障害者の職域として設けた総務サービス部～緑化と清掃作業で知的障害者を雇用～
2004年度作成
| 事業所名 | 第一ファインケミカル株式会社 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 富山県高岡市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 医薬品、動物用医薬品、食品添加物、飼料添加物、化粧品原料、試薬、診断薬等の製造及び販売 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 486名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 6名
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1.事業所の概要と障害者雇用の状況
（1）事業所の概要 |
| ア 設立 昭和26年12月 イ 資本金 22億7600万円 ウ 代表者 代表取締役 玉井 隼也 エ 企業理念 『かけがえのない人間になろう。かけがえのない仕事をしよう。かけがえのない企業をつくろう。』 オ 障害者雇用推進者 総務経理部参事 川中 正明 |
（2）障害者雇用に対する考え |
| 当社の会長は、2000年6月に社会福祉法人早川福祉会を設立するにあたって中心的な役割をしてきた方であり、現在も理事長をされている（早川福祉会は、特別養護老人ホーム藤園苑を運営している。）。 いわば老人福祉についての理解があり、また障害者雇用の問題についても、法定雇用率未満だから納付金で済ませるのではなく企業の社会的責任という見地から前向きに取り組むべきとの考えにより、障害者雇用の取り組みがされている。 |
（3）障害者の雇用状況 |
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2.総務サービス部の仕事内容と分担
（1） 総務サービス部の構成 |
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（2） 緑化 |
敷地（34000坪）の1割程度が緑地であり、除草作業の仕事は充分ある。 手作業での草むしりなので危険なこともないが、Gさんは障害が軽度なので草刈機を使うこともある。 |
（3）構内清掃（トイレを除く） |
厚生棟の清掃（風呂、ロッカー室、休憩室、トレーニング室など）、食堂のゴミ処理等。
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（4）時間配分等 |
| 作業環境については、除草と各自持分の清掃の範囲であり、危険ということがないようにしている。従って施設の整備や特段の工夫も必要ないと考えている。 作業能力が健常者に比べると7割前後ということで、その時間配分を少し多目にするなど、いわば業務量の調整で対応できる。 |
3.能力開発と雇用管理
（1）能力開発 |
| 現状の作業内容からして、事業所側としては特段のことはしていないし必要はないと考えている。事故の危険性が伴うことはさせていないし、今後も同様の職域で対応していくつもりなので特段の訓練・教育の予定はないとのことである。 ただ、採用時（トライアル雇用の期間）に学校の指導員またはジョブコーチが来てくれて、障害者に仕事を教えてもらっている。これらのことは、素人ではなかなか困難な部分もあり、雇用推進ということもあり出来るだけの協力・支援をしてくれる。 最初の1週間は毎日、次の週は1日おきという具合に、徐々に回数を減らしながらではあるが、3ヶ月ほど仕事を教えるために来てくれた。今は、大分慣れてきたし順調になってきたので、もう大丈夫だろうということで、定期的には訪れなくなってきている。新しい仕事を教える時は、いつでも連絡してくれればジョブコーチが来てくれる。 今では、健常者の援助なしで風呂掃除もできるようになったとジョブコーチも感心している。 |
（2）労働条件 |
| 下肢不自由の2名は、正社員として健常者と殆ど同じ扱いである。 総務サービス部配属者については、以下のとおりである。 ア 通勤は、バス1名、自転車2名、マイカー1名。 イ 賃金は、知的障害者も最低賃金を上回っている。 ウ 障害者4名は、契約社員として1年更新である。 エ 雇用推進者または健常者職員のどちらかが監督できる体制でないと仕事はさせないようにしており（監督者がいない状況にはしない）、健常者の職員が土曜休みの時は、休んでもらうようにしている。 オ 職場定着率はよく、今までに退職者はいない。それなりに条件がよいからと思われる。 |
（3）同僚との関係 |
| 特段問題なくやっている。トラブルのない理由として、チーム全体の共同作業でモノをつくったり、仕上げたりするものではないことがある。つまり、流れ作業の工程の一部を担当したりチームでどれだけの数量の作業をさせるわけではなく、個別の仕事をこなすので、グループの誰かに迷惑をかけるということや、作業能力の低い者が責められるような仕事ではないためと思われる。 |
（4）施設等 |
| 下肢不自由者は3名であるが、3名とも歩行に特段不自由しない程度で、車いすの使用者がいないので、特段の施設の改造や整備は必要ではないと考えている。 |
4.今後の展望
| 当社においては、知的障害者に対して限定した枠内での作業指示となっているので、当社としての課題は少ないのかも知れない。現状の雇用人数に適当な作業量の割当がされているし、更に安全圏での仕事といえるからである。 一般的に、知的障害者の雇用を考える時は、そつなく雇用継続できることを優先するものである。新しい作業をもう一つ与えるということは、指導する側にしてみれば、指導や監督において、もう一つ仕事が発生することになるので戸惑ってしまうかもしれない。また、何度も何度も繰り返して根気強く教えていくことは、障害者教育が素人の従業員にとっては困難なことでもある。 障害者の職域を拡大するということは時間がかかり手間がかかるのは仕方のないことと割り切って、その上で指導員やジョブコーチ等の専門職の援助も受けながら障害者を活用することによって、直接・間接・将来的に会社へのリターンが生まれるものでもあることを認識して、今一歩の活用ができることが望ましい。特に知的障害者の場合は、現状問題なく雇用されて法定雇用率が達していることだけを考えるのではなく、できるものなら、今の仕事ができるようになれば次の仕事を探す、見つけるのが望ましいことではある。新しい仕事を一つ覚えること、成し終えることの達成感で更に意欲的に仕事に挑戦できるようなことになれば、知的障害者自身の向上心になるし、必ずや事業所にとっても、何かの形でメリットとして還元されてくると考えられる。 知的障害者の雇用ネットワークの活用等によって、他社の活用例を参考にしながら、出来る作業を新たに一つずつ見つける支援体制が必要となっている。 （執筆者：岡野社会保険労務士事務所社会保険労務士 岡野 満） |
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