下肢障害となった知的障害社員の雇用継続のための配置転換
2004年度作成
| 事業所名 | 株式会社 三愛エスポアール （株式会社三愛の特例子会社） | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 埼玉県入間郡三芳町 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 1 婦人服の物流業務 ・取引先への出荷及び返品業務 ・返品の仕分業務（物流保管） 2 グループ会社の社内メール 3 用度品等の配布業務 4 プライスタグの発行業務 5 外部アパレルの物流業務受託 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 24名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 11名
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1.事業所の概要と障害者雇用の状況
（1）事業所の概要 |
| 当社は、株式会社三愛の特例子会社として平成11年3月24日設立し、平成11年4月1日創業を開始した。親会社である株式会社三愛が、障害者雇用率達成のために、当時、関連会社のリコーより特例子会社リコーエスポアールを立ち上げた社長を障害者雇用促進顧問として雇い入れ、障害者雇用の運営を任せたことをキッカケに誕生した。 親会社である株式会社三愛は、昭和23年8月に創業し、従業員数252名、また三愛グループは従業員数1335名である。 |
（2）障害者雇用の状況 |
| 当社の障害者雇用は、業務内容が親会社の物流業務の受託で、日常の業務において早い動きが要求されるため、知的障害者の雇用を進めた。知的障害者を平成9年2名、平成10年2名、平成11年2名、平成12年6名、平成13年1名の延べ13名を採用し、現在11名定着している。11名の採用経路は、養護学校からの新卒者8名、トライアル雇用からの採用3名である。 知的障害者の配属は、全国の店舗から引き上げた商品をメーカーに返品する返品業務、全国のショップへ商品を送り出す出荷業務、グループ会社各社への社内メール、店舗で使用する用度品等の配布業務、三愛グループ各社用の値札の発行業務、他社アパレルの物流業務の受託等で、障害者の職業的自立を目指した育成を図っている。 |
（3）育成の方針 |
| ア 毎年仕事の幅を広げていき、チームリーダーとして活躍する場を持たせる。 イ 自閉気味の社員にとって、朝夕の挨拶が苦痛であれば、強要しない。 ウ 業務を通じてのお金を稼ぐ厳しさを、常に教育している。 エ 仕事でのミス・ロスが多い場合、よく原因を把握して（特に会話が苦手な場合は、上司が自分で確認）して、本人がやり易いように改善を図る。 オ クレームノートを実施して、仕事のミスを確認させる。 カ 知的障害者の場合は、一度に教えずにひとつが終われば、次を教えるというように、ひとつひとつ完成していくことが必要である。 キ 一緒に仕事するスタッフを採用する祭には、知的障害者と共に仕事をすることを了解してもらうことを前提としている。 ク 問題がおきたときには、即対応できるように保護者と連携している。 |
（4）主な業務内容 |
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2.下肢障害となった知的障害社員の作業内容とその効果
（1）経緯 |
| 当初婦人服の物流業務に配置していた1名の知的障害者が、交通事故に巻き込まれ左脚を大腿部より切断するという事故に遭遇してしまった。この社員の雇用を継続させるために、作業内容をそれまで従事していた動きの激しい返品業務ではなく、身体の動きが比較的少なく、小さなスペースで座位でできる業務に配置換えを図ることとした。 新たな職域である値札の発行業務に配置転換をすることとし、アウトソーシングしていた業務を親会社との相談の上、委託していたN印刷紙業（株）よりご理解頂き、彼の業務として準備した。 |
（2）配置転換時の配慮点 |
| ア 仕事内容 身体の動きが比較的少なく、小さなスペースで座位で行う業務を選択した。 イ 対象者の能力・適性の把握 中学・高校時代にパソコン教室に通っていたため、機械操作・PC操作をすぐに理解できた。 |
（3）作業内容と手順 |
| 本社と連結しているパソコンに専用のソフトを導入して、値札の発行業務を行っている。 ア 本社に連動しているパソコン すべての情報を受け取る（メーカー別伝票、メーカー別配分表、メーカー別値札）  イ メーカー別にパソコン入力をする  ウ 宛先・場所の確認  エ 発券機より値札をだす 分配表（名前、メーカー）を確認して作成する  オ メーカー別棚 値札・伝票配分表をわける  カ 宅配便にて発送  |
（5）効果 |
| ア 知的障害者の新たな職域として、アウトソーシングしていた仕事ができることを実証した。 イ 本人自身継続雇用は無理だとあきらめていたが、新しい仕事を得たことにより、今まで以上に責任感と仕事のやりがいを見出すまでに至った。 ウ 本人の能力・適性に合った仕事を分担させることにより、やりがいを持って仕事に対応し、能力も向上している。 エ 一緒にいるメンバーからの声 ・義足のアタッチメントが悪いときやむなく欠席となるが、仕事を任されているという意識が強く、存在感が大きい。 ・一緒に働いている健常者は、障害者として特別な扱いや差別をせず、認めている。また、障害者から教わることも多い。 |
3.まとめ～親会社との連携と継続雇用の意欲
（1）今後の展望 |
| 当社は、親会社の経営方針や変化に影響を直接受けやすい特例子会社なので、親会社の理解を得ながら、また親会社の動向について敏感に対応しつつ、特例子会社としての立場も明確に主張していきたいと考えている。 特例子会社では、社内マネジメントが有効で本人の適性・能力を見極めることができ、状況が変化したときに柔軟な解決方法を検討できるため、その場で結論を急がずに『働く意欲』があれば職場環境を是正していくこととしている。 新規雇用については、景気が良くなり次第、増員していきたいと考えている。 |
（2）まとめ |
| 当社は、存続していくために最低でも赤字決算ではなく、常にB/S（貸借対照表）とP/L（損益計算書）を考えながら黒字である事により自立している会社を命題としている。 取材を通じて、雇用を継続させるために、親会社との密なる連携と関連会社への積極的なアプローチを行っており、『基本的に辞めさせない』という障害者雇用への努力が熱く感じられた。こうした企業経営者が数多く出ることが、これからの障害者雇用を進めるうえで重要なポイントになるとの思いを強く持った。 （執筆者：株式会社障害者支援センター取締役総務部長 岡濱 君枝） |
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