IT産業の担い手として働く
2003年度作成
| 事業所名 | 佐賀三洋工業株式会社 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 佐賀県杵島郡大町町 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 固体電解コンデンサの製造・一部販売 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 532名（平成16年1月31日現在） | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 12名
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1.事業所の沿革
| 昭和44年10月会社設立、昭和45年4月大町町にて固体コンデンサの生産を開始する。以来、OS-CON（有機半導体アルミ固体電解コンデンサ）の開発、ISO9001取得、ISO14001取得、POSCAP（高分子有機半導体固体電解コンデンサ）の生産開始等事業を拡大して、環境を重視したIT産業の担い手として現在に至っている。 障害者については、昭和45年4月の創業当初より、公共職業安定所から身体障害者の雇用要請を受けて採用して以来、採用を続け、平成16年1月現在、12名を雇用している。 |
2.障害者雇用の状況
| 従業員数は532人でその内、障害者の雇用数は12名、雇用率は2.44％となっている。障害者については、昭和45年より、身体障害者を雇用したことから始まり、その後、養護学校や公共職業安定所からの雇用要請等もあり、順次障害者の雇用拡大を行い、現在12名の障害者が本社工場、福母事業所、多久工場で働いている。 このような障害者雇用が進んだ背景には、佐賀三洋株式会社としての社会的責任を果たすという方針のもと、法定雇用率を意識して雇用を進めていったことや、障害者であっても中・軽度の身体障害者がほとんどであり、固体電解コンデンサの製造過程では、移動の配慮は必要でも、健常者とほぼ同じ働きが期待できる状況であったことなどがその要因と考えられる。 障害の種別は、肢体不自由者が10名、そのうち下肢障害8名、体幹機能障害1名、上肢下肢障害1名、内部障害が2名（腎臓・心臓）となっている。これは、作業内容が手先の巧緻性を必要とするIC部品の製造であるため上肢障害の雇用は少ないが、障害があっても可能な作業工程や職種を検討し、そこで職場実習を行い適性に問題がなければ雇用するという方針であるためである。 職種も事務部門、製造部門、技術研究部門とすべての部門で雇用がなされている。 |  外観検査工程  サンプル外観検査  成型工程 |
3.障害者の配置と工夫
| 障害の種別により作業を区分しているのではなく、機械操作の運転、製品の検査・監督、研究・開発、製造機器の修理・点検、事務職、守衛等職種の範囲は広範に及んでおり、障害者本人の能力・適性に基づいて配置されている。 また、障害者の中には、コンデンサ開発の技術者であったため雇用したが結果として障害者であったり、雇用時に障害は無かったが後に障害者になったという場合もある。 |
| 就労の現場で配慮していることは、製品検査を行う場合など、作業台を障害者が出入りしやすい場所に配置したり、製品をできるだけ障害者の近い位置に置けるようスペースを確保する、重量物はすべて台車を使用するなどの工夫がなされている。 このような障害者に対する対応は、障害者だけでなく妊産婦や女性にとっても働きやすい環境となり、腰痛の防止策としても効果を上げている。 |  可動台車への乗せ替え |
4.雇用の効果
| 下肢障害者が多く、作業を行ううえで重要となる上肢障害のある障害者はほとんどいないため、作業工程や配置を考慮すれば作業効率は他の健常者とほとんど変わらないので雇用の効果も基本的には一般と同じである。 しかし、生産の処理数が障害者の場合若干劣るという場合もあるが、全体としては大きな差異はなく、障害者の中には、監督者や管理職も含まれており、本人の意欲や能力によっては、昇進の道も他の社員と同じように開かれている。 また、職場全体として、できるだけ健常者と一緒に働き生活することができるよう配慮されているため、各作業工程に障害者が配置されており、他の社員が小さな気遣いをするようになり、精神的な部分で社員同士の人間関係やまとまりがでてきている。 |
5.職場環境等
| 雇用されている障害者の方は、日常生活面では自立されており、生活面での支援が特に必要なことはないが、個別的には配慮が必要な場合もあり、会社として支援・工夫がなされた具体例を示すと次のようなことがあげられる。 |
| 障害者の中に腎臓機能障害があるため、週3回血液透析が必要な社員がおられるが、通院の日は勤務時間を短縮する措置がとられている。 また、体幹機能の障害がある社員が、いつも就労場所から離れた階段を使用していたため事情を聞くと、階段に手すりがないと昇降が不自由であることがわかり、必要な階段の個所をすべて点検し手すりの設置が行われた。下肢障害のため歩行が不自由な社員に対しては、その障害者専用の駐車場を事務所に近い場所に設置してある。本社工場は3階建てとなっており、障害者の来客や社員の移動の負担を軽減するため、エレベーターの設置がされている。 また、障害者施設や養護学校、障害者職業センター等関係機関との連携も取れており、必要に応じて連絡調整ができる体制となっている。 |  専用駐車場 |
6.今後の課題、展望
| 現在雇用されている身体障害者で最も長い勤務年数は33年程で、年齢も50才台の方もおられるが、まだ退職者は出ておらず、障害の重度化に伴う能力の低下等の課題は生じてきていない。しかし、将来的には、高齢化や雇用延長等も予想され、職場の配置等工場内での対応も必要になってくるものと思われる。 また、知的障害者や車いすを使用される重度障害者等の雇用はなされていない。これは、知的障害者に向いた補助的な仕事が少ないことや、車いすの場合に必要な可動スペースと設備等の環境を整えることが現在の生産ラインや作業工程の中では困難なためである。 しかし、知的障害者と健常者との連携による就労の可能性の検討や、現在、障害による不利の軽減という目的で福祉用具や補助機器などを開発するテクノエイド研究が急速に発展してきており、テクノエイドの技術開発がどのように進めば重度障害者の雇用も可能になるのかを検討していくことも今後の課題と考えられる。 佐賀三洋工業株式会社は、障害者の雇用について、必要な個々の配慮はなされているが全体としてみれば、障害を意識しないで働ける職場環境が整っており、時代の最先端をいくIT産業の担い手として働くいきいきとした障害者の姿があった。 |
| 執筆者：西九州大学健康福祉学部助教授 田代 勝良 |
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