企業の戦力としての知的障害者の活用～在庫管理・出庫業務での課題と改善策～
2004年度作成
| 事業所名 | ヤマト運輸株式会社 和歌山主管支店 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 和歌山県和歌山市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 貨物自動車運送事業（宅配便） | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 1,121名（和歌山県下） | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 9名
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1.障害者雇用の経緯
| 1999年当時、当主管支店の障害者雇用状況は、身体障害者3名であり、法定雇用率未達の状況であった。会社としても障害者雇用の機運が高まってきた時期でもあり、和歌山障害者職業センターより紹介をうけ、知的障害者2名を採用した。最初の2名が軌道にのった2001年10月に1名、2002年9月に1名、2003年8月に1名をそれぞれ採用し、そして今年4月に初めて知的障害の重度の障害者1名を採用した。現在の障害者雇用率は、2．5％である。 最初に2名採用したのは理由がある。初めて知的障害者を採用するにあたり、働く側の障害者が慣れない職場でも、相談できる友達があれば定着しやすいのではないかとの配慮からである。その後は定着度合いを見ながら、1年間に1名のペースで増員してきた。 彼らの業務は、メール便の仕分け業務、宅急便の仕分け業務、パソコン入力業務、資材販売品の在庫管理と出庫業務である。 たしかに最初のきっかけは、法定雇用率の達成という義務からであったが、3人目からの採用については、先の2名の働きぶりを評価し充分戦力として活用できるとの自信がついたためである。 |
2.知的障害者雇用にあたっての課題と改善策
（1）業務改善の必要性 |
| 最初の知的障害者の採用にあたっては、定着してもらえるかどうかという点が一番心配であった。1名はパソコン入力業務、もう1名は資材販売品の在庫管理および出庫業務と、働くフロアーが別々であるため、勤務時間を一緒にしたり、休憩時間を同じ時間帯にしたり配慮をした。 しかし、今まで正社員がしていた仕事を障害者にさせる上で、課題となることが多々あることがわかり、業務改善の必要性に迫られた。 |
（2）資材販売品の在庫管理と出庫業務での課題 |
業務上の課題としては、約100アイテムの違いを覚えられない、重い荷物は提げられない、電話で話が出来ない、文字を書くのに時間がかかるため伝票の記入が出来ない、枚数の数え間違いが多い、パソコンの操作が出来ない、等々があった。しかし一番の問題は、突然無断欠勤するというものであった。 |
（3）作業面での改善策 |
・アイテムを覚えるために棚に名札を付けた。 ・重い荷物も片手で移動できる様に、ハンドリフトを活用した。 ・電話の代わりに、営業所からの注文はFAXで注文するように徹底させた。 ・文字を記入する代わりに、スタンプを作った。 ・枚数を数えやすくする為に、入庫したら10枚ずつにセットした。 ・パソコンの入力を覚えてもらうのは後からにした。 |
（4）無断欠勤に対する改善策 |
そのため、業務の手順と、仕事がわからないとき誰に聞いたらいいかというマニュアルを作成した。 また、組織の中で仕事の重要性について説明し、「休んだら出庫業務が遅れ、お客様にご迷惑がかかる。休んだら困る。」と業務の必要性を強調し、会社にとって必要な人材だと話をした。 |
（5）改善のポイント |
| 資材販売品の在庫管理業務だけにしぼって取り上げたが、他の業務でも同様の障害が多々あり、その度に障害者本人とともに改善策を考えながら乗り切ってきた。 一番重要なのは、障害者だけでは業務改善はできない、健常者だけでも改善策は浮かばないということである。 |
3.障害者にも適材適所がある
また一から仕事を覚えさせていかなければならないため大変であり、トライアル雇用期間も終了するという時期だったが、体が丈夫で仕事のやる気も人一倍あったので、思い切って宅急便の仕分け作業に切り替えてみた。その結果、仕事にうまく適応して、退職者を出さずにすんだ。 自閉症の社員は、メール便の仕分け作業を担当している。メール便の仕分けとは、住所を見て行き先別の箱に仕分けをしていくという単純な仕事だが、他の社員とのコミュニケーションをとるのが苦手な彼は、その分根気よくもくもくと仕事をこなしてくれる。結局、時間当たりの作業量は他の人より速いかもしれない。 |
4.会社にとって障害者にとってよかったこと
（1）会社にとってよかったこと |
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（2）障害者にとってよかったこと |
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（3）立派な戦力 |
| 障害者を雇用して感じたことは、障害者の方は、単純作業でもまじめにねばり強くこなしてくれるということである。当社の労働環境は、暑い、寒い、きついなど決していい労働環境とは言えない業務もたくさんあるが、しかし彼らは弱音をはかず、一生懸命に仕事をしてくれ、たいへん助かっているとのことである。 今後の障害者の職域として、印刷業務、シュレッダーでの裁断業務、分別リサイクル業務等を考えている。 最初は、法定雇用率の達成という義務感から始まった採用だったが、障害者が定着し彼らの能力を発見するにつけ、たとえ雇用率の義務というものがなくなったとしても、立派に企業の中で十分戦力として活躍していけるものと信じている。 （執筆者：和歌山県障害者雇用促進協会雇用アドバイザー 田上英勝） |
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