障害者のための印刷機器等の改善~メーカーとの共同開発で良い就業環境を~
2004年度作成
事業所名 | 小野塚印刷 株式会社 | |||||||||||||||||||||
所在地 | 新潟県新潟市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | 商業印刷全般、広告代理業務、印刷技術コンサルティング | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 55名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 11名
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1.事業所の概要と障害者の雇用状況
(1)事業所の概要 |

「人に優しい企業」「障害を持つ人々が最高の商品を生み出すこと」を企業理念に、更に「障害を克服して、自らが生み出すアイデアと、今まで培ってきた技術を融合し、お客様に最高の商品提供する」ことを常に目標に掲げ、企業活動を営んでいる。 |

(2)障害者雇用状況と職種 |

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(3) 作業工程別就労場所・作業状況 |

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(4) 障害者雇用の表彰等 |

平成3年、障害者雇用優良事業所として新潟県知事表彰を受賞。 平成5年、障害者雇用優良事業所として労働大臣表彰を受賞。 その他、全国障害者多数雇用事業所(エスペランス)会員である。 |

2.障害者が就労できる社屋建設、作業機械の改善
(1)新社屋建築に伴う、設備改善 |

平成7年、「重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金制度」の認可を受けて、障害者が不自由なく就労可能な社屋を建設した。 また、既存の機械等について、障害者でも各種作業が容易にできるよう改善(改造)を行った。 当社と印刷機械メーカーの共同開発により、聴覚障害でも安心して大型印刷機械のオペレーションを可能とした安全装置を開発した。 既存の印刷機では、聴覚障害者用1台、脳性麻痺者用1台、車いす使用者用1台、計3台改造し、現在も稼動している。 |

(2)聴覚障害者用の印刷機 |

11年前に導入した聴覚障害者用印刷機の改善(改造)は、「聞こえない」ことに重視して、作業者にバイブレーション機能を持つ受信機を取り付け、5種類のバブレーションパターンで機械の安全確認と機械の稼動状況を同時に知らせる装置を開発した。更に問題の箇所を電光掲示板で知らせる装置も開発し、作業上の安全と作業効率の向上を図った。 また、機械を離れてもある程度機械の動きが察知できるようにするために、5色のパトライトを設置した。
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(3)脳性麻痺者用の印刷機 |

既存の印刷機械では、右利き専用にレバーの装置となっており、脳性麻痺を持つ作業者には困難であったため、レバーを左右両側に取り付け、更にバランスを保つために手すりを増設した。 また、この印刷機にもパトライト装置を取り付けて、他の作業者にも機械の安全がわかるように改善した。 |

(4)車いす使用者用の印刷機 |

インキ調合用の台についても同様の改良を行った。 |

3.より良い就業環境・人間関係の構築
(1)コミュニケーション |

また、総務責任者は、障害者の職業生活及び私生活上の問題にも常に気配りをしているが、社内においては、社員ひとり一人に会社の障害者雇用に対する考え方を理解・浸透させることによって、障害者とともに働く意義と人間尊重について唱えている。 作業上、特に意思の疎通を欠く恐れのある聴覚障害者には、会社の現在の状況(方針)や目標等周知については、掲示板、印刷物による伝達を徹底している。 |

(2)社会参加による障害者雇用の相互理解 |

総務責任者は、関係企業、関係官庁、関係団体の勉強会に積極的に参加し、常に最新の状況を把握できるように心掛け取り組んでいる。 また、志を共にする企業同士のネットワーク作り(エスペランス会員)や、社員に対しても進んで社会奉仕等に参加するよう奨励している。 |

(3)障害者の自立心の育成 |

イ 全国障害者スポーツ大会やアビリンピック等の各種競技大会への参加については、他の社員にも理解を促し、本人が不在の間は協力し合い仕事面でのサポートを行なっている。 制作部に所属する聴覚障害者を持つ男性は、平成16年度に新潟県で開催されたアビリンピック新潟において優秀な成績をおさめ、全国大会にも出場した。 |

(4)健康管理上の配慮 |

平成6年7月から、障害者の健康相談専門医師を委嘱し、月1回、会社への往診の依頼をしている. これにより、障害者の健康管理が行き届き、また職場環境や生活面での助言・指導を受けるなど、専門医に気軽に相談できる環境を整えられ、個々人の諸問題が解消されて勤労意欲の向上に繋がり、遅刻、欠勤が目立って少なくなった。 |

(5)障害者雇用を進めるための諸活動 |

各学校や養護学校等の要請に応じて、障害者の社員を派遣し、職場体験等の発表をするなど、障害者雇用の地域の担い手としての役割を率先して果たすとともに、会社の理念や取り組みを地域社会へ発信し続けている。 |

4.今後の課題、展望
(1)課題 |

ア 障害の程度によっては、40歳位から作業能力低下がみられるが、DTPなどのパソコン作業は身体を使わない職種のため配置換えがむずかしい。また、体力の減退により、その都度機械を整えることは経費的にむずかしく、そのことにより退職に追い込まれるケースがある。 加齢による能力低下のフォローアップや退職後のアフターフォローの充実が早急に必要である。 イ 災害時での緊急マニュアルの充実が必要である。平成16年の中越地震を教訓とし、特に障害者のための緊急被災対応マニュアルと医療情報の提供が必要である。 ウ オンデマンドプリントの後加工の責任者に車いす使用の重度障害者を当てているが、今後、後継者の育成に取り組んでいく必要がある。また機器等の設備改善を含め早急に検討していかなければならない。 |

(2)まとめ |

障害者の職場定着を推進するために、各種印刷機器の改善、危険防止のための安全装置の開発等、常に「人にやさしい」職場環境の整備に努力するという前向きな姿勢を持ち続けている事業所である。 また、障害者を分け隔てなく「障害者技能競技大会」等に積極的に参加させて、社会の一員であるとの認識と生きがいを持たせ、「会社経営は障害者とともに成り立つ」「新技術の開発は障害者と健常者の相互理解と日常の労働意欲から生まれる」をモットーに、障害者雇用の模範事業所として地域に大きく貢献していることに深く敬意を表し、今後も障害者雇用の県下の代表企業としての地位を保ちつつ発展することを祈念したい。 (執筆者:小野塚印刷株式会社総務部部長 小野塚 繁基、 新潟県雇用開発協会障害雇用促進部長 本間 潔) |

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