知的障害者雇用のさらなる可能性をめざして～パン製造における機械導入での作業改善～
2004年度作成
| 事業所名 | 社会福祉法人まほろば 知的障害者福祉工場ウェルフェアーまほろば | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 兵庫県三木市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | パン・ケーキの製造・販売、喫茶店 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 44名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 31名
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1.知的障害者福祉工場「ウェルフェアーまほろば」開設の経緯
| 昭和62年社会福祉法人まほろばは、昭和62年4月1日知的障害者通所授産施設三木光司園の開園とともに設立した。開設当初から、法人では知的障害者の一般社会への就労（社会参加）を主な目的とし、18歳以上の知的障害者の生涯の受け入れ先になっていた知的障害者通所授産施設においても、厚生省の知的障害者福祉施設の制度が発布された意義のとおり、授産として職業訓練を行い、就職支援活動に努めた。 しかし、現実には知的障害者の就職は、知的障害が身体障害と比べて目に見えない障害であり、専門的な知識を有する側面があるため、一般企業での受け入れの門戸が狭く、就職できてもすぐに辞めてまほろばの施設へ戻る人が続出した。このように、知的障害者の多くは一般企業では定着することがむずかしいが、まほろばの施設においては高レベルな仕事ができる状況にあった。 このような経緯を経て、平成3年4月1日、知的障害者の就労の場として知的障害者福祉工場「ウェルフェアーまほろば」を開設した。 |
2.パン製造における知的障害者の可能性と課題
（1）知的障害者の能力の発揮 |
| 知的障害者の多くは、訓練や環境が整備されれば、健常者の作業能力の平均値に近い能力を発揮できる。ウェルフェアーまほろばでは、高度な能力を必要とするパン製造の作業においても、健常者以上の能力を発揮するものがいたり、また、微妙かつ高度な職人技が必要なフランスパンの切り込みを入れる作業も健常者並みにこなすことができるなど、障害者の就労、社会参加は障害者の取り巻く環境如何であるといえる。 知的障害者独特の就労のむずかしさを克服する方法としては、職場でのプレッシャーの緩和、指導内容の安易化、指導時間の確保、障害別・個人別による作業内容の見極めと工夫、本人・保護者との精神的ケアの充実、生活面での充実が上げられる。 |
（2）10年経過した課題 |
| ウェルフェアーまほろばは、開設から10年以上が過ぎ、障害者雇用も定着しており、次の段階として、障害者の新たな高レベルな作業への取り組みを促進するため、高レベルの製パン作業への支援を考えていく必要がある。 また、順調に売上を伸ばしているが、生産量の増加に伴い、現在の機械の生産能力が限界にきており、それとともに品質の不安定化も改善しなければならない課題である。そして、お客様の食品衛生管理に対する意識の高まりや百貨店等の査察基準をクリアーする必要があり、衛生面の向上も不可欠になってきている。 これらの問題点を解決するために、今回、助成金を活用して最新式の機械を導入することにした。 |
3.機械導入による作業の改善と効果
（1）作業の効率化 |
また、生地をまるめる作業は、健常者従業員2名と障害者従業員1名でしていたが、分割丸目機の導入で健常者従業員1名と障害者従業員1名でできるようになった。 |
（2）品質の向上 |
また、以前はクッキーを絞る作業は手作業で、この作業ができる障害者従業員が2名しかいなかったが、デポジッターの導入によって、機械でクッキー作りができるようになり、大量生産が可能となり、商品が均一にできるようになった。 |
（3）衛生面の向上 |
| 大型冷蔵庫の導入によって、今まで冷蔵庫にいっぱい詰め込んでいたものが、きちんと整理でき在庫管理がしやすくなったことにより、衛生面の向上が図られた。材料にラベルを貼って管理しているため、障害者従業員も材料の取り出しができるようになった。 |
（4）安全面の向上 |
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（5）指導時間の確保 |
| 新しい機械の導入によって、指導員にも時間的余裕ができたので、毎月1回ケース会議を開催している。障害者従業員の個人目標を立て、新しい仕事を教える時間が持てるようになった。障害者従業員の障害の程度によって仕事を決めているが、これまでは比較的障害の重い従業員も同じ作業をしていることが多かったが、現在は時間帯によって仕事を変えたりするなど、工夫できるようになった。 |
4.今後の展望
| ウェルフェアーまほろばでは、新しい機械の導入によって作業の効率化が図られ、製造の予備人員が確保されて生産余力が出てきたので、新たな営業によって現在以上に利益をもたらすことができる。 また、生産余力が生まれたことで、品質の向上、衛生面の向上、安全面の向上により、指導員にも余力がでてきたので、今後は商品開発にも力を入れていくとともに、障害者従業員の賃金の向上、経営の安定を目指していくこととしている。 （執筆者：労務研究家 中川 真佐子） |
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