小売店舗での障害者雇用~充実したサポート体制で短期間に雇用率を達成~
2004年度作成
事業所名 | ゼビオ株式会社 http://www.xebio.co.jp/ | |||||||||||||||||||||
所在地 | 福島県郡山市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | スポーツ用品・用具、衣料品の販売 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 3,334名(社員615名、パート従業員2,719名) | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 47名
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1.設立経緯と企業理念
(1)設立経緯と企業理念 |

ゼビオは、昭和37年8月に紳士服専門店として創業し、昭和48年7月5日に会社設立。その後40年余の歴史の中で、時代ごとに競合他社とは異なる手法でチャレンジし着実な成長を遂げてきた。今後もこれまで培ってきた良質な人材、健全な財務体質という資本を最大限に活用し、スポーツ事業を中心としたオンリーワン企業として事業の質的拡大を目指している。 ゼビオの企業理念は、「公正な競争原理のもと、良質な人材、資金、組織を作り“お客様第一主義”にもとづいた事業活動を通じて、社会貢献を果たしていくこと」である。 |

(2)事業内容 |

ア スポーツ事業 競技系スポーツを軸にスキー用品・用具、ゴルフ用品・用具、さらにはアウトドア用品・用具(登山用品、キャンプ用品、マウンテンバイク等)まで多彩な商品を取扱うスポーツ大型専門店事業を展開。近年では、売場面積約1,000坪の標準化が進んでおり、今後は2000坪を越える超大型店の出店も視野に入れている。また商品や店舗の向上だけではなくスタッフの育成にも力を注いでおり、その中でも高いスポーツスキルを持つスタッフをスポーツナビゲーターと位置付け、お客様への的確なアドバイスを実践している。 イ メンズ事業 創業以来の事業であるゼビオメンズは、ビジネス衣料を中心に販売。現在「脱スーツ」をキーワードに、30歳代後半以降のアダルト層をターゲットとした新しい戦略に向かって変革を行っており、オフタイムウェア提案を強化するなど、他の競合が真似できないゼビオならではの業態確立を目指している。 ![]() イギリスの製造小売チェーンネクスト社(NEXT PLC)と提携し、同社の企画した商品を日本国内において独占販売する事業を展開。取扱商品は婦人服、アクセサリー、紳士服、子供服。NEXTとはロンドンを中心に世界中に350以上の店舗を構え、150万人余りの通信販売客と16万5千人にオンラインショッピング利用者を擁する売上高5,000億円(通販を含む)を誇るイギリス最大のSPAブランドである。 エ メディア事業 中古本、テレビゲーム及びソフト、ビデオ、CDの販売、レンタル等を行う事業を展開。1997年よりスタートした同事業のテーマは「大衆性、娯楽性にあふれた魅力的な店舗の創出」。ビデオ・CDレンタル、書籍・CD・ゲームソフト販売など、これまでに培ってきたチェーンストア経営の多彩なノウハウを駆使し、東北を中心に17店舗(2004年3月31日現在)を展開している。 |

2.障害者雇用の状況
同社は、平成8年から障害者雇用をスタートさせた。そして、事業規模の拡大に伴い、平成13年から本格的に障害者雇用に乗り出した。表-1は、近年の雇用障害者数と障害者法定雇用率の推移を示したものである。 なお、「障害者の雇用の促進等に関する法律」では「障害者雇用率制度」が設けられており、常用労働者数が56人以上の一般民間の事業主は、その常用労働者数の1.8%以上の障害者を雇用しなければならないとされている。また、短時間労働者のうち重度障害者に限って、雇用率に一人としてカウントできることになっており、重度身体障害者又は重度知的障害者については、一人を二人に相当するものとしてカウントされている。 表-1 雇用障害者数と障害者法定雇用率の推移
表-1より、平成14年頃から急激に雇用障害者数が増加しており、それに伴い、障害者雇用率も年々高くなっていることがわかる。これは、同社が積極的に障害者雇用に取り組み、雇用した障害者に対して十分な配慮などを行ったためである。その結果、離職者も少なかった。 近年、我が国では高い離職率が問題になっており、入社後3年以内に離職する人の割合は、中学卒で約70%、高校卒で約50%、大学卒で約30%であり、「七・五・三問題」ともいわれている。しかし、同社で過去3年間に離職した障害者はわずか4人だけであった。同社では、視覚障害者、聴覚・言語障害者、肢体不自由者、知的障害者などの様々な障害者を雇用している。その中で、この離職者の少なさは、同社が雇用した障害者に対して十分な配慮などを行った成果であり、大いに評価できるものである。 |

