障害者の生活支援による雇用の開発と継続
2004年度作成
事業所名 | 増田紙器工業 株式会社 | |||||||||||||||||||||
所在地 | 福井県武生市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | 紙器製品、包装資材の企画・デザイン・製造販売 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 60名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 12名
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1.事業所の概要と障害者の雇用状況
(1)事業内容 |

増田紙器工業株式会社は、武生の地で大正7年創業し、3代に亘り長年各種の紙器製造販売を続けている。近年はデザインスタジオを創設するなど、商品の企画・デザイン・印刷をも一貫して手掛け、商品のパッケージ作りを通して、顧客企業の販売戦略をバックアップすることをコンセプトに、意欲的に取り組んでいる企業である。 営業品目は、各種紙器製品、段ボールケース、塩ビクリアケース、ウレタンケースなど梱包資材の企画、デザイン、製造販売。 |

(2)障害者雇用の理念 |

ア 自分の子、兄弟と思って接する 「自分の子、兄弟と思って接する」、障害者の人達と一体になって働ける環境は、社員全体にとっても働き易い職場となる。 イ 相手の立場になって考える 自分だけが、我社だけが良くなればいいのではなく、相手も、私も、皆も良くなることが大事。「共生」。 ウ 親と会社が共に自立を願う 親と会社が共に障害者の自立を願い、相互に理解と協力し、また健常者と協力して働きながら、困難を乗り越える。 |

(3)障害者雇用の経緯 |

昭和40年代までは、作業の一部分を内職として多くの家庭にお願いしていたが、その家庭の中に障害を持った子供さんが居られ、その親御さんから、「子供に作業をさせたいので預かってもらえないだろうか、将来のことを考えると心配でならない。」との相談を受けたのがきっかけで、障害者の人たちを受け入れ会社で作業をしてもらうことになった。 そのうちに次々と依頼があり、多くの障害者の人たちを受け入れるようになり、福祉関係者からの依頼もあり17~8人の方を受け入れるまでになった。そこで、武生市として福祉作業所を創設するように市長にお願いし、市の職員2~3名と社員1名が参加し「武生市ひまわり作業場」が発足したので、多くの障害者は作業場に移った。 その後も職業安定所からの職場適応訓練、養護学校からの作業実習なども受け入れており、そのような関係のなかで就職の依頼があり、今日のように12名の障害者を雇用している。 |

(4)障害者の雇用状況 |

知的障害者
精神障害者
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2.作業内容と配置
知的障害者は、基本的にそれほど高い技術を必要としない単純継続作業を中心に就いている。精神障害者は、中程度の技術を必要とする少し複雑な作業に取り組んでいる。 |

(1)印刷され型抜きされた函の糊付け |

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(2)高級和風函への表面紙の糊付けと貼り付け |

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(3)函折組み立て |

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(4)完成したパッケージへの商品詰め、段ボール箱での梱包出荷 |

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3.社内体制と地域との連携
(1)障害者職業生活相談員の配置 |

障害者を支援するために専属の社員(障害者職業生活相談員)を置いており、仕事上で分からない所は無いか、社員間の人間関係で悩みは無いか、家庭生活においても問題ごとは無いかなど、仕事を中心として本人が安心して生活できるように支援を行っている。 障害者職業生活相談員の有資格者は3名。 |

(2)業務遂行援助者の配置 |

障害者の人たちが働いている部門では、2~3名に1名担当社員(業務遂行援助者)を配置して班を作り、作業目標、作業計画、作業内容、品質管理などは主に業務遂行援助者である社員が支援しながら、班の中で相互に協力して生産する体制を組んでいる。 |

(3)生活指導と健康管理 |

障害を持っていても家庭がどのように接していたか、家族の一員として自分で出来る役割を果たしているかによって本人の自立意識が違うことを認識し、障害者が安定し継続的に業務に取り組む事ができるように、生活指導を重要な位置づけとして、本人の立場に立った生活支援を心掛けている。 さらに、様々な成功体験や失敗体験を活用し、世話を焼きすぎず見守り、相談を受け、本人自身が考えて判断し、試練を乗り越えて自信となるように支援していくことが業務実績に繋がっているとのことである。 健康管理面では、会社で行う健康診断はもとより、本人の勤務状況を見て異常を感じれば本人に健康状態を確認したり家族に連絡するなど早めの処置に協力している。また、家庭状況によっては相談に乗り通院なども助言する。 |

(4)職親制度での受け入れ |

特に自立性が低いと思われる知的障害者を職親制度として受け入れたことがあり、当初はどうして良いか判らず不安であった。職業生活面では、朝夕の挨拶、出勤退社時間、作業職場や休憩時のマナー等を指導し、作業面では、作業種類別に試行訓練して適性を判断する等、約半年間にわたり密接に根気強く指導を繰り返した。 その後、職業生活面での自立性も高まり、補助作業が出来るようになったので、常用雇用に移行している。 |

(5)関係機関、福祉施設、地域との連携 |

職業安定所からの職場適応訓練の受け入れや、雇用促進協会が開催する障害者雇用を促進のための研修にも積極的に社員を派遣し、受け入れるための基盤整備と社員への意識付け、資質の向上を目的として、積極的に推進し働きやすい職場作りに励んでいる。 また、障害者職業センターとの連携も多くもち、カウンセラーやジョブコーチを受け入れながら、障害者の作業能力の開発、働く意欲の向上を図り、雇用の安定と継続し易い環境作りにも努めている。 養護学校との関係においては、生徒たちの作業実習の場として、積極的に受け入れながら、生徒の作業環境への適応力向上、作業持続力の強化、雇用就労意欲の開発など、就労能力の向上に貢献している。 そのほかにも、精神科病院の患者が社会復帰する為のリハビリテーションとしての一部門である作業療法において、資材を提供し、間接的ではあるが社会復帰に貢献している。 |

4.今後の展望とまとめ
増田紙器工業(株)では歴代の社長が障害者の方に対する理解度が高く、現社長も障害者の方に対するいろいろな企画を立てておられる。 一般の作業の中にも、障害者に適した作業内容は一部分が含まれているが、それ以外にも障害者向けの仕事を、特別に企画し営業活動されて、就労が安定継続するように配慮されている。 物的環境面においては、働き易いようにと部分的にさまざま点で改善の努力をされておられるが、抜本的改善を計画中とのことである。 また、人的環境面では、多方面に支援役割を持つ社員を配置し、きめ細かに対応されており、就労が安定、継続、発展している事が頷ける。 (執筆者:社会福祉法人足羽福祉会知的障害者授産施設足羽ワークセンター施設長 大舘 嘉昭) |

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