職場実習と協力機関との連携による職場定着への取り組み
2004年度作成
事業所名 | 株式会社 大磯 | |||||||||||||||||||||
所在地 | 島根県浜田市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | 水産加工業 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 100名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 8名
![]() |
1.事業所の概要と障害者雇用の状況
(1)事業の内容 |

当社は、水産加工業として昭和48年に創業。現在の工場に移転し、浜田市内では一番規模の大きな加工事業所である。水産加工と珍味部門の2工場があり、取り扱う魚の種類等も幅広く、商品種も多い。 |

(2)経営方針 |

「果敢にチャレンジ!」であり、水産加工にこだわらない新製品づくりを推進している。そのためスタッフを充実させ、ネット販売等へのチャレンジも積極的におこなっている。 |

(3)組織構成 |

社長以下従業員100名、うち、障害者8名(知的障害者6名、身体障害者2名)で、女性中心の職場であるが、若い男性職員も多く働いており活気があり明るい印象の職場である。雇用管理は常務、工場長が主として行っている。 |

(4)障害者雇用の理念 |

障害者雇用については「特別」はなく自立性、忍耐力があり水産加工関係の仕事をやろうと思う人は関係機関とも連携を取りながら誰でも積極的に雇用する方針である。 |

(5)障害者雇用の経緯 |

13年前、工場長の知り合い(知的障害者)が仕事を探しており、雇い入れた事が障害者雇用の最初であった。その後、職安からの紹介で軽度の知的障害者を雇用し現在まで就労が続いている。 5年前に事業を拡大し、業務内容も拡大したため求人を増やし雇用者増となった。このとき、障害者雇用も増加した。会社としては、障害者雇用について特別な求人という捉えはなく、人手確保の一手段として雇用した。 現在でも「特別」という姿勢はない。しかし、多数雇用していく中で、離職していく障害者もおり、本人の忍耐力、自立性の把握に雇用前の職場実習や関係機関・家庭との連携・連絡の必要性が生じてきたため、取り組みを開始した。 |

2.職場定着のための職場実習と採用方法
(1)実習生の受け入れ |

養護学校が行う現場実習の実習生、施設からの実習生、職安紹介によるトライアル雇用制度の実習生を受け入れ、その対応は工場長が担当している。特に地元養護学校には作業実習として「水産班」もあり、同一人を複数年度受け入れて実習することもある。 |

(2)実習内容の設定 |

実習期間は2週間と設定し、最初の一週間は基本の「コンテナ洗浄」作業を行い、その状況を見て次の一週間の作業内容を決めていく。 作業内容としては、「魚の解凍・さばき」「調理」「パック詰め」「梱包」があり、いずれのポジションも単純作業ではあるが立ち仕事が中心で体力とスピードが要求される作業である。 ア 期間 2週間(月~土曜日) イ 内容
|

(3)実習期間中の把握事項等 |

本人の力量や可能性、人間性、社会性などについて把握するようにしている。また、所属学校、施設との連絡も取れるようにしている。 |

(4)評価・判断 |

実習中の評価については、まず流れ作業がほとんどの仕事の中で、その作業に適しているかどうかは経験豊富な社員の意見が一番信頼できることから実習現場で一緒に働く社員からの報告を重視している。 評価・判断のポイントは、以下の3点である。 ・指示を聞くことができるか ・スピードはどうか ・安全に作業を進められるか |

(5)実習の効果 |

実習を行うことで本人の状態が把握でき、また適切な業務ポジションに雇用後すぐ配置できることが実習の利点である。
|

(6)採用 |

職場実習の結果を踏まえて採用しており、実習で把握した障害者の障害特性や適性等を考慮して、適材適所に配置することとしている。 過去5年間の実習、採用実績
|

3.労務管理と問題への対応
(1)社内の体制 |

職場実習中から、関係機関・家族と連携をとりながら職場定着を図り、かつ生産性の向上に取り組んでいる。しかし、雇用障害者の中で、これまで勤務や生活する上で問題がなかったのに、仕事が手につかなくなったり、欠勤したり、本人がトラブルを抱えるような事が発生する場合がある。 こうした場合、まず、社内で労務管理担当者(常務、工場長)が経緯を聞き、職業生活相談員等職場定着推進チームにより解決を図る。 |

(2)就業・生活支援センターの相談と援助 |

社内の関係者や家庭で解決が困難な場合、就業・生活支援センターの生活支援ワーカーに連絡を取り、アドバイスを得るとともに相談に応じてもらっている。また、必要に応じて生活支援ワーカーに来所してもらい、本人と面談の上問題解決のための相談・助言を得ている。 |

(3)関係機関や家族等との連携 |

関係機関や家族等との連携により、日常の困難な問題が解決できることは多い。以下、2事例を紹介する。 ア 例1 知的障害者であり精神的に不安定な障害者の場合で、日によって不安定になる事があり、そのような日には作業能率が落ちる。このような時は、周囲の社員が工場長にさりげなく報告するようにしている。工場長が声をかけ、業務に支障のない場合は対応に配慮しつつ見守る。しかし悪い状態が続く時は生活支援ワーカーに連絡し、対応を依頼することもある。 最近は、どんな状態でも周囲の社員がさりげなく配慮する事で業務を遂行できており、入社当時の様な対応を必要としなくなった。 イ 例2 仕事の能力が高く、職場での信頼もあるのに欠勤がちな障害者の場合で、生活面でのフォローがないため、精神的に落ち込んだり、おかねの使い方を失敗したりする事が原因となっていた。そのため、就業・生活支援センターを通じて家族や本人の生活状況を確認し、社会生活面(および精神面)のフォローを実施している。 |

4.まとめ
(1)課題と展望~3Kからの転換 |

現在、職場の高齢化が著しく、若年労働者が定着しないことが一番課題である。水産加工の現場はいわゆる「3K」職場であり、求人を行っても、若年求職者の応募が少なく、また離職者も多い。そのため、ここ数年中国からの研修生を多く受け入れている。また、養護学校からの実習生受け入れにより、若い障害者雇用も進めていく予定である。 さらに、3K職場からの転換も機械化やIT化を進めることにより図っている。こうしたことで「果敢にチャレンジ」を進め、会社が大きく発展していくことが展望としてあげられる。 |

(2)まとめ |

当社の取り組みを、下記の通り総括して、評価する。 ・長年、障害者雇用と職場定着に取り組み、雇用維持に努めている事は、すぐれた雇用管理と経営理念によるものであると考えられる。 ・学校からの職場実習を積極的に受け入れ、実習評価をきちんと行い、さらに雇用につなげていること。また、実習中から家族、機関との連携を行うことにより、職場定着の効果を上げている。 ・障害者が抱える日常的な生活問題やトラブルへの対応について、職業生活相談員が中心となって相談にあたり、解決に向けていく姿勢が前向きであり、さらに地域就業・生活支援センターとの連携により確実に問題解決に当たっておられることは大変心強いことである。 ・職場の労働者の高齢化により、職場内の機械化を進めるなど、若手労働者の確保に努めている。同時に、養護学校からの就労受け入れにも力を入れ、障害者雇用を積極的に進めていこうとする姿勢が伺え、今後がおおいに期待できる。 (執筆者:社会福祉法人四ッ葉福祉会障害者地域生活支援センター「ハローネット」生活支援ワーカー 吉岡直子) |

アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。