こころのケアが成長と職場定着を支援する
2004年度作成
事業所名 | 株式会社ソニー・ミュージックマニュファクチュアリング | |||||||||||||||||||||
所在地 | 静岡県榛原郡吉田町 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | CD・DVDの開発、製造 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 784名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 12名
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1.事業所の概要と障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要 |

静岡県榛原郡吉田町の大井川下流域河畔に、「(株)ソニー・ミュージックマニュファクチュアリング」とよばれる本社工場がある。 1968年にCBSソニーレコード(株)設立、同11月静岡県志太郡大井川町に生産工場を竣工してアナログレコードの生産を開始したのがこの事業所の始まりである。その後、社名を(株)ソニー・ミュージックエンタテインメントと変更、吉田町に静岡プロダクションセンターを竣工した。2001年、この工場部門が(株)ソニー・ミュージックマニュファクチュアリングとして分離独立したものである。 静岡吉田工場、静岡大井川工場、茨城工場の3工場従業員800名弱で、コンパクトディスク・DVDを中心とした生産を行っている。 ちなみに、1982年に世界初(!)のコンパクトディスクの量産化を実現し、それを記念するモニュメントが静岡吉田工場の玄関前にある。 |

(2)障害者雇用の経緯 |

ソニー(株)は、創業以来、井深、盛田、大賀氏などのクリエイティブな考え方が組織末端まで行き届いている。「企業の社会的責任」が強く言われ、仕事を通じて会社と個人の成長を図ろうと「太陽の家」をはじめとした多様な取組みも行われてきた。 2年前、障害者雇用がソニー全体であらためて問題に掲げられ、ソニー・ミュージックグループとして業種に関係なく全体で雇用率を達成しよう、そして社会的責任を全うし地域に貢献しようを合言葉に検討され、当社が率先して取り組むこととなった。 こうしてハローワークと相談、その紹介により面接の結果、2004年2月、聴覚障害者3名、重度を含む下肢障害者5名の計8名を一挙に採用した。当初5名くらいとも考えていたが、「この機会を逃さない」つもりで採用を決定し、この結果従来から在籍している障害者も含めて15名を雇用するに至ったのである。
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2.職種を限定しない配置と職場定着への支援
(1)採用・配置 |

現在、障害者は、総務事務、印刷物受入検査、刷版(レーベルフィルム等)製造、生産管理、出荷、製造現場など、それぞれの部門で責任ある仕事を任されている。 採用に当たっては、特に「この職種」と限定して考えず、その人の能力に応じて職場配置を考えることで、特に障害の部位等を指定することはしなかった。 会社としては、受け入れ環境の整備をすることを前提に考え、出来るだけ全ての職場に障害者を配置して、社員のトレーニング(障害者への配慮の仕方、教え方など)も含めて各々の職場で受入れる体制を作ってきた。担当部署も「障害者だから」と仕事を特定したり、一箇所に集約したりすることはしなかった。 このような会社の方針をマネージャーに徹底し、結果、障害者の周囲の社員にもいい意味で影響を与えている。中には独学で手話を学ぶ社員も何人か出ていて、仕事はもちろんコミュニケーションづくりに役立てている。 また、基本的に、障害への配慮は別として、障害者だからといって特別な扱いはしていない。仕事のレベルを上げ成果を出す、事務部門では新たな業務も与え仕事の巾を広げてステップアップ、ランクアップを図っている。 |

(2)意思の疎通、心のケア |

仕事の具体的な指導などの場面で、指導や注意をしたことに対して「わかりました」「はい」と返事をするが、実はわかっていなかった、ということが時にある。「分かりません」と言うのは勇気がいる、つい分かったといってしまう、ということなのか。 不良品の発生は企業にとって致命的となる場合があるので、お互いのコミュニケーションは当然のことながら大変重要なことなのである。 障害者の中には、以前の会社の経験や社会・学校生活等の体験があって、社会や企業への「思い込み」、見えない心のバリアを持つ者がいる。理由は様々だが、心ならずも自ら退職した経験を重ねてきている者もいる。 メンタルな配慮というか、そのことを理解し、互いにこころを開いて意思の疎通を図ることがいかに大事なことかを担当者は学んだ。 職場の「改善提案」で、コミュニケーションの充実のために「手話の研修」が提案され、会社では講師を招いて手話講習会を何回か開いてきている。また、自分で勉強をして職場で活かしている社員も何人か出ている。 会社全体に、トップの障害者を支える理念が浸透していることが感じられる。 |

(3)定着の努力 |

今では懐かしい思い出話といっているが、初期は職場でのトラブルもあった。 出勤しなくなった社員の家に行って、その理由は仕事内容か雰囲気なのか人間関係なのか、とことん話をした。「もうちょっとがんばってみようよ」とか、職場を変えて「どちらがよいか」相談したこともある。 入社させた責任というのか、『せっかく一緒の船にのったのだから』やれるだけのことはやって結果を出す、という企業の基本的な姿勢が感じられる。 仕事の幅を広げマンネリ化しないように配慮することで意欲を高め、いま彼等はみんな順調に成長して仕事の成果もあげている。 |

(4)家族の職場見学 |

障害者が仕事に慣れ職場になじんで長く働いていくために、また会社が様々なフォローをしていくためにも、家庭との連携は極めて大事なことである。 会社では、採用した障害者の家族に仕事を説明する職場見学会を催して、「こんな職場で働いているのですよ」と、家族の方たちの理解を深めてもらっている。 |

(5)専用駐車場とロッカー |

併せて、玄関ロビー横のスペースを利用して、専用のロッカーを置き、建物に入ってすぐに手荷物収納、着替えなども出来るちょっとした空間が用意されている。 |

(6)専用ワゴン |

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3.まとめ~共に生きる理念
一度に8名を採用したが、この一年余の間に残念ながら,3名が退社している。 例えば、事故による中途障害者となった時の世話になった体験から「障害者の支援をしたい」とNPO法人に転じた若者など、それぞれやむをえない個人的な事情もあった様子であり、企業は「ひきとめたのですが・・」と語った。 それでも大きく雇用が拡大したのは、業務遂行の高いハードルを乗越えたからである。まずは障害者の努力を評価すべきだろうが、「決して甘やかしてはいません」という言葉にもなぜか温かみを感ずるように、「社内の障害者に接するスタンス」が確立していることが大事な要因であると思われる。「今まで経験していなかったことが体験できて、いい勉強をさせてもらっている」と担当者は語っている。 ここでは障害者の雇用に、単なるコンプライアンス-法令順守-の発想ではなく、人間として共に生きるという創業者以来の理念が浸透しているのを感ずる。 担当者の真摯な努力は、この「理念」が支えているのである。 (執筆者:障害者雇用推進技術顧問 中島 義夫) |

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