共生と自立を目指して～障害者を雇用するための事業拡大と自立のための支援～
2004年度作成
| 事業所名 | 三洋ハートエコロジー株式会社群馬事業所 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 群馬県邑楽郡大泉町 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 花卉・苗の栽培販売、室内観葉植物のレンタル・管理、フラワーギフト、花壇・コンテナガーデニングの設計・管理、有機肥料・生ゴミ対比の生産販売、グルメ頒布会、クリーンメンテナンス事業、野菜作り等々 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 19名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 13名
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1.事業所の概要と障害者雇用の経緯
| 障害者雇用に積極的に取り組んでいる三洋電機。その子会社、三洋ハートエコロジー（本社・大阪府大東市）の群馬事業所は、障害がある地元の人たちを雇用して、洋ランの栽培事業を昨年11月からスタートさせた。その先駆的な事業を拝見しようと大泉町を訪ねた。 車で前橋市から大泉町に向かった。この日は雪が舞う天候で、寒さも厳しい。栽培ハウスは、以前来たことがある、社会人ラグビーの名門、三洋電機ラグビー部のグラウンド跡地にあった。 ハウスに着くと、江口勝利・群馬事業所長が迎えてくれた。ハウス内では作業をしていた障害者が「こんにちは」と元気な声をかけてくれた。「とにかく、みんな一生懸命やってくれています」と江口所長の顔もほころぶ。
三洋ハートエコロジー（株）は、三洋電機の障害者雇用特例子会社として1998年に発足し、大阪本社と岐阜事業所、群馬事業所をもつ。全体では従業員約100人の半分が知的、身体障害がある。草花や苗の栽培・販売、室内観葉植物のレンタル・管理を手掛けている。 群馬事業所は99年9月に設立され、翌2000年11月から障害者の雇用をスタートさせた。当初は障害者1人で、三洋電機の構内清掃、従業員の寮清掃などが仕事。その後8人に増やし、パンジーなどの露地栽培も手掛けたが、「これらの仕事ではこれ以上の雇用は限界」と、障害者の雇用拡大のため、洋ランの栽培事業に踏み切った。 洋ラン栽培は、生産者から購入した苗を花が咲くまでの半年間、温室内で育成管理する業務で、水分や温度調節、出荷時の箱詰め作業など軽作業が中心。障害者が継続して就労しやすいことから、この事業を始めたのである。 当事業所の栽培ハウスは4棟あり、合計の延べ床面積は2，100平方メートル。洋ラン10万鉢の収納能力がある。建設費用は約1億円。重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金から約50％の補助を受けた。 |
2.障害者の作業内容と自立のための支援
（1）障害者の作業状況 |
| 洋ラン栽培と同時に雇用を増やし、現在知的障害がある人13人が働いている。高等養護学校を卒業したばかりの人から32歳までで、女性も2人いる。 栽培品種はオドント（彗星蘭）とミニカトレア。具体的な作業は、鉢の支柱立て、出荷のための化粧ケース作りと、ケースへの花入れ、こん包など。こん包作業中に指導者の「きれいに丁寧に。お客さんに喜ばれる仕事をしよう」の声が飛ぶ。これが事業所の合言葉でもあるという。 「どちらかというと健常者なら飽きてしまうかな、という仕事をやってもらっている。経験を積むことでスピードも上がってきている」と江口所長。指導の従業員も「黙々とよくやってくれている。本当に感心する部分がある」と話す。
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（2）自立のための支援 |
| 実際の仕事とは別に「障害者の自立」のための支援も、同事業所の大きな特長といえる。勤務時間は午前8時15分から午後4時50分。仕事終了後の10分間は各自が日誌を書く時間にあてている。 「実は視力検査をやって、かなりの人がよくなかった。その原因は、字を読めないことだった。ふだんの生活の中で字を読んだり書いたりすることが極めて少なかったからだろう。しかし、社会の中で自立するには、カード支払いなど代筆できない場合もあり、読み書きは必要」。そう感じた江口所長は、毎週金曜日に仕事のあとの1時間を「パソコン教室」にして、名刺づくりで自分の名前や住所を徹底的に教えている。その延長線上に「日誌」が登場したわけだ。 また障害者は、比較的友達が少ないこともあって、あまり外に出ない人が多い。このため家の中にいることが多く、体力が劣っている人が目立つという。これには事業所内のトレーニングセンターを週2回活用して対応している。 |
（3）家庭との連携 |
| ハウス栽培事業開始と同時に、障害者の保護者会もスタートさせた。会長、副会長、会計など役員もいる。仕事を参観してもらったり、カラオケボックスでの忘年会、さらに館林市での一泊旅行も実施した。忘年会では、マイクも持つわが子の歌のうまさに驚き、感激した親御さんもいたという。家では見せない一面を見たわけだ。 日誌は会社と親との「連絡帳」にもなっている。仕事上での1日の反省や感想が書かれており、親が子供の気持ちを知ることにもつながる。江口所長は「保護者会には主体的に動いてもらい、事業所はあくまで事務局的な立場で応援したいと思っている」と話している。 |
3.今後の展望
| 今春も障害者4～5人の採用を予定している。高等養護学校の職場実習、正月の研修などを通して、就労を希望している人がおり、採用の見通しだ。 「障害者の雇用は、5年で3倍の35～40人にしようと考えている。私たち指導する側の技術の習得度合いに合わせて、障害者雇用も増やしたい」。江口所長の障害者の自立支援に対する熱い思いが、こちらに伝わってきた。 栽培ハウスで真剣に仕事に取り組む障害者たち。私が「どうもお世話になりました」と帰るあいさつをすると、障害者から「これからも頑張ります！」と大きな声が返ってきた。帰りの車中で、障害者たちのさわやかな笑顔、元気な声を思い返し、心が洗われた1日だった。 （執筆者：株式会社板垣労務管理事務所代表取締役会長、社会保険労務士、行政書士 板垣金三） |
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