雇用拡大につながる事業展開を模索する
2004年度作成
事業所名 | 東和組立株式会社 | |||||||||||||||||||||
所在地 | 岐阜県美濃加茂市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | 自動車部品(ショックアブソーバー)の組立 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 101名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 11名
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![]() 会社前景 |

1.事業所の概要と障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要 |

従業員は、現在101名で、そのうち11名の障害者を雇用している。 |

(2)障害者雇用の経緯 |

当初より養護学校からの依頼があり、生徒の職場実習を受け入れてきた。昭和46年にはじめて聴覚障害者を採用した。その後、職場実習を経験した養護学校の卒業生を採用し、知的障害者を中心に徐々に増やし、現在まで20名ほどの障害者を採用している。現在も、高等部2、3年の実習生を年に2週間づつ受け入れている。 当事業所の基本方針としては、障害者も健常者も区別なく、同じ労働条件で扱うこととしている。障害者の採用を始めた頃は、戸惑うことも多く、特に知的障害者の指導に困難を訴える担当者の声が多かった。しかし、さまざまな支援を得て、徐々に現場のスタッフも慣れていった。 |

2.障害者の採用、配置と指導方法
(1)障害者の仕事内容 |

勤務態度は概ねまじめであり、欠勤は少ない。 当事業所は、今後多方向ラインの導入を課題としており、限られた少ない人数で様々な仕事をやれるようにしていきたいと考えている。いろいろ経験して、少しずつでも自分の仕事のレパートリーを増やすこと(多能工化)を目指しており、複数の仕事を覚えてこなす人も徐々に増えている。 |

(2)採用 |

採用する際の条件として、ライン作業のため、他の社員と同じように残業や休日出勤などをやってもらうことを示している。また、基本的に自力で出勤できる人を採用している。 待遇面では、最低賃金を確保しており、除外申請をせずに雇用を続ける努力をしている。 採用方法は、養護学校から現場実習に来た生徒を卒業後に採用することが多い。その際、本人だけでなく両親も職場を見学してもらい、面接を行う。実習期間をとおして、採用後働けそうな部署を考えることができ、本人も、実習をとおして職場の雰囲気に慣れ、自信をつけることができるというメリットがある。また、障害者職業センターのジョブコーチ支援事業を利用することもある。 障害者を雇用する際には、本人に適当な仕事があるかどうかをよく見極めるよう努めている。 |

(3)配置と指導 |

できるだけ多くの社員に障害者雇用指導の講習を受けさせ、指導体制を整えている。 障害者は、ひとまず適切な部署に配置し、担当者を決めて、仕事が一人でできるようになるまでマンツーマンで指導している。大まかに言えば、ものになるまで1年かかる。 この仕事を覚えるまでの期間が長いというのが、知的障害者雇用のネックになっていると思われる。職務を覚えるのに時間がかかる場合もあるが、一度身に付いたことは能率よくこなせるようになることが多い。しかし、全般に応用力がなく、部署が変わったり作業内容が変わったりすると戸惑う人が多い。 知的障害者に関しては、療育手帳に記載された障害の程度は中度であるが、能力的には高く集中力もある人もいれば、逆に軽度であってもなかなか作業がはかどらない人もおり、障害程度と仕事の能力はあまり関係ないと感じる。 ぜひ多くの事業所で、知的障害者の雇用を進めていってほしいが、そのためには、この点を克服できる対応が重要となる。ジョブコーチやトライアル雇用制度などの制度を周知させていくべきである。 |

(4)ジョブコーチ制度、トライアル雇用の活用 |

当事業所においても、ジョブコーチ制度を積極的に活用し、ここ5年ほどに採用した障害者の大部分が利用している。障害者職業センターが実施している制度で、職務上のさまざまな支援だけでなく、生活指導、会社と家族とのコーディネイトなど、ケースワーカー的な役割を期待できるので、大変重要な役割を果たしていると思われる。 しかし、せっかくのよい制度であるが、予算的な限定があり、希望すれば利用できるというわけではないので、枠をもっと拡大してほしいという要望もある。 また、現在、トライアル雇用制度を活用し、聴覚障害者を試験的に雇用している。これも、初めて障害者を雇用しようとしている事業所にとっては、実際に働く様子を見ることができ、本人も現場で仕事の実際を体験して就労を決めることができるので、ぜひ利用を進めたい制度である。 |

