必要な戦力としての障害者雇用～一人1職種による職責への誇り～
2004年度作成
| 事業所名 | 東海アパレル株式会社 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 愛知県豊橋市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 衣料品製造・卸売業（婦人下着類） | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 43名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 16名
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 整然と保管されている製品 |
1.事業所の概要と障害者雇用の経緯
（1）事業内容と沿革 |
| 東海アパレル（株）は、パンティストッキング・タイツ・肌着等の婦人下着類を扱う「関東ナイロン（株）」の製品管理と入出荷の拠点である。取引先は、百貨店・スーパー・量販店の全店250社に及び、各店舗数に至ってはこの数十倍の数になり、3000種類に及ぶ製品の在庫管理（調整）入出荷業務を行っている。この種の全国シェアは30％に達している。 創業は、昭和22年に下着類の製造・販売業として設立するも、昭和38年に関東ナイロン（株）と業務提携し現在に至る。 3000坪に及ぶ事業所は、管理事務所を除き全てが製品の保管に当てられている。製品別、大口取引先別に管理された商品がパイプ棚により製品番号で区分され、整然と幾段にも積み上げられている。その景観は山々の峰の如くであり、人々が行き交う中では倉庫的な雰囲気はなく爽快ささえ覚える。 この爽快さの源こそ、障害者の多数雇用事業所でありながら、適材適所を与えられた従業員の明るさに加えた「和」と「作業別責任体制の確立」にあると思う。 |
（2）障害者雇用の理念 |
| 当社の障害者雇用の理念は、働く意志さえあればこれを拒まず、身体的な特性に適した仕事さえ与えれば、職業人としての自立は可能であるとの考えから成り立っている。 障害者を含め定年制さえ設けず「働けるうちは働けば良い」との方針と、「適職についての区分（配慮）はしても人としての差別はせず」の心が従業員間に浸透しており、家族的雰囲気と明るさに加わった大きな責任感と団結力が、複雑な製品管理すら容易ならしめているものと思える。 |
（3）障害者雇用の経緯と指導指針 |
| 当社の障害者雇用は、昭和55年に、公共職業安定所から、知的障害者と聴覚障害者の雇用を依頼されたことに始まった。現在の障害者雇用率は、55．8％である。 その後も紹介を受ける毎に受け入れていたものの、それは、障害者の雇用ではなく必要な戦力を受け入れていたに過ぎないとの思いが、結果として多数雇用事業所となっていたと言い、障害者雇用という特別な感情は見受けられない。 ただ、人間誰しも一人では生きられず、補い合う心が大切であり、身体的・能力的に即した仕事を与える事は当然である、またそれぞれの持つ特性さえ見誤ることがなければ、最大限の能力を引き出すことが可能となるという方針である。心すべきは「過大なものを求めず」の配慮が散見される。 この為、経営者としての適性（量）判断が重要となり、この判断基準は、担当する職責に対する「責任感と誇り」の度合いを見定めることで十分と語る。 |
2.業務の概要と職場配置
（1）業務内容 |
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（2）障害者の配置 |
| 障害者の配置は、パソコン等コンピュータ操作を肢体不自由者と聴覚障害者、包装・値付けは女子の知的障害者、梱包・運搬・荷積み作業は男子の知的障害者が行っている。 勤務時間は、聴覚障害者（全員妻帯者）は8:30～15:00（その他は、17:30）が定時となっている。 |
（3）分担は一人1職種 |
一人1職種に至った経過は、過去に、ある障害者が作業変更により勤務時間が変わったが通勤電車の時刻表が変わったことが認識できず、数ヶ月を混乱の中で過ごさせてしまったことがあるためと思われる。このため、担当分野が閑散になっても忙しい部署への応援は求めず、自身の判断で棚の整理や掃除・草取り等を行うこととしており、精神的な負担が生じない為の配慮がうかがわれる。 |
3.障害者多数雇用事業所として
（1）従業員の連帯意識 |
| 出退勤時における主要駅までのマイクロバスによる送迎の他、保護者会や出身校との定期的な意見交換は無く（障害者の大半が中高年齢に至っている）、必要な都度、お互いに連絡を欠かさないとの方針以外は何もしていないと社長は述べる。 退職した数名についてその状況を尋ねたところ、両親との葛藤や不良交遊に陥った者への対応、性的事柄に奔走した日々、死期を悟った母親から子供の将来を託された話などを淡々と語る姿には、何もしていないのではなく、当たり前のことをしているに過ぎないとの心の内を垣間見ることができる。 この事業所の障害者対策は、親子兄弟の如くの絆で結ばれた連帯意識で成り立っており、障害者の平均年齢が46歳、聴覚障害者で夫婦で働く者・知的障害者で兄弟で働く者や転職して半年でこの会社が良いと戻って来ている者など、対策の次元を超えた安心・安全・爽やかさが感じとれる。 これらの雰囲気は、午前10分・昼50分・午後15分の休憩を皆同じ部屋に集っての和気合いあいの活発なコミュニケーションも、その要因の一つと認識し、大切にしているとのことである。 |
（2）今後の課題 |
| 当業界も、より良い商品を、より安価でという厳しい経営環境が求められている中、どう収益力を向上していくか、そして、障害者を始め社員の待遇改善（特に給与）を図っていくことも重要な課題と考えられている。 このため、助成金制度を活用して、効率の悪いコンピュータシステムの更新を計画中とのことである。 （執筆者：（社）愛知県障害者雇用促進協会障害者雇用推進技術顧問 荒川勝之） |
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