雇用創出、障害者雇用で地域に貢献
2003年度作成
事業所名 | 長崎部品株式会社 | |||||||||||||||||||||
所在地 | 長崎県東彼杵郡東彼杵町 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | 自動車用組電線製造業 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 296名(平成15年12月5日現在) | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 8名
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1.事業所の概要
長崎部品(株)は、矢崎総業(株)グループの関連会社で、平成2年6月に長崎県の誘致企業として設立された。平成2年9月より東彼杵町において東彼杵工場(現本社工場)の創業を開始し、また12月からは江迎町において江迎工場の操業を開始し現在にいたっている。 主として、車の神経ともいえるワイヤーハーネス(自動車用組電線)を一貫生産体制のもとで生産している。 また、平成14年からは介護事業を新規事業として展開し、まず平成14年7月より訪問介護を、平成15年6月より居宅介護支援事業を開始しており、今まで以上に地域に密着し貢献しようとしている。 |

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(1)代表者名 |

代表取締役社長 大石安男 |

(2)資本金 |

1千万円 |

(3)創立 |

平成2年6月21日 |

(4)労働条件 |

就業時間 8:00~17:00 休憩時間 60分 休 日 日曜、その他年間カレンダー 各種保険 雇用・労災・健康・厚生 |

2.障害者の雇用状況等
(1)障害者雇用の経緯 |

障害者の雇用は、まず、身体障害者を平成3年に公共職業安定所の紹介で専門学校の新卒者を経理担当として採用し、その後も公共職業安定所の紹介、一般の求人等により、身体障害者4名、知的障害者3名を雇用し、現在もそれぞれ工場内において製造工程の作業員として活躍している。 入社当初は作業に慣れるまで教育訓練を実施し、その後は他の従業員と何ら変わらず平等に接し、同じ作業を行わせており、それらのことが障害者のやりがいとなり、また、定着良好の理由になっていると思われる。 |

(2)雇用の状況 |

雇用形態は常用の正社員であり、男性5名、女性3名の計8名の障害者を雇用している。 平成2年の会社創設以来、定年退職(1名)以外に退職者は出ておらず、定着率は極めて良い。 雇用率 4.37%。
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(3)障害者の配置場所 |

職場配置に当たっては、工程などに特に工夫や配慮はせずに、健常者と全く同じ扱いにしている。
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(4)障害者雇用に関する表彰歴 |

障害者雇用優良事業所長崎県知事表彰(平成15年度) |

3.障害者雇用の取り組み内容
(1)社内体制 |

障害者職業生活相談員は江迎工場長の牧地幸男氏(平成13年11月28日選任)が当たっている。障害者の定着率は100%であり、必要に応じて、障害者職場定着推進チームが活動する。 |

障害者職場定着推進チーム(平成8年8月1日付設置)の構成メンバーは、社長、本社工場長、現場指導員・障害者職業生活相談員(江迎工場長)等の6名である。 従業員とのコミュニケーションを図る方法として、部署毎に毎日、週1回は全員参加の「朝礼」を行い、スケジュールなどの打ち合わせを行っている。また、社員旅行や懇親会(忘年会とか花見会)も実施しており、その場を通じて従業員同士のコミュニケーションを図っている。 | ![]() 社員の情報発信用の掲示板 |

(2)労働条件、健康管理 |

健常者だから障害者だからと、労働条件等に差は設けていないし、配属や配置転換についても同じである。社員寮はないが、全従業員が通勤可能なところに住んでいる。自家用通勤を認め、敷地内に駐車場を確保している。 |

内部障害者の、通院の為の残業・夜間勤務の制限や通院の為の早退などは認めている。また、知的障害者については、通常の作業上の指導の他は特に行っていない。音声・言語障害者についても同様である。 健康管理については、定期健康診断を毎年行っている。また、休憩室はあるが医務室は特に設置していない。何かあれば選任されている産業医が、年に2~3回巡回して訪問するので、相談及び的確な指導を行っている。 | ![]() 社員駐車場 |

