障害者の能力開発と作業改善
2004年度作成
事業所名 | 有限会社日本海プリパックセンター | |||||||||||||||||||||
所在地 | 富山県富山市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | 青果物パッケージ包装 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 31名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 5名
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![]() 南雲社長 |

1.事業所の概要
(1) 事業内容 |

現在お客様である卸売業者数は5社であり、月間平均総取扱量は約400トンである。 |

(2)沿革 |

現社長の南雲寛一氏が、当社のグループ(大松グループ)会社である大松青果株式会社(青果物卸売業)の役員時代の1976年(昭和51年)に富山市中央卸売市場内の一角を得て設立した。 当時、日常食料品(青果物、水産物等)の小売店頭販売は、車社会の到来と軌を一つにして、小規模小売店(いわゆる八百屋さん、魚屋さん)形態から大規模小売店(大型スーパーストア)形態に急速に変化していく時代であった。大型小売店での販売方式は顧客のセルフサービス方式が一般化し、かつ、お客様の利便性やレジ処理のスピードアップ化のために、店頭販売店から、予めパック包装したものを仕入れたいというニーズが高まった。このニーズに対して当初は卸売業者がそれぞれ自前で包装していたが、取扱量が増加してくるに従い、各卸売業者の分を1か所でまとめてパック包装したほうが効率的であるとして、パック包装会社が設立された。 |

(3)設備等 |

ア 工場面積 一部2階建て 延べ面積360m2。 イ 主な設備 丸物青果物プリパックライン(計量秤.コンベヤー.結束機含む)3連。 長尺青果物(ごぼう等)プリパックライン1連。 フォークリフト2台他。 |

2.障害者雇用の経緯
(1) 障害者雇用のきっかけ |

南雲社長が障害者の雇用に関わりをもたれたのは今から約20年前に遡る。その当時、南雲氏は同じく大松グループ傘下の株式会社大英商事(現社名は株式会社アスコ。事業内容はカット野菜、もやし等一般外食産業向けの野菜の製造・販売。3年前に富山市から立山町に移転。)の社長に就任されていたが、富山市内の精神障害者社会復帰施設から「院外作業場」として障害者受け入れ要請を受けた。安全・衛生管理その他の面で不安もあったが、当時バブル経済のはじまりで、人手が不足気味であったこともあり受け入れを決意した。当初は7名、多い時期では15名受け入れしていた。 3年前に株式会社大英商事が立山町に移転した際、遠距離通勤がネックになり、当社での院外作業は中止となったが、それまで17年余にわたって障害者の雇用に積極的に関わってこられた。 また、南雲社長は、多忙の傍ら14年前からライオンズクラブに所属して障害者施設への慰問やスポーツを通じた交流事業等を計画され、ボランティア活動を通じて障害者が社会復帰するための支援活動を積極的に支えてこられた。 2年余り前に当社の社長に専任になり、『仕事の質を高めながら、障害者が社会人として自立できるようサポートしたい。』の信念もとに、当社でも、障害者を雇用していくことができるように作業・設備改善及び雇用管理の面での改善に取り組まれてきた。 |

(2)トップの信念 |

南雲社長は2年余り前に当社の社長に専任されることになり、それまで障害者就業体験支援事業の受け入れなどによる障害者雇用やボランティア活動を通じて障害者に深い関わりをもってこられた長年の経験から、障害者に対して以下の信念を持っておられた。 ・複雑な作業はできない人でも、比較的簡単な作業であれば根気よく続けられる。 ・作業内容によっては繰り返し作業することにより、作業スピードが向上することは健常者と変わらない。 ・褒めることによって顔が輝き、叱ることによって存在感を自覚し、自信をもってくる。 |

3.作業工程の概略及び障害者の作業場所
(1)青果物が丸物の場合 |

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(2)青果物が長尺物(ごぼう等)の場合 |

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4.作業内容と雇用管理の改善
(1)作業・設備改善 |

改善前は「選別・計量・バケット入れ作業」と「ビニール袋開封・青果物封入・コンベアに流す」という2工程をまとめて一つの工程として複数人で作業していたが、障害者の場合には計量作業のところでたいへん時間を費やしているケースが多く、また青果物を作業台に載せてから結束へわたる間の歩行時間が多かった。 それらの工程に懸架装置付きコンベアを新設し、かつ、1つにまとめていた2工程を分割し、障害者には「ビニール袋開封・青果物封入・コンベアに流す」工程のみを担当させることによって作業に専念できるように改善した。その結果、歩行時間が皆無となり、かつ、作業時間が全体として大幅に短縮することができた。 イ 長尺青果物の場合 改善前は、「長尺のビニール袋の開口、青果物の挿入及び結束」工程はすべて手作業であって、その複数作業を一人が担当していた。そのため作業が煩雑で、歩行距離が長く、かつ、長尺のビニール袋の開口に手間取ったりして1パックを完了するのに長時間を要していた。 この作業を機械による自動化を図った。その結果、人手作業が減少した上、簡易化されて、障害者にも容易に作業に適応できるようになり、かつ、作業時間が大幅に短縮することができるようになった。なお、この機械装置は当社の自社開発によるオリジナル機である。 上記以外にも重量物(すいか等)ネット袋入れ作業の能率向上と作業姿勢の改善のため、当社独特の装置を考案する等の作業負担の軽減対策を行った。 |

(2) 雇用管理面での工夫 |

雇用管理面でも、以下のような目立たない気配りと社風づくりを心掛けている。これが障害者を定着させている大きな支えになっているように思われる。 ア 健常者も障害者も差別しないという原則を徹底させるため、まず、「大きな声であいさつ」運動を全員に呼びかけ、社長、工場長が率先して実行して社風づくりを行った。 イ 時間の許すかぎり社長自身が現場へ出るように心がけ、「8回褒めて2回叱ることによって障害者が輝き、自信を持つようにと率先した。 ウ 残業で帰宅が遅くなるようなときには、社長自身が当該者をその自宅まで移送するなどの時間的工夫をして障害者とのコミュニケーションができる時間を作っている。 エ 職場の「援助者」には「指示する」より「見守る」姿勢をお願いしている。 |

5.今後の課題とまとめ
作業改善の課題として、冬場には越冬野菜が増加してくるが1包装当りの重量が大きいため、今の設備では対応できないので人手作業に依存している。これを機械化・自動化できないか研究中であり、早く実現したいと考えている。 また、休憩時間に休憩室において、障害者仲間で固まる傾向が残っており、また、身体障害者(脚部障害)が使いにくい点があるので、この問題を解消するため休憩室の改築案を検討中であり、できるだけ早く実現したいとのこと。 社長から、自分が当会社を引退後も、当社が障害者雇用のモデル事業所として行き続けていけるよう後継者を育成したい、などのことば・決意を聞かせていただいた。 なお、当事業所は、富山県から「障害者社会適応訓練事業」の協力事業所に指定されており、現在さらに2名の障害者が訓練就業していることを付記しておきたい。 (執筆者:社団法人富山県雇用対策協会高年齢者雇用アドバイザー 大代 武) |

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