適正配置で力を引き出し、技を磨く職場
2004年度作成
事業所名 | 株式会社ウエキ本社 | |||||||||||||||||||||
所在地 | 岡山県岡山市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | 店舗家具・別注家具製造販売 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 60名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 7名
![]() |
![]() |

1.事業所の概要と障害者雇用の動機
(1)事業所の概要 |

株式会社ウエキは、昭和49年に漆器と別注家具専門業者として個人創業。その後昭和61年に有限会社となり、現在地に新築移転している。当初、元請けで個人住宅・小店舗の家具の受注生産をしていたが、地場中堅ゼネコン、全国大手店舗施工業者、住宅メーカーから受注が多くなり、設計・企画部門をつくり顧客のニーズに合わせた提案をして、一括受注している。平安元年には御津町に第二工場を、平成5年には大阪営業所を開設し現在にいたる優良企業である。別注家具、総合インテリアの仕事を通じて、地域社会と人々の新しい生活文化の創造に貢献すること、現代のライフスタイルと感性にマッチさせた住宅・店舗づくりで、快適な居住・商業空間を提供することが事業コンセプトである。 |

(2)障害者雇用の考え方 |

障害者雇用は創業当初からで、特に意識して採用してきたのではない。障害者雇用に対してのスタンスとしては、障害のあるなしは特に意識せず仕事ができる人、前向きに意欲をもってする人であれば雇用している。障害のある人の雇用のきっかけは岡山県立高等技術専門校木工科からの依頼によるもので、現在は、出入りはあったものの身体障害者3名、知的障害者4名、計7名の障害者が働いている。 障害者雇用に対して配慮している点は、内部障害のある人には透析の関係での配慮、自閉的な人には、その人のペースを大切にして仕事が身につくように接している。他の障害のある人に対しても働いている中で仕事に支障が起きないように配慮している。 この業界は、職人気質の古い体質の業種と思われているのか人手不足であり、特に若い人が不足している。このため、機械化や社員意識の向上に取り組んできている。このことが障害のある人にとっても働きやすい職場環境づくりにつながっている。 「障害のある人は健常者と比べれば真面目に出勤し、時間はかかるが仕事を確実に行うので計算でき戦力となっている」と担当者の話があり、知的障害のあるAさんは、「ものづくりに興味があり、以前入所していた施設の職員に相談して職場を紹介してもらった。実習を通して抱いたイメージよりも興味深く、作業に取り組めた」と語ってくれた。 |

2.力を引き出す工夫・対策
(1)作業内容 |

作業工程としては、プレス加工では、芯あわせ、タッカー、ベニヤカット、のり付け、プレス、カット、面張り、ペーパーがけ等々多くの工程がある。基本的に各工程の作業は何でもできるようにしており、一つひとつの作業をマスターするのに根気強く指導している。その結果、時間はかかるが各工程のどの作業もこなせるようになり、他の班から応援依頼の声がかかるようにもなっている。 |

(2)仕事は自己責任 |

仕事に前向きな人には積極的に応援していこうとする姿勢が見受けられ、周囲の健常者である社員も同僚として当たり前のように受けとめている。それゆえ、「特に障害者だからという配慮はしない。職業人として自立することを願っている」という担当者の言葉に納得させられた。 知的障害のあるAさんへの対応についても、「基本的に仕事の進め方については、自分の判断によるところがほとんどで、要所で現場の責任者が確認する。自己責任が求められる」と答えていた。現場においては仕事は習熟過程において、精神力を育てるという意味でも、叱られる時期を通ることによって一人前になる傾向にあるようだ。 |

(3)配置換えで意欲向上 |

Aさんに「会社での仕事を通して満足していることは何ですか」と聞くと、「自分で作り、塗装した製品が百貨店や各所で備え付けられているのを目にしたとき、これは自分が手がけた製品だと思うととても満足感が得られる」、「仕事を任されていることにより作る喜びが増す」との回答であった。「困っていることは何ですか」と聞くと、「まだまだ、全体を通しての作業がきちんと把握できず、作業に手こずることがある」とのこと。「これからもいろいろな作業を覚えて、より専門的な技術を要する作業に携わりたい」と、腕を磨いていきたいという前向きな答えが得られた。職場として適材適所を心がけ、効果を上げているのが実感できた。 |

(4)コミュニケーション等の配慮 |

コミュニケーションのとり方として、聴覚障害の人には筆談で、知的障害の人にはわかりやすく丁寧に伝えるよう社員間で配慮している。 また、スケジュール管理やその日にやることのリストアップ等については、全体ミーティング、班ごとのミーティング、作業の進展に合わせた班長からの声かけで伝えられ作業を進めている。 Aさんに「会社の中で相談する人がいますか」と聞くと、「作業場面でわからないところは各班の担当者に相談する。あるいは指示をもらう。私生活の悩みや困ったことについても一部の人には相談に乗ってもらっている」との回答であった。仕事上のことだけでなく私生活についても相談できるキーパーソンとなるような人がいることが、職場定着を図る上でとても大切なことである。 |

3.家庭や生活支援機関との連携
知的障害のある人にとっては、仕事を継続する上で家庭の果たす役割が大きい。職場でのトラブル、健康面でのこと、情緒面で不安定になった時など、家庭との間で連絡・調整することにより生活面での安定が得られ、仕事にも集中して取り組めるようになる。 知的障害のあるAさんは昨年からアパートで単身生活をはじめたが、職場としては家庭や支援機関が直接関わらない状況に少し不安を感じているようである。 家庭の協力を得られない同じく知的障害のあるBさんは、利用している通勤寮が家庭に代わる役割を果たしている。通勤寮に対しては、生活面を見守ってもらっているので安心している側面がある一方、「Bさんは、してもらって当たり前という感覚であり受け身に感じられる。生活面でもう少し自立することが必要ではないか」といった注文も聞かれた。一人前になってもらいたいという思いからの発言である。 |

4.社員交流
年に一回の社員旅行では、宴会でも皆さんおとなしく、落ち着いた雰囲気の中で個々に楽しまれている。お酒の飲み方がわからず飲み過ぎる人もいたが、経験を積む中で上手に飲めるようになってきているようである。Aさんも昨年は諸事情で参加できなかったが、「今回は北陸方面への旅行で、城の見学等興味深くとても楽しめた。また、他の社員の人たちと仲良くできた」と嬉しそうに話していた。 |

5.まとめ
今後の課題としては、障害者も健常者も一緒に仕事ができるような設備面での改善、車いす利用者も仕事ができるような設備改善を図りたい。たとえば作業内容としては、IT機器を使っての図面作成などと意欲的に考えられている。 このように、障害の有無に関わらず仕事に対する意欲があれば、労働環境の改善を図り、手に職がつくように厳しく、時に温かく見守ってくれるメリハリのきいた職場である。 家具製造という職人気質が残る業種において、機械化による分業によって作業効率を上げると共に、社員は配置転換によって全体の製造の流れを理解し、どの工程でもこなせるようにしていく、そして協力し合い質の高い製品を作っていく、という企業方針を職員意識として定着させている。このような長い目で人を育てていくという人材育成に重点を置いた取り組みが、障害のある人でも力を発揮できるような労働環境の提供につながっている。 働く人の力をその人なりに目いっぱい引き出そうとし、そのためには協力を惜しまない。株式会社ウエキのような事業所が増えることを心より希望する。 (執筆者:岡山障害者就業・生活支援センターセンター長 捻金 徹明) |

アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。