特例子会社の設立と会社運営について
2004年度作成
事業所名 | 株式会社 あけぼの123 | |||||||||||||||||||||
所在地 | 埼玉県羽生市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | 清掃事業(会議室・社員食堂・更衣室・トイレ・社員寮の浴室など) | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 9名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 7名
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会社のある親会社厚生棟 |
1.事業所の概要
当社は、“親会社である曙ブレーキ工業株式会社の理念にある「ひとつひとつのいのちを守り、育み、支え続けて行きます」を基本に、曙グループの一員として、人に配慮し地域に根ざした企業として社会に貢献し続けること”の具現化と、企業の社会的責任として法定雇用率を達成することを目的として、平成15年9月16日に設立された。 設立に当たっては、同年1月に親会社から設立検討の指示を受け、各種支援機関や他企業の事例を研究したうえで、4月に会社設立の事業計画を提案し、9月16日に設立、10月から親会社敷地内の一部の清掃事業を受託開始し、その後清掃場所の受託範囲を拡大していった。 平成16年4月1日には、全国で142番目、埼玉県内に本社のある製造業としては初めての特例子会社の認定を受け、今後は曙グループ内での障害者雇用率を上げるためにグループ雇用率の適用を検討中である。 |
2.特例子会社設立の経過
(1) 特例子会社設立指示(平成15年1月) |
親会社から特例子会社設立検討の指示が、経営企画部門に出される。 |
(2) 設立プロジェクト |
会社設立プランを提案し、設立へ向けた全社的なプロジェクトを結成。(平成15年4月) メンバーは、経営企画部門・法務・人事総務(財務・経理)・労務管理部門 |
(3)情報収集活動 |
インターネット検索からの情報収集を始め、障害者雇用に関する関係行政機関への相談、雇用実績のある事業所の見学、各種ネットワークへの積極的参加などにより、特例子会社設立に関する情報や資料の収集を図る。 |
(4)事業内容・設立場所の検討 |
ア 清掃事業からスタートした理由 親会社のライン業務への参画は、安全面・技術面で難しいと判断した。 検討した結果、清掃なら現状の環境条件(含設備投資)を大きく変えなくても、知的障害者で無理なくできる仕事と判断して決定した。 イ 親会社主体の事業受託と就業場所を親会社の敷地内とした理由 親会社から事業受託することにより安定した仕事量と収益が得られやすいと考えた。また、親会社と一緒の敷地内の方が、業務を遂行するうえで親会社との連携が取りやすいこと、更に知的障害者の雇用管理上、サポート体制が取り易いと思われたことによる。 |
(5)労働条件の策定 |
給与体系・勤務時間・社内ルールなどの就業規則の決定。 労働時間は、知的障害者の特性から、持続性や集中力を考慮して実働6時間半勤務とした。
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(6)障害者の採用活動と採用のポイント |
環境整備に関する設備投資額を検討したうえで、知的障害者の優先的雇用を決定。 採用活動は、ハローワークとの連携を図りながら、当社用のミニ面接会を開催してもらい、ハローワークの職員同席での面接を実施した。 採用選考にあたっては、面接だけでなく、実技試験も実施した。実技試験は、約40分で、椅子の掃除・洗剤とデッキブラシを使った風呂場の掃除など。 採用のポイントは、身体がよく動くかどうか、不安定な歩行などが見られないか、指示事項がキチンと伝わり、指示された行動がキチンと取れるかなどを見て判断した。 採用時には、トライアル雇用を6名中5名に対して活用した。 埼玉障害者職業センターからジョブコーチを派遣してもらい、就労支援面での連携をとりながら受け入れ体制を確立した。 |
(7)事業開始と職域拡大(平成15年10月~) |
平成15年10月より清掃事業を開始し、清掃受託範囲を徐々に拡大していった。 また、清掃技術の収得は、従来の清掃作業の親会社との委託業者のノウハウを参考としながらも、障害者にやり易いように独自に工夫を加えてやり方を開発していった。
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(8)特例子会社の認定(平成16年4月1日) |
全国142番目の特例子会社認定を受ける。 |
3.工夫を凝らした事業運営とその効果
(1)作業手順書(マニュアル)の作成と理解し易いための表示の工夫 |
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(2)社員の改善提案の積極的採用 |
ア 「いつどこで何を使ったか、を分かるようにしたほうがいい」と比較的障害の軽度の社員から提案を受け、「ものを大切に使うノート」を作成して社員全員が記録をつけるようになった。 イ 社員からの声で、「洗剤を薄めて使えば」との提案があり、意見を取り入れた結果、問題なく洗剤の節約ができた。更に「徳用缶を買えば」の意見を取り入れ、小分けして使用することにより経費の節約に繋がっている。 |
(3)清掃技術の社員相互による教育訓練 |
社員がそれぞれペアとなり、自分の仕事内容や清掃方法を教え合い、相互の仕事の共有化を図っている。この効果として、急な欠勤者が出ても仕事内容を把握した社員により、補填ができる仕組みとなっている。
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(4)社内報の作成 |
社内報「愛と夢(アトム)ニュース」を作成し、社員紹介や仕事内容の説明、スポットニュースなどを当社の社員及び親会社の関係部署への情報提供を図ることにより、社内外へ会社状況を知らせるツールとして活用している。
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(5)伝言板の活用による教育啓蒙 |
会社訪問者から聞いた参考となる言葉を社員が集まる場所に置いた白板に記録し、社員に説明を加えて教育するツールとして活用している。
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(6)定着率を高めるための取り組み |
ア 「月別個人目標」を社員各人ごとに設定して、一人一人の目標課題を持たせチェックすることにより、挑戦意欲の喚起とキャリアアップを図っている。
イ 定期的に花見会・誕生日会・バーベキュー大会などを開催し、社員間同志の一体感づくりを行うとともに、親会社の羽生市内の缶拾いや消防訓練などの行事にも積極的に連動を図るようにしている。 |
(7)取り組みの効果 |
ア 作業指示をするにあたり、具体的に指示することが仕事をわかりやすくするということを指導側も社員も理解できたので、その後改善をしたときにも大変やりやすくできた。 イ お互いに作業を教えあったり、社内報を作ったり、月別の個人目標をたてたりすることが、作業のレベルアップや個人の能力を高めることに役立った。 ウ 親会社の行事や、あけぼの123株式会社の行事に参加したり、昼休みにキャッチボールをしたり、おしゃべりをしてみんなで一緒にいることが、親会社・子会社関係なく社員の連帯意識を強めることができた。 |
4.今後の課題・展望など
(1) 新たな職域への事業拡大 |
現在の受託事業の基盤を確立していく中で、以下の新たな事業拡大に挑戦していく。 ア 羽生市以外の曙ブレーキ工業の施設や市役所などの公共施設での清掃事業の拡大 イ 曙ブレーキ工業の敷地内の周辺美化(敷地内の草取り・植栽・駐車場の凸凹修繕など) ウ 親会社社員の乗用車の洗車業務(現在約600台の私有車を対象) エ 本社内にあるメール室での社内郵便物の仕分け作業 |
(2)グループ雇用率適用への取り組み |
親会社である曙ブレーキ工業とその関係会社を含むグループ雇用率の適用を受けることにより、曙グループとして共通の理念の具現化とグループトータルでの一層の障害者雇用の促進を図っていきたい。 |
(3)更なる障害者の雇用促進 |
上記取り組みへ挑戦していく中で、設立当初に設定した「平成20年度までに33名の障害者雇用」の達成を目指していく。 (執筆者:株式会社西友サービス取締役管理担当 小野 博也) |
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