職場定着推進チームを中心とした障害者の雇用管理の取り組み
2003年度作成
| 事業所名 | 加世田電子工業株式会社 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 鹿児島県加世田市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 発光ダイオード表示盤等の製造 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 110名（平成16年2月現在） | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 21名
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1.事業所の概要
| 昭和25年加世田市に小田宝石製作所を設立、ルビー・サファイア等の委託加工を開始する。 昭和54年には鹿児島松下電子(株)の協力工場として加世田電子工業(株)を設立し、発光ダイオード表示盤その他の生産製造を開始する。 昭和56年には第一工場完成（研磨加工）また昭和59年には800万円に増資し、昭和61年に第二工場完成など事業拡大を図る。 平成3年には隣接地に鹿児島身体障害者福祉工場開設（社会福祉法人あかり会）し、平成4年には障害者雇用促進月間に労働大臣賞を受賞するなど、労働意欲のある障害者・健常者を問わず働きやすい職場環境づくりに努めている。 |
2.障害者雇用の経緯と背景
| 「体の一部に障害があるだけで、すべての能力を失っているわけではない。」戦時中、召集免除を受けた障害者が工場で働いている姿をみた時から社長自身がその考えを持ち続けていたという。終戦直後に宝石研磨の会社を経営したときから、障害者に働く場を提供してきた。障害者の雇用の経験はなかったが、工場で働く姿を見ているので「障害があるだけで能力がないということではない」という信念から障害者の雇用に踏み切った。 その後事業拡大とともにいろいろな部位、程度の障害者雇用が多くなり人事労務管理面で多少トラブルもあったが、彼らを取り巻く従業員の理解と助け合いの精神で今日に至った。 障害者雇用とともに健常者をとわず仲間意識、また助け合いの精神が芽生え、会社全体の雰囲気が非常によくなった。 生産性から考えると能力、賃金の算出ができないのであるが、最低賃金の適用除外申請もせず一般の従業員と同じ賃金を支給した。 |
3.障害者を雇用して直面した問題・課題
| 全体的にはコミュニケーションができないことであった。また心のどこかに健常者、障害者という隔たりがあった。 |
（1）聴覚障害者 |
| 作業上での指示命令の理解ができなかった。当初は指示してもわかったような返事をしていたので先の工程の指示をしたところ、前の指示がわかっておらず、お互いに不信感になった。 聴覚障害者同士だけの集まりになり、他の従業員との会話がなくお互いに意志疎通を欠いた。 |
（2）内部障害者 |
| 作業時間の配分に苦労した。 |
（3）知的障害者 |
| 家族の障害者への対応によって、働く意欲に差がでた。また、叱られたりすると萎縮してなにもせず、他の従業員の顔色をうかがう。また、作業指導時間の個人差が大きかった。 |
（4）寮・通勤等 |
| 自宅通勤はじめ、寮生活においては問題がなかった。 |
4.問題・課題への対応
| 障害者職業生活相談員を選任し、障害者職場定着推進チームをつくった。定期的に、また緊急な課題が発生したときに委員会を開き、対応等検討すると同時に、健常者が障害者への理解をするよう社内教育を徹底した。また必要以上に関与しないで、ある一定の距離を置き指導するようにした。 |
（1）聴覚障害者への対応 |
| 雇用についての知識、経験がなかったので、まず特性等や学校等の経験者からの指導を得た。また社内でもカタコトの手話が出来る者もでてきたりして取り組んだ結果、コミュニケーションも良好になり作業能力も向上し定着推進につながった。 |
（2）知的障害者への対応 |
| 作業工程上の話をしても翌日は忘れ、また一から指導するということの繰り返しが続いた。そのような状態が続くと働く楽しみも失われるのではないかと考え、指導方法として現場での指導員を特別に任命して、マンツーマン方式すなわち体で覚えるという指導で解決することになった。 職業生活相談員の選任の方法については、ある期間一緒に作業していくうちに、信頼関係が生まれた人を選任した。（障害者自身が顔色を窺うという面が見受けられた。） その間指導員の指導方法は、仕事だけではなく食事時間・休憩等の時間にも話し合いを設けできるだけ一緒にいる時間を持ち、その延長上の仕事の指導助言を繰り返した。 奇妙な行動をとるときなどは、その都度注意することなく自然におさまることを待った。（これが日常の自然の行動と思う） ある一定の期間が過ぎると自立させるためにも、自分でできるような環境づくりをし、よくできたときには褒めたりして成長を促した。時間とともに作業能力も向上していくので、障害者自身も生き生きと楽しく働く喜びを感じてきた。 |
（3）職場配置 |
| 入社時には何でもしてもらい、その中から興味を示したり周囲とのコミュニケーションが良かった部署に配置した。しかしその配置が最終的なものではなく、常に観察しできるだけ本人が希望する職場に配置するよう配慮する。また作業経験が長くなり作業能力が向上した障害者には、いろいろな職場・職務ができるよう指導していく。 |
（4）余暇活動への参加 |
| 国内旅行をはじめいろいろな行事にはできるだけ参加するよう配慮し、従業員同士の慰安に努めた。また地域社会の催しものにも積極的に参加し、地域住民とのふれあいを図っている。 |
5.対応の結果
| 最初に雇用した障害者の労働意欲、態度等が非常によく、なんら健常者と変わりなかったため、障害者への偏見もなく、障害者雇用の拡大につながった。その間多少の問題発生もあったが、障害者職業生活相談員を選任し、また職場定着推進チームのメンバーともども検討、分析等し対応したかいあって、働きやすい職場環境が整い障害者の作業能力・職場定着率も向上し、事業拡大に貢献している。 |
6.今後の課題
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| 執筆者：鹿児島県障害者雇用促進協会障害者雇用技術顧問 山口 兵衛 |
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