3.障害者雇用に対する取り組み
(1)業務に就くまで |

同社では、本格的に障害者雇用をスタートさせるにあたり、障害者の雇用に関するガイドブックを作成し、各店舗に配布した。そして、従業員などの理解を深めた。 また、障害者が就業するためには家族の協力も非常に重要であると考え、必要に応じて、採用試験時に親同席の面接を行うようにしている。 |

(2)業務に就いてから |

業務に就いてからは、ジョブコーチが教育をする。多くの障害者は仕分け、検品などの後方業務に就いているが、業務に慣れてきた障害者には、品だし、ハンガー掛け、テニスのガット張りなどの責任ある仕事が与えられる。 また、同社は小売業のため、販売(接客)を行っている障害者もいる。販売では、商品知識を身に付けること、その知識をお客様に正確に伝えることが必要不可欠である。しかし、新しいモデルの商品が次々と入荷されるため、十分な商品知識を身に付けることは非常に大変なことである。そこで、同じ職場の従業員が声をかけたり、一緒に食事に行くなどして積極的にコミュニケーションを取り、障害者が不安にならないようにサポートしている。 ジョブコーチからのアドバイスで、障害者とその親と交換日記をしたりもしている。これらは、非常に大切なことであり、同社の障害者の離職率が低い要因であると考えられる。 また、従業員にアンケートを実施して問題点や改善点を把握しているが、これは雇用する立場からではなく、障害者の立場になって考えるとの意識から試されたものである。実際、アンケート活用後における各店舗の店長の反応は「受け入れがもっとむずかしいと思っていた」や「健常者よりもルールを守る」など、障害者雇用に対して肯定的な意見が多数寄せられているのである。 |

(3)お客様や地域との関わり |

先にも述べたように、同社は小売業のため、販売(接客)を行っている障害者もいる。そのため、お客様の理解も必要になってくる。そこで、同社ではスロープ、トイレなどのバリアフリー化を進めている。その結果、障害者のお客様も多く来店するようになった。 また、XEBIO CUP(ストリートバスケットボール・コンテスト)を開催し、その際に、車いすバスケットボールをエキシビジョンマッチとして行っている。これは、一般の方が障害者や障害者スポーツに接する良い機会になっている。 これらにより、同社は障害者を雇用するだけでなく、障害者の社会進出も後押ししていると考えられる。 |

4.まとめ~障害者雇用の浸透と肯定的なとらえかた
民間企業のうち、1.8%の法定雇用率が適用される一般の民間企業をみると、実雇用率は1.48%(前年度比0.01%増)であり、依然法定雇用率1.8%を達成できないでいる。未達成企業の割合は57.5%と前年度と同等である。このような現状の中、障害者雇用においては今後、設備改善や作業補助者の配置など、物理的、人的配慮の必要性がでてくるものと思われる。また、リーダーとして障害従業員の直接支援にかかわる社員の研修や支援システムを構築するなど、企業全体としての組織的な取り組みをさらに強化することも考慮されるべきであろう。 ゼビオでは現在、能力開発、教育訓練に関してはマニュアルに従って指導しているが、今後は各障害にあったガイドラインの作成を検討しているとのことであった。これは同社が視覚障害又は聴覚・言語障害、知的障害など様々な障害者を雇用していることや、今後より重度の障害者を迎えるための布石であると考えられる。このような取り組みから、同社では障害者雇用に対する積極的な取り組みが浸透してきていると思われる。 また、障害者雇用の安定を図るためには、本人の努力はもちろんのこと、職場スタッフの献身なサポートの他に家族のサポートも極めて重要な要素と言える。企業と家族との連携なくしては障害者の働きやすい環境は作り出せないであろう。 雇用率17年連続日本一を誇る大分県、ここには整形外科の医師でありながら障害者の社会復帰を支援してきた中村裕という人物がいた。彼なくしては今日の大分県の雇用率はなかったと言われている中村先生だが、彼は障害者雇用についてこう言っている。「世に心身障害者はあっても仕事に障害はない。障害者を保護するのではなく働く機会を与える」と。障害者はたしかに健常者と比べていくつかの面においては足りない部分もあるかも知れない。だが、彼らを雇用することに対してマイナスイメージをもたないでもらいたい。もっと彼らに活躍する場を与えてほしいと願わずにはいられない。 今回、東証一部上場企業であるゼビオ株式会社を事例として紹介することで、まだまだ数多く存在する雇用率未達成の企業に対して、障害者雇用促進のきっかけになれば幸いである。 参考文献 1)内閣府:平成16年度版 障害者白書 2)独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構:障害者の雇用支援のために-事業主のための雇用ガイド- 3)独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構:働く広場 第319号、第321号、第325号 (執筆者:日本大学工学部指導教授 佐藤 平、同大学大学院2年 佐野元紀、山田貴正) |

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