専任援助者を配置して知的障害者を育成
2004年度作成
| 事業所名 | 小浜製綱株式会社 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 福井県小浜市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 原糸・撚糸・ロープ・組紐・ネット等の製造販売 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 68名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 3名
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1.事業所の概要と障害者の雇用状況
（1）事業所の概要 |
専門社員を配置し作業面での指導や配慮は勿論の事、業務以外の日常生活や家庭内での相談にも家族を含め積極的に対応している。 |
（2）障害者雇用の方針と経緯 |
| 社の方針として、業種の関係上現場の作業種によっては従事困難な障害内容の方は別として、企業として法定雇用率以上の採用は義務であり、可能な限りの努力が必要と考えている。 今までに、事故によって中途障害となった身体障害者を3名雇用していた事がある。その中には、細かい作業や重い物の運搬、階段の昇降など困難となったが、長年の経験から得た高い技術力が社にとって必要であり、残存能力としての知識と管理力を生かして製造部の管理職として製造技術や製品・生産の管理関係で力を発揮してもらい定年まで勤務してもらった方もいる。 そうした中、近くの養護学校より生徒2名の職場実習の依頼があり、知的障害者は初めてであるが今までの障害者雇用の経験が生かせると考え受けることとした。実習を通して知的障害者と共に働くことの難しさを痛感したが、時間を掛けて職種を選定して指導し、周囲の環境面での体制を整えれば単純な作業での能力は高く、雇用への感触を感じ卒業後の採用となった。 その後、夜間警備員の求人に応募してきた片上肢障害者も採用している。片腕以外不自由がなくPC操作が出来るので、待機時間を活用して書類のワープロ仕上げを別料金でお願いしている。また、PC操作の更なる向上にも取り組んでおり、支援を行っている。 |
2.知的障害者の育成についての取り組み
（1）専任援助者の配置 |
| 身体的な障害は職種選定を考慮すれば残存能力を発揮できるが、初めて知的障害者2人を雇用するに当たっては、彼らが心理的にも安定して働けるように指導や管理をする専任援助者を置き、作業指導だけでなく勤務に関する全体的なことから家族との連絡等も行っている。 作業面では、単純作業が少ない職場の中で比較的変化の少ない流通部門において包装作業を中心に、援助者が指導しながら一緒に作業をしている。して良いこと、悪いことをはっきり示し「叱る」ことも重要なコミュニケーションとなっている。 |
（2）作業指導 |
| 包装、結束、出荷ラベル貼り、運搬の一連した作業を行っているが、船舶用ロープともなると一巻きの重さがかなりの重量物となる。包装での結束は重要で、確実に行わないと荷崩れをおこしてしまい顧客に多大な迷惑と損害を与えてしまう。紐結びやはさみなどの道具を使う作業を習得することは、知的障害者にとって簡単なことではなく、指導する上でケガなどの危険なことも起きないよう考慮し十分な時間を掛けて行った。紐結びが出来るまでには約3ヶ月を要したが、現在は完全に任せられるようになっている。 さらに、自動梱包機でのセッティングから操作までも習得し「自分の仕事」と自覚して頑張っている。
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（3）接し方 |
| 作業の中で特に気を付けている点は、対照的な性格の知的障害者二人への接し方である。 一人は、単純作業をもくもくと真面目にやるが、少しでも変わったことをさせると悩んでしまって落ち着きがなくなり、手が止まったり休みがちになることがある。担当者が家庭との連絡や訪問を何度も繰り返して、仕事をする楽しみと気力を指導している。 もう一人は、作業速度は遅いが正確な作業を行っており、マイペースで作業を消化している。家庭内の環境変化も就労意欲に大きな影響がでるので、仕事でのバランスも考慮して現在は定期的に連絡交換を行っている。 知的障害者との接し方で一番大切なことは、心のどこかで自分を構ってくれる人を求めていることにあると考える。常に周囲に人がいて気配りと「声がけ」をすることである。「いくつ出来たかな」「よくがんばったね」「次はこれをするよ」など作業の面白さと成果を結びつけることと、作業の空き時間を作らないことで、安定した作業と数量アップに向けて彼ら特有のすばらしい能力がでてくる。 |
（4）通勤と賃金 |
賃金面では日給制だが、自立自活するための最低賃金は保証している。 |
3.今後の展望とコメント
（1）今後の展望 |
| 各分野の製造産業が中国、東南アジアの製品に変わっていく中、規格品と言われる高品質で高い信頼性が要求される商品は健在である。他社では真似の出来ない技術力を持ち業界をリードすることが今後の企業存続と成長になり、障害者の雇用や継続にも結びつく重要なことである。引き続き求人条件に合った障害者の求職者がいれば雇用を進める計画がある。 |
（2）コメント |
| 障害者基本法では、「障害者は、その有する能力を活用することにより、進んで社会経済活動に参加するように努めなければならない。」と定めてあるが、正社員の雇用が減りパートやアルバイト社員が増える時代となり、障害者が希望する職種への就労にはかなり厳しいものがある。 そのような中で、小浜製綱は、雇い入れ側が明確な障害者雇用に対する方針を出し、内部的にも専任者を置くなど体制作りにもコストを掛け、前向きの姿勢が強く感じられた。 障害者が家から外に出て働くという自立の精神は継続して始めて意味をなす事と考える。休みがちになったときの対応を担当の方が熱心に話しているのを聞くと、雇用した責任とは何かを改めて考えさせられた。 当社のように大型の自動機による生産を行い、専門知識や職人技が要求される業種でも企業努力によって安定雇用となった事例として参考になれば幸いである。 （執筆者：社会福祉法人たけふ福祉工場施設長 八田 弘之） |
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