適切な配置と作業環境の改善により快適空間を演出する
2004年度作成
| 事業所名 | 株式会社友愛ビルサービス | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 秋田県秋田市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | ビルメンテナンス業、建物の総合管理業務、一般廃棄物処理業務、ホテル客室整備業務、業務用資材販売 （事業所数 16事業所） | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 360名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 6名
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 本社のある東カンビル |
1.事業所の概要と障害者雇用の経緯
（1）事業所の概要 |
| 昭和51年7月に建物の清掃管理を主として創業を開始。以後ビルの多様化、高層大型化、エレクトロニクス化など時代のニーズに応じて事業を拡大し、昭和56年10月に法人化。創業以来、建物のもつ機能を最小限の費用で最大限に生かせるようにという社是のもと、地道な努力を積み重ねてきた結果、現在は県内有数の企業として成長を続けている。 社会のニーズに対応するため、建物の設備・技術管理、環境衛生管理、清掃保全、保安警備、管理事務代行業務の他ホテル客室整備業務、ホテルバンケットサポート業務や業務用資材の販売及び一般廃棄物処理業務など幅広い事業を展開している。また、最新技術を取り入れた外壁洗浄システム、イス・ソファークリーニングシステム等を導入するなど社会のニーズに的確に答えられる体制となっている。 関連会社としては、ユーアイ警備保障（株）、秋田ビルサービス（株）などを擁し、事業展開の上で緊密なサポート体制が敷かれている。 |
（2）障害者雇用の経緯 |
| 平成元年に初めて重度の聴覚障害者2名を雇用したことから、雇用を進めるきっかけが生まれた。 障害者を雇用する前までは、従業員の確保について特段問題はなく障害者雇用については、特に意識する状況にはなかった。事業の拡大に伴い、それとともに人員の確保も思うように出来ない状況が生じてきたこともあり、安定所からの紹介で聴覚障害者2名を雇用することとなった。ある程度口話で意思の疎通が可能であり、また手足に不自由がなければ作業をする上で問題は無いだろうとの考えもあってのことであるが、これまで障害者雇用の経験がなかったので、多少の不安はあったことも事実である。 障害者を雇用してみて、ある程度経験を積み重ねたことにより、適材適所の配置により障害者個々の能力が十分発揮されるようになっていった。そうした実績と経験により、障害者の雇用を積極的に行うようになった。 初めて障害者を雇用してから、6年後の平成7年度には、障害者雇用優良事業所として労働大臣表彰を受賞している。 |
2.さまざまな障害者の職場配置と業務改善
（1）聴覚障害者による清掃業務 |
| 聴覚障害者の特徴としては、聴力レベルの低下や発音明瞭度の低下があり、それに対してコミュニケーション、指導・訓練時の接し方、話す速度、周囲の雑音等への考慮が必要である。また、個人に応じた対策として、補聴器の検討や職場内の聴覚による情報の伝え方（目で見てわかる方法等）が挙げられる。 当初採用した聴覚障害者2名については、本社業務課勤務として本社入居のビル清掃の業務を担当とした。初めて雇用した障害者ということもあり、常に目の行き届く場所で作業をすることとなるので、作業に慣れるまでの指導や訓練が行える利点を考え配置した。 聴覚障害者ということで、作業の指示や伝達方法について問題が生ずると思われたが、多少の口話が出来、また筆談で十分対応できたため、ほとんど問題はなかった。また、同種の障害者ということもあり、お互いが良い意味での手本となり業務の向上が図られていった。 |
（2）上下肢障害者による清掃業務 |
清掃員として業務に従事していた障害者については、清掃作業の大部分は手作業であり、また使用する器具や用具が8～9種類と多く作業の訓練も非常に難しい面があった。作業の負担が重く、危険もあり、常に健常者が数人随行し作業を行わなければならず、多くの人員が必要であった。 こうした問題を解決するために、自動床洗浄機を導入した。この機械は多種類の器具用具が不要で、簡単な操作で一連の作業工程が行え、障害者の作業負担が著しく軽減されたばかりではなく、作業効率も従前に比べ4倍近くアップした。作業人員も6名一組から3人一組で出来るようになり、作業の省力化が図られた。 それにより、障害者が自分の受け持つ業務を他の人に負担を掛けることなく一人でこなせるようになり、健常者との人間関係が良くなっていった。 |
（3）上下肢障害者による駐車場管理業務 |
事務所と駐車場管理人室を業務の関係上1日7～8回往復するため、その間の通行路に危険個所があった。通路口については、段差が大きく転倒の危険があり、通路も雨天・冬期間は、滑りやすい状態であった。通用口のドアは手動で開け閉めするため、不便があった。 こうした問題を解決するため、段差部分をスロープ化しドアについては自動ドアに改造した。また、通路には滑りにくいゴムマットを敷いて安全の確保を図った。スロープ化と自動ドアについては、助成金を活用して整備を行ったことにより経費の節減が図られた。 |
（4）内部障害者を警備から駐車場管理へ |
| 内部障害者の特徴としては、呼吸や体温調節が困難で抵抗力が弱く感染しやすいなどが挙げられるので、急激な温度変化に注意し、清潔な空間つくりが有効であると思われる。また、カテーテル使用者や透析療法使用者の場合はその対策や、緊急時の対応の検討などが挙げられる。 心臓機能障害者については、管理ビルの常駐警備員として配置した。複合ビルのため、納品業者の出入りが頻繁で、搬入口の整理や混雑しているときなどには高度な車両誘導テクニックが必要であった。また、建物内の巡回業務もあり、階段の昇降など体に負担となる労働や、1回巡回でかなりの距離を歩かなければならず、健康面においても問題があった。 こうした問題を改善するため、駐車場の料金精算係へ配置転換をした。身体をほとんど移動する必要もなく、料金の精算も駐車券を機械に挿入するだけで自動計算されるため、労働が大幅に軽減され、作業能力も健常者とほとんど差が無くなった。 |
3.まとめと今後の課題
| 障害者の配置については、障害者個々の身体的特性や能力を十分把握し配置する必要があるため、初めて雇用した当初はいろいろ試行錯誤したこともあったが、障害者としてではなく、一緒に働く仲間という意識で雇用を進めていくことが大事なことと思われる。また、事業所担当者の障害者雇用に対する熱意と従業員の協力体制があってのことは当然であるが、それ以上にトップの理解が重要であり、トップの理解があって初めて障害者の雇用があると言っても過言ではないだろう。 現在の雇用状況を見てみると、身体障害者の雇用は進んではいるものの、知的障害者については雇用までには至っていない。今までは、養護学校から職場実習として知的障害者を受入れてきたが、今後の検討課題として、知的障害者も含め雇用拡大ができる職場環境整備の取り組みが必要であると感じている。 （執筆者：雇用管理サポート事業協力専門家 渡辺 淳悦） |
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