仕事をゲーム化し、楽しみながら達成感を
2003年度作成
| 事業所名 | 日本基準寝具株式会社 廿日市工場 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 広島県廿日市市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 病医院を対象としたリネンサプライ業務。 布団・シーツ等の寝具や病衣、手術衣等の洗濯・仕上げとミシンによる補修・縫製作業。 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 92名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 61名
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 廿日市工場外観 |
1.事業所の概要
（1）事業経歴 |
| 昭和38（1963）年 日本基準寝具(株)を設立（東洋観光グループ会社） 昭和60（1985）年 廿日市工場を新設稼働 昭和61（1986）年 障害者雇用優良事業所表彰（広島県雇用開発協会長） 昭和62（1987）年 重度障害者多数雇用事業所認定 昭和63（1988）年 障害者雇用優良事業所表彰（広島県知事） 平成03（1991）年 障害者雇用優良事業所表彰（労働大臣） 平成14（2002）年 ISO9001認証取得 |
（2）廿日市工場の沿革 |
| 廿日市工場の初期は、布団の打ち替え作業を専門に総勢20名足らず（うち障害者10名程度）の人員で行っていたが、想像以上の生産能力・作業品質を発揮するようになり、取引先の評判が上がるにつれて作業量、作業内容も拡大し、同時に障害者雇用数も知的障害者を中心に現在では60名を超えるまでに発展した。 平成7年には布団の打ち替え等部門を佐伯工場に移管し、当工場は病医院を対象としたリネンサプライ業務を専門に行っている。 |
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2.障害者雇用の経緯
| 当初、先代社長に対し障害者を持つ家族から雇用の働きかけがあり、これを発端に、地域社会への貢献の意味からも障害を持つ人の働き場所を積極的に提供するという会社の方針で、ハローワークをはじめ地域の障害者支援団体、同公共団体・教育機関等の協力を得て現在に至っている。 |
3.知的障害者雇用の問題点と解決策
| 当工場で雇用する障害者の85％強は知的障害者であり、これを相手に最初に直面した問題点は、大きく分けて次の2点であった。 ［1］ 勝手に会社を休むので、作業計画に大幅な狂いが生じた。 ［2］ 行事や伝達事項、仕事の内容等の周知・徹底がなかなかできない。 この問題点解決のために、次のような対策を講じ効果をあげる事ができた。 ［1］の問題解決に取った方法は、「欠勤した日は、色を付けてグラフに記入し、誰の目にも一目で分かるような工夫」である。最初は、色の付いた日が多く華やかであったが、徐々に「色の付いた日が多いのは良くないことだ！」という会話が同僚（友達）間でされるようになり、これが相互牽制となって、日に日に欠勤が減り、今ではグラフも不要となった。 ［2］の問題解決には、「ホワイトボードを誰もが出入りする食堂や仕事場の出入り口に設置」し、これに周知・徹底を図らなければならない事項を書き込むことにした。 最初は、漢字にフリガナを打つなどしていたが、これも同僚（友達）相互の会話の中で自然と教えあい、確認することが習慣となり、伝達・徹底事項が確実に行き渡るようになった。 |
4.目標意識と自主性（責任感）の養成
|  2004年工場方針 |
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5.採用と配置転換
| 採用する前に現場2か所程度の実習を行い、「勤労意欲」と「協調性」を主眼に、適所を探り採否を決める。 年1度の配置見直しでは、あらゆる部門の仕事ができることを重点に置いているが、対人関係も加味する。 養成・指導の方針としては、［1］ 来る（勤労の習慣）、［2］ 分かる（人と同じ事ができる）、［3］ できる（目標の達成）という順で行っている。 特に"気"を大切に取り組み、志願と認定の制度を活用している。 |
6.現場責任者の感想と指導方針
（1）業務推進係長 力石 元浩（業務経験3年） |
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（2）洗濯係長 茅野 一彦（業務経験3年） |
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（3）ローラー係長 楠本 あゆみ（業務経験3年） |
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7.福利厚生面の取り組み
（1）レクレーション |
| 社員旅行、花見、カラオケ大会、ソフトボール大会、忘年会等を開催して親睦を図ると共に釣り等野外活動など希望者のみのイベントも行っている。 社員旅行は、三つのグループに分けて実施し、その選択は各自の自主性を尊重している。第一グループは1泊2日の国内旅行、第二グループは2泊3日の国内旅行、第三グループは3泊4日の海外旅行であり、何れも参加率は非常に高い。 |  食堂兼休憩所 |
（2）健康管理 |
| 年1回の定期健康診断は行うが、特別に他の企業と異なった事はしていない。緊急時の対応策は講じているが、障害者と言う事で神経質にならないよう健常者と同様に自然体で対処している。 |
8.今後の課題
| 清水工場長から今後の課題をうかがった。 「最近は、企業の大小を問わず障害者雇用に対する認識は高まってきていますが、同時に雇用する側の質的要求も強くなり、障害者だからという意識も薄れて、健常者であれ障害者であれ、従業員1人は1人であるとの考えが一般的であります。 今後、障害者の活動の場を拡大して行く為には、時代にマッチした人材養成の場の拡大を真剣に考える必要性を感じています。 同時に障害を持つ人の生産能力は、早い人で30才を過ぎた頃から徐々に衰え始め、40才から50才で同僚について行けなくなる傾向にあることは、障害者を雇用される事業所では十分承知のとおりであり、企業にとって生産能力が落ちることは死活問題となり、大きな負担になって来ていることも事実であります。 障害者雇用を更に前進させるためには、授産施設等の整備充実を国と企業が一体となって進めること等、障害者が退職後も安心して生活できるよう真剣に取り組まなければ成らないと強く感じています。」 |
9.執筆者の感想
| 清水工場長から一通りの説明を受けた後、作業場内を案内して頂いた。 作業場に入って従業員（殆どが知的障害者）の方々の活力にあふれた作業態度に出会い、すばらしい活気に驚愕した。一番手前で作業していた従業員（障害者）に挨拶したところ、元気な声で返事が返って来た。見渡すと、ほとんどの作業従事者が真冬にも拘わらず半袖シャツで、素早い態度で作業を進めており、工場長の説明のとおりギネス（最高記録）に挑戦していることが窺え、活力に満ちた作業態度に感心させられた。共同作業現場での作業態度も仲睦まじく、協力しながら作業を進めており雰囲気の暖かさも感じた。 障害を持ちながら各自が一生懸命働いているが、加齢に伴い作業力が徐々に衰え始め、個人差はあるものの、40才から50才での退職を余儀なくされる傾向が強くなり、定年まで働くことは難しいと聞いている。 しかし、定年前に退職を迫ることは企業としては困難であり、大きな負担と成っている。また、事情を察して障害者自身が退職に追い込まれる事実も否定できない。 この解決のために、次の活躍の場、例えば授産施設に類した施設の立ち上げ等、企業努力だけで解決できない部分である障害者の高齢化援助対策が急務であると感じた。 |
| 執筆者：元大竹公共職業安定所長 稲井 誠 |
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