社会に対する貢献、社会の一員としての自覚を促す努力をしている。 |  加太海岸清掃ボランティア |
（6）自立支援に向けた取り組み |
| 当福祉工場は就労の場であると同時に、自立に向けた支援の場でもあり、このことからも、福祉ホームを退去し自立できる環境づくりや、地域との協調といった生活面の支援を福祉ホームで生活する間に進めてきた。 この結果、今年の4月から、民間マンションで自立を始めた従業員が3名出てきた。 そしてこの方々に対する支援として、担当指導員による月1回のマンションへの訪問や、支援費制度によるデイサービス利用にも対処している。 |  ローズ桃山全景 |
（7）実習場所の提供 |
| 当福祉工場は、一般にも養護学校にも実習と宿泊体験を希望する方に開放しており、概ね、年間延べ10名位の方々が実習してもらっている。 実習の評価については、実習日誌や実習終了後にわたす作業能力判定表により、良い点、悪い点や改善点を明確に伝えることにしている。 これにより、就職を希望する方の自信や、就職後の定着に大いに寄与していると思われる。 |
3.今後の課題・展望等
| 当福祉工場は、ここで働く従業員が、労働の面、生活の面、地域との係わりで自立してもらう通過施設なので、工場で働いている期間に一人ひとりの能力を見極め、各種資格や技能の習得を図って将来自立が出来る環境を作っていくことが望まれる。 このため、従業員には機会を見つけて、技能講習や資格取得に挑戦してもらっている。 工場定員は30名であるが、今年度の採用で定員を上回り32名となった。 従って、今後新規雇用が厳しくなってきているので、新しい発想による雇用の創出や、現事業の新規開拓を図って事業収入を確保することが最大のポイントと云える。 |
| 執筆者：社会福祉法人桃の木会 施設長 山田宏泰、事務長 堀田 喬 |
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