一人一人の持ち味を生かして、当たり前に働ける場を！
2004年度作成
| 事業所名 | 株式会社ニシキプリント | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 《本 社》広島県広島市 《東広島工場》広島県東広島市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 1）図書印刷・学術文献・参考書・統計・事業報告・機関誌・文集・自費出版物・会議議事録・講演要旨・パンフレット・マニュアル等の印刷物作成並びに製本業務・テープリライト 2）出版物の企画発行・刊行物の編集代行業務 3）HP作成を含むIT支援のためのシステム開発 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 74名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 12名
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 ニシキプリント東広島工場 |
1.事業所の概要と障害者雇用の経緯
（1）会社の沿革 |
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（2）障害者雇用の経緯 |
| ニシキプリントの障害者雇用は、創業間もない頃、創業者の宮崎忠氏が一人の障害者の雇用をしたことから始まった。その人は非常に緻密で正確な仕事ぶりで高い品質を作り出し、仕事に対する姿勢も健常の人以上に意欲を示す人であった。後に東広島工場の工場長を任され、優秀勤労障害者厚生労働大臣賞を受賞された。 この人の雇用を契機に、障害のある人も障害のない人も共に働き、お互いの技術と知恵を活かし利益が出せる事業展開を行ってきた。初めてひとりの障害者を雇用した時のポリシーが、その後の積極的な障害者雇用を実現するための「重度障害者多数雇用事業所 東広島工場」の設立へとつながっている。 |
2.持ち味を生かす職場環境づくり
（1）仕事で評価するという理念 |
特に技術の向上心を高めるために「アビリンピック（障害者の業務技術の競技会）」へも参加し、第13回、20回大会では銅賞を受賞した。 このように一人一人の持ち味を活かして環境作りをしてきたことで、障害者かどうかを見るのではなく、仕事を見て正当に評価することを理念として取り組みを進めてきた。また一方では、職場環境整備やハートフルな支援を作る努力もされてきている。 |
（2）障害者職場定着推進チーム「チームネクスト」の活動 |
| 車いすの人をサポートする社内委員会として発足した。当初は通勤をサポートする乗り合いバスを整備し、東広島工場で活用されていたが、現在は全員が自家用車通勤になり、現在はレクリェーションや旅行の時にサポートする体制や条件作りなどを行っている。計画時からサポートや配慮について話し合ったり調査をしたりすることが、心のバリアフリーの勉強にもなっている。 このような社内の草の根運動が、近くのバス停の掃除にも発展し、地域へのボランティア活動にも一役買っている。 |
（3）職場環境の整備 |
身体に障害のある人も介助者や支援なしで通勤・勤務することを最大限実現したことで、就労への身体的負担が大幅に軽減されるとともに自立的な仕事が可能になっている。 |
3.職場で働く仲間の声
（1）Aさん「自然な関係が気を遣わない」（入社2ヶ月；肢体不自由） |
| ハローワークの紹介でこの会社に入社しました。事務の仕事を中心に、伝票の入力や帳簿の整理をしています。今までいた職場と比べると2階に上がるにもエレベータで移動ができ、仕事をする上でのバリアフリーが整っているので、働きやすい職場です。障害あるなしに関わらず自然に分け隔てなく、手伝ってくれるので気を遣わなくてすみます。 |
（2）Bさん「マイペースで勤続13年」（入社13年；肢体不自由） |
| 訓練機関を修了してこの会社に入社しました。長く勤められているのは自分のペースで仕事ができているから。入力業務を中心に行っていて、技術革新でどんどんハイテク化していくが、気軽に教えてもらったり困ったときは頼めたりできる雰囲気がある。障害のある仲間が多いことで気兼ねも少ない。 |
（3）Cさん「ワンプ作りは僕の担当」（入社13年；知的障害） |
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4.社長、工場長、職業生活相談員の声
（1）「心のサポーターをめざして」小宮有紀 障害者職業生活相談員 |
| 「体調不安による就労継続へのためらい。健康を優先か？」「雇用継続の方法は？」「自分より年配者からの相談も受ける力量とは？」。前任者から引き継いで2年目、まだまだ未熟さを感じながらも、前向きに支援をしていこうとする姿勢を感じる。研修の場があれば積極的に参加をしたい、特に自分のような立場の人達との現場での悩みや経験を交流し会える場が欲しい。心のサポーターになるために、本人の本心と障害への配慮をサポートする必要な相談員としての役割に重圧を感じながらも気配りの心掛けが伺える。 |
（2）「何かあったら言うて」 田中信久 東広島工場長 |
| 障害者であるという意識を持たないで、当たり前に接している。障害のある人が自分で工夫をして行っている。仕事については区別なくお互いが主張し合う。みんなやる気が前向きだから、そこには隔たる要因もなく自分の思いをぶつけ合う。だけど一旦終えると元の当たり前の関係に戻るところがこの職場の良いところ。「何かあったら言うて、遠慮せんでええから」とことあるごとに言っている。「必要なことは手伝うから」と言う。このさりげない言葉かけが自然なサポートになっていることを感じる。 |
（3）「創業理念を心の支えに、新しい発想を吹き込んで」 宮崎 真 代表取締役社長 |
| 先代から引き継いだ精神を大事にしたい。自分が入社したときの上司が、その精神の礎を築いた工場長であった。しかし時代はハイテク時代を迎え新しいハードになっていくことで企業経営としても難しい時代になっている。一人一人が専門的によりスキルを上げることで、自信の持てる職域を開発していくことも課題となる。新規の障害者雇用を実現するためには、時代に即応したスキルを学ぶ場や在宅就労の場の道を探ることも課題であると理想を語る。 |
5.執筆者の所感
| 創業主から現在3代目の若い社長と、その脇を支える管理部門の人達も若いスタッフであったが、障害の有る無しに関わらず仕事は平等、という精神が生き続けている。障害者と共に働くことに力むことなく、さりげない支援を送り続けている感じがする。 「なんかあったら言うて」と気軽に障害のある人達に声をかけ、そしてそれぞれの人の持ち味を認めあっていて、一人一人の職場での存在感を感じる。知的障害のCさんは、時折ブラッと職場からいなくなるが、そんな彼もワンプー担当としてなくてはならない存在感があふれている。 創業主から引き継いだ障害者雇用を若い世代の人が自分たちらしい感性で受け止めていることが、職場の雰囲気を作り、自然に共に働く場を作っている。ナチュラルサポートとはこのようなことかもしれない。仕事のできる障害者が集まった職場にも見えるが、それぞれの人の持ち味を最大限活かそうとする姿勢が、その人達を輝かせているとも言える。如何にバリアフリー化された会社でも、心のバリアフリーがなければ障害者雇用のバリアーは取り除くことができない。 気になったのは、肢体不自由の人が多い職場で勤続年数の長い人が増えてきているので、二次障害への健康対策として作業環境の専門家（例えば作業療法士）のアドバイスなどが必要ではないかと感じた。 （執筆者：広島市立広島養護学校教諭 草場俊之） |
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