“障害者の自立支援”について発注側から理解を得て～業務請負業での取り組み～
2004年度作成
| 事業所名 | ケービックス株式会社 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 群馬県前橋市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 総合アウトソーシング、総合ビルメンテナンス、一般労働派遣及び民営職業紹介 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 2,017名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 27名
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 本社ビル |
1.事業所の概要と障害者雇用の経緯・状況
| ケービックスは、総合アウトソーシング（外注業務請け負い）、総合ビルメンテナンス、一般労働派遣・民間職業紹介を行っている。従業員数は、昨年末現在で、2，017人、このうち雇用障害者数は27人。1971年創立で、73年から障害者を雇用している。 雇用形態は、大きく分けて2つである。1つは旅館・ホテルの業務で、館内の清掃、食器洗浄、布団敷きであり、もう1つはオフィスビル等のフロア清掃である。 旅館・ホテル業務の勤務地は、山形県の温海温泉、石川県の和倉温泉、和歌山県の白浜温泉、栃木県の鬼怒川温泉、群馬県の磯部温泉であり、すべて現地採用の形態をとっている。  温海温泉 契約旅館の全景（萬國屋） |
2.障害者雇用の状況と取り組み
（1）旅館・ホテル業務 |
現在、温海温泉には、養護学校を卒業した知的障害のある10代から20代前半の3人（男性1人、女性2人）が働いている。仕事内容は、洗い場の食器洗浄で、勤務時間は午前9時から午後3時まで。賃金は時給扱いで、健常者と差別はない。 知的障害者の指導は、覚えるまではマンツーマンで、健常者よりは多くの時間をかけている。現在、この職場は10人前後で行っており、障害者以外は中・高年齢者。責任者らは、自分の孫、子供のような障害者に対して温かな気持ちで接し、職場はアットホームな雰囲気になっているという。 ケービックス管理本部の横堀宏之課長は「障害者はコツコツと一生懸命に働いている。温海温泉での雇用は7年になるが、障害者の新規採用と雇用はスムーズに行うことができている」と話す。 温泉地での従業員および障害者の送迎は、すべて同社の送迎車輌（ワンボックスカー）で行っている。旅館・ホテルの従業員の駐車スペースがないこともあるが、「ドアツードア」で安全面を重要視している。 他の温泉地では、知的障害者もいるが、身体障害者が中心。例えば、腎臓機能障害で人工透析を週2回受けている人は、客室清掃業務を行っており、時間は午前8時から午後2時までのため、治療に通うのに、ほとんど差し支えがないという。時間帯がフル業務でないことで、勤務と治療の“両立”が十分可能になっている。 処遇も健常者と同じため、障害年金プラスアルファとして賃金を活用でき、張り合いになっているという。横堀課長は「障害者の仕事は、個人個人の障害を考慮して職種に就いてもらっている。ペースメーカーをしている人は軽作業など、無理がないよう配慮している。みんな、自分も社会に役に立っているという充実感をもって仕事をしてもらっていると思う」という。
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（2）清掃業務 |
| オフィスビルの清掃に従事している障害者は、足や腕が一部不自由という人たちが大半。仕事内容は、フロア、トイレ、洗面所の清掃、会議室・応接室のワックスがけなどである。主に50～60代が中心だ。 清掃業務の仕事先は、まだ試行錯誤の面もある。例えば、ショッピングセンターでは、生鮮食料品売場などの巡回清掃となり、常に動いていないといけないケースが多く、やはり障害のある人たちにとっては、かなりきつい仕事となる。職種の拡大は、障害者雇用にとって大きなプラスになることは間違いないが、やはり越えなければいけない“壁”も、多いことが分かった。 |
3.業務請負・人材派遣業である企業の役割
（1）発注者の理解と職域の拡大 |
| 「障害者雇用は、やはり発注側の理解が必要。雇用例が“障害者の自立支援”を基本スタンスに置いてもらうのが第一だと思う」と横堀課長。その1つとして、健常者と障害者が一緒に仕事をするケースでは、健常者の中に、障害者がポツン、ポツンと入る形をとり、常に健常者が障害者をフォローできることが大切なのでは、という。 また、旅館・ホテルで食器洗浄業務をする知的障害者の仕事の幅についても、客室の冷蔵庫の中の補充業務などもできるのではないか、として今後、発注先との話し合いも大事なことだとしている。 同社はさらに、自社の障害者雇用とは別に、民間企業に障害者を紹介する業務にも力を入れたいという。1つは、新たに就職を希望する障害者の紹介。もう1つは、同社が雇用している障害者を働いている会社の従業員としてもらうもの。これらを推進することで、社会全体の障害者雇用の拡大につながるという考えだ。 |
（2）企業の役割 |
| 横堀課長は「障害者雇用は、企業の役割、責任として、地域の中で共存共栄しながら推し進めていくのが使命」と熱っぽく語った。 同社は、人材派遣や民間職業紹介を手掛けていることで、一般の民間企業に比べて障害者雇用のノウハウを数多くもっている。こうした企業が、自社の障害者雇用にとどまらず、社会全体に障害者雇用の社会的意義、責任を啓発していこうという姿勢を強く打ち出していることは、大変に力強く感じた。今後の同社の展開に大きな期待感をもった。 （執筆者：株式会社板垣労務管理事務所代表取締役会長、社会保険労務士、行政書士 板垣金三） |
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