聴覚障害者が働きやすい職場環境をめざして~主任として働く聴覚障害者~
2004年度作成
事業所名 | 有限会社まるしょう | |||||||||||||||||||||
所在地 | 石川県小松市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | 漬物製造販売 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 12名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 2名
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1.事業所の概要と障害者の雇用状況
(1)事業所の概要 |

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(2)聴覚障害者の採用の経緯 |

聴覚障害というだけで健常者と何ら変わらず、仕事ができる場を提供していくことができるのではと思い採用した。 初めに採用した女性の聴覚障害者は、非常に積極的に仕事を頑張っている。Kさんは二人目の障害者で、現在は主任として他の従業員と共に仕事に励んでいる。 |

2.主任として働く聴覚障害者
(1)Kさんについて |

年齢24歳。先天性ろう。聴力は右左ともに100db。 幼稚部から中等部までは石川県立ろう学校に在学し、中等部卒業後は県立高校へ進む。高校生活ではコミュニケーションに悩んだと本人は言う。 卒業後は有限会社まるしょうに就職する傍ら、小松市聴覚障害者福祉協会青年部長、社会福祉法人石川県聴覚障害者協会評議員、社会福祉法人石川県聴覚障害者協会青年部会計部員等、役員としてまた、手話講習会講師を引き受けるなど活躍中である。 聞こえる従業員とは、身振りや簡単な手話で話す。性格は責任感が強く、几帳面である。 |

(2)1日の仕事の流れとコミュニケーション |

(通常業務における1日の流れ・コミュニケーション)
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(3)就職当初の状況 |

Kさんは、当時の主任より指導を受けた。また、自分で考えながらいろいろな仕事を覚えていった。 フォークリフトの操作ミスで建物に接触するようなこともあったが、社長はそこで止めさせるのではなく、どんどん機会を与え、仕事の幅を広げさせた。 悩んだり落ち込んだりすることもあったようだが、会社は小松ハローワークと連絡を取り合い、手話通訳者を呼んで本人の悩みを聞いたり、話し合いの機会をつくるなどして対処した。 |

(4)コミュニケーションの配慮 |

聴覚障害者の場合、コミュニケーションがとりにくいことが最大のハンディであることを会社は理解し、その環境を整えようとしている。 社長夫婦は手話の必要性を感じ、時間を作って市内の手話講習会入門課程を修了した。これにより、簡単な手話と口話で、コミュニケーションがとりやすくなった。また、同僚に対してKさんが少しずつ手話を教えたりして職場全体で円滑な意思の疎通に努めている。 |

(5)職場環境の改善 |

事務室と各作業室との間が透明なガラス張りになったので、お互いの姿が見え、簡単な連絡、例えば「きゅうり何本?」「大根はいくつ?」など数の確認等は、身振りや簡単な手話でやりとりができるようになった。
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3.聴覚障害者の働きやすい職場をめざして
(1)経営者の真摯な姿勢 |

「どれだけ相手の気持ちになれるのか常に配慮しながら、お互い障害を意識しないで働ける職場環境へ向けて取り組んでいきたい。」と社長は語る。 「聞こえないとはどういうことなのか?」を聴覚障害者とのふれあいの中で実際に体験されながら今日の理解につながってきたのだろう。お互いに通じないことから起こる認識のズレや誤解を、日々の業務の上でどう解決していくか?社長夫婦が手話の必要性を認識し、約半年間の手話講習会に通われたことは、ここに働く2名の聴覚障害者にとってどれほど嬉しいことであり、励ましになったことだろうか。また、同じ職場で働く人たちにもお互いに歩み寄ることの大切さを自然な形で手本を示されたことになるだろう。 単に社長と従業員と言う立場だけでなく、時には相談や指導、また時にはじっと見守りながら、根気よく聴覚障害者2名の精神的な成長を促してこられた経営者の暖かい人柄が感じられた。言うまでもなく働く聴覚障害者本人の並々ならぬ努力と忍耐があればこそ、このように信頼され責任のある仕事を任されるまでに至ったわけであるが、そこまで本人を信じ、その成長を待ち、熱意を持つ者に対して機会を均等に与え、働く事の充実感や喜びを共に感じられる職場づくりを目指す経営者としての真摯な理念があったからではないだろうか。 主任という責任ある立場で働いているKさんであるが、今後も社内での会議などへのより積極的に参加していくためにも、是非いろいろな場面で手話通訳などをうまく活用し、持っている力を十分に発揮してもらいたい。そのためには、会社内での情報共有のあり方についても、共に検討していくことができればと考えている。 |

(2)支援者として |

筆者が所属する石川県聴覚障害者センターには、いろいろな機関から聴覚障害者の就労に関する相談が持ち込まれる。それらに対し、いろいろな形で支援などを行っている。先日も、ある会社に、聴覚障害またはコミュニケーションに関しての啓発講座の開講を企画・提案し実施したところ、大変成果があったようで、まわりの社員の理解がより深まったとの報告を受けている。 当センターは、企業だけでなく、職業安定所の職業相談員・手話協力員とも連携をとりながら聴覚障害者の就労支援に関わってきている。今後も、聴覚障害者の専門施設としての機能を社会に啓発し、長年培ってきたノウハウを社会に提供し、聴覚障害者がより働きやすい社会の実現をめざしていきたいと考えている。 (執筆者:社会福祉法人石川県聴覚障害者協会施設長 北野雅子) |

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