(5)安全対策 |

聴覚障害者に対する安全対策としては、例えば、工場内のフォークリフトが通行する交差点で、遮蔽物があり安全確認がしにくい箇所にはチェーンを取り付け、足下には「一時停止」の標識をつけるなど、配慮している。 |

(6)職業人としての指導 |

全般に勤務態度は良好であるが、中には理屈を言って休日出勤をしない人や、慰安旅行に参加する予定で当日になって行きたくないと言いだす人など、わがままや気分のムラが見られるケースもある。また、自分の殻にこもりがちで職場での人間関係がなかなかうまく築けない人もいる。 そのため、まずあいさつが第一であるという方針を出している。また、就業時間や諸規則の遵守を徹底するなど、けじめをしっかりつけさせている。 |

(7)家庭の協力 |

元気で働きつづけるためには、家族の理解と協力が欠かせない。当事業所としては、出社してから退社するまでは責任をもつが、家庭での生活までは関われないし、私生活には干渉しない、という方針である。具体的には、ファミコンに熱中しすぎて寝不足になり、日中の業務に支障を来すケースや、一度風邪を引くと1週間出てこないというケースがある。このような場合、家族の方には、基本的な生活態度を見直し、健康管理に留意してもらうようお願いしている。 障害者の離職率は低いが、離職したケースでは、やはり家族に問題がある場合が多い。具体的な事例としては、家族に本人をサポートする力がなく、雇用についての理解が得られず、父母と面接を繰り返したが結局離職に至ったことがあった。このようなケースでの支援が受けられるような福祉的な制度が、ぜひ必要である。 |

(8)助成金制度の活用 |

障害者雇用促進のためのさまざまな制度を利用しており、大変助かっている。 助成金については、公共職業安定所より特定求職者雇用開発助成金を、また障害者雇用促進協会より重度障害者介助等助成金と報奨金を受けている。 障害者を多く雇用しているということで、特に負担を感じていることはなく、出来る範囲でやっている。障害を持った方の給料は、障害年金も参考にして決めている。 |

3.まとめ~課題と今後の展望
(1)高齢化という課題 |

現在、重要な課題であると思われるものの一つに、加齢に伴い体力や集中力が衰えてくるということがある。実際に知的障害のある従業員をみると、40歳くらいから衰えが見えてくるようである。こうした方への福利厚生を充実させていくことも重要な課題である。 |

(2)雇用のチャンスを |

まだまだ障害者の雇用に積極的な事業所の数が限られ、働く職場を確保するのが困難な状況がある。知的障害者や精神障害者の場合、特にそうである。ハローワークをはじめ、さまざまな機関や関係者が、新たな企業を開拓していく必要がある。 事業所の立場から、障害者の採用を進める際に感じる問題点として、本人や家族が、就職に対してあきらめの気持ちを持っている場合が多く、どうしても働きたいという気持ちが採用側に伝わってこないということが挙げられる。 さらに、求職情報がハローワークや養護学校だけに限られ、そうした機関が把握できない求職者がなかなか適職に出会えないという問題がある。採用したい障害者をどこで、どうやって見つけるか、また、障害者の能力をどう見極めるか、採用に際してどの事業所にもわかりやすく利用しやすい制度をつくっていくことが求められる。 |

(3)今後の展望 |

今後、当事業所として取り組みたいことは、福祉施設や地域に生活する障害者と企業との橋渡しをしたいということである。具体的には、授産施設あるいは作業所を近くにつくって、そこに社内外注という形で需要を生み出し、一人でも多くの方に働く機会と喜びをもたらすことを目指したい。 また、特例子会社をつくることも考えている。そのためには、身体障害者が働ける環境を作らなければならない。現在の工場では、たとえば車いす使用の方が働くことは困難だが、特例子会社をつくり環境整備をすれば、雇用の範囲が広がっていくと思う。 |

(4)コメント |

この事業所では知的障害者の雇用を漸次に拡大し、職場への定着も良好である。そこには、職業教育、労務管理面での豊富な経験が生かされている。うまく作業が単純化できれば、知的障害者はこつこつと、忍耐強く働ける。 このノウハウを活かして、働きたいという意志と働く能力を有する障害者を少しでも雇用につなげていきたいと、さまざまな試みを構想し、実践している事業主の熱意に敬意を表したい。 (執筆者:中部学院大学短期大学部助教授 稲垣 貴彦) |

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