作業環境の改善による肢体不自由者の職場定着
2004年度作成
| 事業所名 | 東北労働金庫秋田県本部 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 秋田県秋田市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 金融業 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 12名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 1名
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 秋田県本部ビル |
1.事業所の概要と障害者雇用の経緯
（1）事業所の概要 |
| 昭和27年に秋田県労働金庫として創業を開始。平成15年10月1日に東北6県の労働金庫が統合し東北労働金庫としてスタートした。本店は仙台市にあり、秋田県本部として県内の12支店を統括している。ろうきんは、労働組合や生活協同組合の働く仲間が、お互いを助け合うため資金を出し合ってつくった金融機関であり、労働金庫法にもとづく営利を目的としない金融機関である。 業務内容は預金やローン・各種サービスなど一般の金融機関とほとんど変わらないが、障害者の方々等に医療介護、マイカー、教育、リフォームで独自の福祉目的ローンを提供している。「人と人とのぬくもりを大切にしたい」「心と心の交流を大事にしたい」という考えのもと、日本でただひとつ、はたらく人たちのための福祉専門金融機関として、県民はもとより全国的に知られた存在であり、金融機関としての知名度は確固たるものがある。 |
（2）障害者雇用の経緯 |
| 障害者雇用に取り組むきっかけとなったのは、平成15年の東北6労働金庫統合を契機に、福祉専門金融機関として企業の社会的責任をしっかり果たし、ノーマライゼーションの推進に寄与することが重要との認識に立ち、新たに障害者10名を採用し本部・各県本部に配置するとの方針が決定したことによる。 当秋田県本部では、障害者の雇用については始めてのことではあったが、総務・管理部門において取り組むこととなった。ハローワークに求人申込みを行った際にハローワークの担当者から障害者の就職面接会への参加を勧められた。就職面接会では多くの障害者と面談することができたことにより、障害者への理解が得られ、障害者雇用に対する不安がある程度取り除かれた。その後、就職面接会で内定していた障害者を平成16年5月に雇用するに至った。 |
2.肢体不自由者のための職場改善
（1）トイレの改造 |
| 平成16年5月に雇用したAさんは、脳性麻痺による上下肢機能に障害があり、健常者では日常的に見過ごされていた問題が見つかった。 一番初めに問題となったことは、トイレの問題であった。今までトイレは和式を使用しており健常者では問題となることはなかったが、実際にAさんが使用してみて、初めて不便さに気がついた。 しゃがみ込むことがなかなか出来ず、立ち上がる際にも転倒の危険があった。床面も滑りやすいタイルであったため、濡れているときなどは非常に危険と思われた。 勤務場所である2階の女子トイレは、すべて和式であったが洋式トイレに改造した。タイルについても、滑りにくいタイルに交換し危険防止を図った。そうしたことにより、勤務においても不安を抱えることなく安心してできるようになり、安全面においても気を遣う必要がなくなったため、ゆとりを持てるようになった。
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（2）玄関ドアの改造 |
| また、出入りの時利用する職員の玄関ドアは、手動式となっているため手で開け閉めする際にある程度の力が必要であったが、Aさんにとっては片手しか使えず手にあまり力がなかったことにより、かなりの労力が必要であった。 トイレの改造と同じように、本人から、これらの問題点を聞きながら改善点を把握し、解決に向けて社内で協議しながら取り組みを実施することにした。 話し合いの結果、最終的には手動式ドアを自動ドアに改造することになった。経費等の問題があり、障害者雇用促進協会に相談したところ助成金制度を活用することにした。そうしたことにより、ある程度経費の負担が軽減された。 自動ドアにすることにより、今まで他の職員の手が必要であった玄関の出入りが、本人だけでできるようになり、本人の負担の軽減はもとより他の職員に対する負担の軽減も図られた。  自動ドア |
（3）駐車場の借り上げ |
| その後、Aさんは自動車通勤と言うこともあり、駐車場が遠くなれば身体に負担がかかるため、勤務場所の隣という好条件の処に、金庫で駐車場を借り上げることにした。そうした配慮を行うことによって、本人も職員として健常者と同じように仕事に取り組む意欲も沸いてくると思っている。 |
3.まとめ ～一人一人に合わせた環境づくり
| 金庫では、障害者が勤務する職場単位に、障害者職業生活相談員を選任し、日常的に障害者の職業生活上の指導や相談にあたる体制をとっている。障害者の受け入れが初めての職場もあり、相談員全員が障害者職業生活相談員講習を受講し勉強しながら、マインドの向上に努めるとともに、障害者の職場定着に向けて対応している。 一般的な障害者への対応としては、障害者一人一人の障害レベル、状況に応じた対応や個人ごとのレベルに合わせた指導、訓練、対策を構築しながら障害者が仕事をしやすい環境つくり等の対応があるが、そうした取り組みを当初より行っていることはすばらしいことであり、今後の障害者雇用についても、まず一人の障害者を雇用した経験を生かしながら進めて行っていただければと期待している。 （執筆者：雇用管理サポート事業協力専門家 渡辺淳悦） |
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