ジョブコーチを活用した食器洗浄業務での障害者雇用の取り組み
2004年度作成
事業所名 | 有限会社テルメ金沢 | |||||||||||||||||||||
所在地 | 石川県金沢市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | ホテル、天然温泉、サウナ、レストランの経営 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 124名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 4名
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1.ジョブコーチを活用して障害者を雇用した経緯
(1)事業所の状況と経緯 |

当社は、昭和53年7月に設立。以前から公共職業安定所や養護学校からの職場実習依頼を受け入れるなど、障害者雇用には前向きに取り組んできており、現在、4名の障害のある人が働いている。 しかし、事業所にとって人材育成は非常に重要であり、特に障害のある人を採用するに至っては、その人の障害特性を見極め、その人に合った指導方法で教えなければならず、時間と人員という大きなコストが掛かるものであった。 そこで、今年度採用になった知的障害のあるAさんの場合は、養護学校の職場実習の時点から事業所・養護学校・就労支援機関である(社福)金沢市社会福祉協議会(以下、「金沢市社協」とする)のジョブコーチ(障害のある人が一般の企業で自立して働けるように援助を行う者)が連携をし、支援~採用~雇用後のフォローアップまで一貫して支援を行うこととなった。 |

(2)Aさんについて |

卒業後の採用についての話を進めていくうちに、事業所側から「リネン部門は人員が足りているので、代わりにレストラン内での食器洗浄で働けないか」と提案がなされた。Aさん、事業所、養護学校、金沢市社協と話し合った結果、金沢市社協のジョブコーチが職場に入って支援することになった。 そこで、Aさん及び事業所、それぞれの適性を見極めることを目的に、石川県障害者職場実習制度(石川県独自の制度)による実習を1ヶ月間行った。 この実習の結果、若干の作業面での課題が見られたものの、その勤務態度が高く評価され、3ヶ月間の試行雇用(トライアル雇用)を経て、パート採用に至った。 |

2.ジョブコーチによる支援1~課題分析
(1)Aさんの業務内容(会社の要求と採用の基準) |

Aさんの主な仕事は、レストランの厨房内での食器洗浄である。このレストランでは、毎朝、「朝食バイキング」を行っており、朝食の時間帯は他の時間帯に比べて洗う食器の量も多い。特に土・日・祝日は利用客も多く、洗浄作業を行う専任の従業員を置いているほどである。 そのため、Aさんが採用されるかどうかの基準は、洗浄作業の従業員と協力しながら、この忙しい朝食の時間帯で戦力として仕事ができるかであった。そのため、職場実習開始からのジョブコーチの支援は、いかに効率よい洗浄方法をAさんに伝えるかを目標に行った。 |

(2)食器洗浄作業の課題分析 |

Aさんに食器洗浄作業を教えるにあたり、事前にジョブコーチが職場で仕事を体験し、洗浄作業の手順を細かく分析することにした。このように作業手順を分析することによって、以下の点でメリットが考えられる。 <作業手順を事前分析するメリット> ・一見複雑そうに見える作業手順が分かりやすくなる。 ・作業手順が固定されるため、覚えやすい。 ・作業手順が時系列に沿って並べられているため、どの部分で間違えているのか分かりやすい。 今回の食器洗浄では、以下のような課題分析ができあがった。 <ジョブコーチが作成した課題分析表>
※ 一人で洗浄作業を行う場合は1~14までの工程をすべて行う。 二人で行う場合は、1~6までと7~14までの工程に分かれて作業を進める。 |

3.ジョブコーチによる支援2~指示書の作成
(1)課題:洗浄作業の流れを身に付ける。
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食器洗浄は前述のような流れで行われる。当初のAさんは、食器洗浄(課題分析1から6)にのみ集中してしまい、洗浄済みの食器の片付けがおろそかになったり、またその逆に片付け(課題分析7から14)に夢中になるあまり、下膳をためてしまうことがあった。そのため、食器洗浄と食器の片付けまでの一連の流れをうまくこなすことができなかった。 そこで、作業の流れを視覚的に伝えることで、作業全体の流れをイメージしやすくできるのではないかと考え、作業の流れを図示した指示書を作成し、これを用いて作業の流れを説明した。また、指示書の内容を定着させるため、この指示書を厨房内の壁に貼らせてもらうことにした。 その後、この指示書をもとにした支援を続けることで、Aさんは洗浄作業の流れをイメージすることが出来るようになった。 ![]() |

(2)課題:効率の良い洗浄作業を身につける。
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洗浄作業をAさんに任せると、効率良く進めることができなかった。それは、全体の仕事の流れを掴めないことに加え、洗浄作業そのものに課題があった。 その課題をクリアするため、効率良く行うためのコツを従業員から聞き取り、洗い方を整理・固定させて教えることにした。以下の表は、その支援方法をまとめたものである。
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4.事業所の評価と支援のポイント
(1)現在のAさんの様子 |

Aさんは3ヶ月の試行雇用期間を経て、平成16年8月1日からパート採用となった。現在は、作業速度など他の従業員と比べて若干至らない面はあるものの、土・日・祝日の忙しい時間帯にも重要な戦力として捉えられており、事業所の要求水準に近づくことが出来ている。 また、事業所側からも、本人の素直な性格と仕事に対する積極性が高く評価されており、実習当初は食器洗浄が中心であったが、現在はこれに加え、接客や料理の盛り付け、他階の厨房の洗浄作業を手伝いに行くなど、本人の活躍の場が広がりつつある。 |

(2)支援のポイント |

Aさんの支援では、いかに作業効率を挙げるかが課題であった。障害の有無に関わらず、誰でも初めて仕事をする時は、どのように行えば早くてきれいにできるのか考える余裕がないだろう。 まして障害のある人の場合、周りの状況を読み取ったり、作業の効率を考えながら作業を進めていくことが苦手な人が多い。そのため、支援者にとってはいかに手順を把握し、相手にわかりやすい形で伝えられるかがポイントになると思われる。作業を進めていく上でのコツや工夫点を周りの従業員などから聞き取り、障害のある人にとって分かりやすい形や方法で伝えていくことが、仕事の上達への近道になると思う。 (執筆者:社会福祉法人金沢市社会福祉協議会金沢障害者就業・生活支援センター就業支援担当 |

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