(3)職場環境の改善 |

機械化・自動化による工程の単純化や自動化等により複雑な操作の単純化など、常に工程の改善を行っている。手作業部分は残るので、これがあってこそ障害者の雇用もできる。また、機械類に危険防止装置(緊急停止ボタン等)を設置する等安全設備の改善を行っている。 玄関等のスロープや手摺、ドアの取手に対する工夫は、必要とする障害者がいないため、何も措置していない。ただ、トイレは洋式トイレとしており、手摺もつけている。 |

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4.障害者雇用の考え方
雇用の創出や障害者の雇用に関して、長崎部品(株)の社長は次のような方針、考え方を示している。 |

(1)勝ち残る会社に |

当社は、親会社の矢崎総業の「世界とともに地域に貢献できる企業」を社是として取り組んでいる。 自動車は世界戦略商品としてグローバルな市場の中で、競争をしており、今求められるのは、品質であり、価格であり、納期である。納期は、国内の地の利を生かすことができるが、品質と価格は、他社に負けない企業努力が必要。特に価格については、中国あるいは東南アジアの国々と、競争をやっている。そして、品質は良いものを提供するということは当たり前のことであるが、これを確保する為には、大変な日々の努力と苦労がある。ほとんどが手仕事、手作りの商品なので、ミスが付いて回る。これを克服して良品質100%を目指していかないと、海外との競争には勝てない。 当社は、手仕事中心の労働集約型の会社であり、大勢の人手が必要。大勢の雇用が必要になる。そのためには、勝ち残る会社でなければならない。長崎県あるいは東彼杵町あるいは江迎町でビジネスを展開しており、努力の甲斐あって、現在、300名の仕事量が確保できているので、地域に貢献できる、と考えている。 |

(2)雇用の確保を |

仕事の場を作って、障害者も健常者と同じように働ける環境作りに努力をしている。雇用を維持する為にも、仕事が減少していく中で、経営資源を生かして新しい仕事を立ち上げ雇用の確保ということに努力している。 新しい仕事として、2002年7月より訪問介護事業についての県の認可をとり、介護支援サ一ビス「さわやか」として、地域の皆様に貢献できるよう、皆で取り組んでおり、福祉用具のレンタル等の事業も展開したいと考えている。 | ![]() 介護支援サービス事業の建物 「さわやか」 |

(3)心のサービス |

介護事業を通じて、利用者の皆様に心のサービスを提供し少しでも喜んでいただけるよう、社内において、「花を贈ろう運動」を考え、花の栽培を始めたところである。 今後は他の企業との提携により花卉ラッピング加工事業を新たに展開し、雇用の拡大につなげたいと考えている。 |

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(4)障害者雇用 |

現在働いている当社の障害者の皆さんは、全員が入社以来現在も活躍をしている。非常に厳しい状況の中で、りっぱに役目を全うしている。その努力には頭が下がる。常日頃できるだけ声を掛け、励ましているつもりだが、その明るさとバイタリティーに逆に励まされる思いがしている。 これからも会社として仕事を確保する、雇用を確保する、あるいはもっと雇用を増やしていこうということをベースとして、障害者も充分に参加してもらえる場所を提供できるよう努力したい。 |

5.評価
長崎部品(株)の工場視察とヒアリングを行って感じたことは、この会社は、地元にいかに密着し、地元にどのように貢献しようかを考えているということであった。自動車産業は、今、国際的な競争にさらされており、その部品を生産している当該企業においても、生産性の向上や効率化によるコスト削減努力は並大抵のものではないと想像される。しかも、絶対的に品質面での優位性も維持・向上させる必要があり、「ワイヤーハーネス」という自動車部品の神経系統に当たる基幹部分を「手作業」で行う必要があり、そこに障害者の雇用を創出していることに敬意を表するものである。 また、障害者の雇用率も4%を超えており、しかも入社以来、中途退職者が1人も出ていないという定着性の良さも大いに評価されるところである。 |

執筆者:長崎大学環境科学部教授 浜 民夫 |

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