社員は私の大切な子どもたち
2003年度作成
事業所名 | 有限会社沖縄イリョーサービス | |||||||||||||||||||||
所在地 | 沖縄県国頭郡本部町 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | 主に病院・施設関係のクリーニング付きレンタル業、医療用品、介護用品のレンタル、販売等も行う。他にホテルの宿泊施設等の寝具レンタル、クリーニング等も行う。 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 26名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 12名
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![]() 工場の全景 |
1.障害者雇用のきっかけ
「『障害者に仕事をしながら、リハビリさせる』仕事をやってみないか?」と知人の病院長に勧められた。50歳手前の年で、事業を始めるということにプレッシャーも感じていたが、ちょうどその時期、子どもたちにも医療関係の仕事を勧めていたこともあり、やってみようという気になった。 水、排水先、土地といった環境は整っていて、リネンには最高の立地だった。また、助成金を申請し頂けたことも大いなる励みとなった。 | ![]() 作業風景1 |

2.障害者雇用がうまくいっている要因と障害者の勤続年数
仕事があること。仕事があるから障害者雇用が継続できている。 職場配置については、作業に対する適応性、体力的な面を考慮する。仕事の向上を図るため全社員の参加で講習会も行っている。また、障害者一人一人の障害の状況を常に気を配り、変化が感じられた場合は近くの医療機関と相談し、早急に対処できるように連携を密にしている。 ■障害者の勤続年数
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3.障害者の給与のルールや方針
県の最低賃金を下回らないようにしている。そして、補助金分は障害者の方たちにボーナスとして渡している。障害者の方たちの助成金のお陰で、この会社を建てることができたし、会社を継続させることができていると思っているから、感謝の意味を含めて県などから頂いた補助金は雇用障害者に返している。 | ![]() 作業風景2 |

4.社内体制
(1)現場での指導 |

社長の奥さんが職業生活相談員の社員とともに働きながら、業務遂行援助を行っている。「何か様子がかわったんじゃないか?」と一人一人の行動を見極めて、その都度対処している。 現場監督への対応については、工場長が皆を見て、その都度指導を行っている。 |

新入障害者社員への研修では、「一緒にがんばろうねぇ」と声をかけて、プレッシャーなどを与えないように心がけている。 キャリアアップの可能性については、誰にでも向き不向きがあるのでそれを見極めることから始めていきたいと考えている。 また、「無断欠勤や遅刻はいちばんやってはいけないこと」であり、「休むのであれば、絶対に連絡をするように!」と社長は社員に常に言っている。 | ![]() 作業風景3 |

(2)理解のない社員、パートへの対応 |

健常者と障害者の給料がほとんど変わらないということで、健常者の社員から異議を申し立てる意見が何度かあった。しかし、社長は健常者の社員に対して、納得のいくまで説明していくうちに次第に社員が理解を示し始めた。 |

5.生活面について
仕事は私生活が充実していないと仕事に大きく影響を及ぼす。私生活の面で乱れると意欲がなくなる。 今働いている人の中には、グループホームで生活している人もおり、生活の場の安定が大切である。いずれは、グループホームも作り、雇用障害者を住まわせたい。 |

6.採用
働く意思と能力を有する障害者は積極的に雇用している。採用経路は、高校通常、中学通常、養護学校、その他である。養護学校の先生や親などの紹介での採用が主だが、採用願いのある障害者は雇用につなげるように努めている。 | ![]() 作業風景4 |

7.関係機関・家族との連携
(1)沖縄障害者職業センター |

職業センターの生活支援パートナー(今のジョブコーチ)を活用して、ダウン症の方を採用するまで4ヶ月間訓練を行った。また、2人の社員について、ジョブコーチ事業を活用した。 技術的な支援に関しては、社員が対応できているので、ジョブコーチは、主に生活支援の面で活用している。 |

(2)障害者就業・生活支援センター |

精神障害者の実習に対して、半年間訓練に入ったときなど関わりをもった。 |

(3)養護学校 |

養護学校からの依頼により、職場実習を受け入れており、実習後、学校側から雇用依頼がある。 実習するにあたって気をつけていることは、実習生に『仕事を教える』というよりも、『この職場は楽しい』と思えるようにすることに重点をおいている。 実習期間中、学校の先生は事業所に預けっぱなしになっているので、生徒のためにもう少し努力をして欲しいと思う。 卒業後に、異性関係の問題について学校の先生に相談したら、早速事業所に来て相談を聞いてくれた。やはり、他の人には言えない問題などでも学校の先生には言いやすいようである。 |

(4)家族との連携 |

年に1回全従業員の家族を交えて忘年会を行っている。そして、離島から来ている従業員に関しては、グループホームに入っているので、その寮母さんが保護者として忘年会に参加している。 |

8.安全・健康管理
全従業員に1年に1回は健康診断を受けさせている。 てんかんなどのある従業員を理解するために、てんかんに関する本を買い、対処法の勉強をしたり、医師に尋ねるなど努力した。 66歳の障害者で、腰痛が起こり治療の為約1週間の休暇を取らせたという事例がある。 |

9.他機関への要望
(1)養護学校 |

今の教育にかけているものは、恩師といえる存在がないことだと考える。 昔の教員は勤務先の学校付近に住んでいたので、地域との密接な関係が持てていた。しかし、現在は、1時間以上かけて自動車通勤をしている人が多く、地域との関係がほとんどない。また、アフターサービスも無い。 |

(2)職業センター、福祉施設、医療機関、行政 |

親亡き後、事業所側では何ができるのかが課題としてあがっている。 社長としては、75歳まで皆とともに現役で働きたいと考えている。その後は、跡取りが継ぐかどうかできまってしまう。 雇用した障害者従業員たちが末永く安定した生活を送れること、そのためなら、優秀な経営者(理解のある経営者)が希望するのであれば、事業所を委ねても良いと考えている。また、各関係機関が希望すれば、提携して後々バトンタッチしても良いと考えている。 | ![]() 工場から望む風景 |

執筆者:琉球大学教育学部障害児教育教室助教授 田中 敦士 |

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