機械導入による知的障害者のための製造ラインの改良~源泉はもちろん社員の力~
2004年度作成
事業所名 | 株式会社キング食品 | |||||||||||||||||||||
所在地 | 広島県福山市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | 畜産加工品(サラミソーセージ、ビーフジャーキー等)・魚肉練製品(カニ風味カマボコ、たらば風カマボコ等)・冷凍食品・各種珍味製造販売 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 146名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 13名
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1.事業所の概要と障害者雇用の経緯
(1)沿革 |

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(2)障害者雇用の経緯 |

昭和49年以降に随時、障害者雇用を進めてきたが、当初は養護学校、知人、友人の紹介がほとんどであった。 その後、障害者の人数も増えてきたが、障害者雇用の知識はほとんどなかったため、全国重度障害者雇用事業所協会に加盟し、いろいろと障害者雇用のノウハウを教わり指導を受けた。 平成2年には重度障害者多数雇用事業所であるKFC工場を建設、平成3年12月には34名の障害者を雇用し、そのうち10名は知的障害者女子通勤寮「福山市浦上寮」から来ているという状況となった。 社員もしだいに障害者に対する認識が大きく変わり、障害者の仕事に対する態度や集中力に驚かされ、また刺激も受け、会社全体も雰囲気がよくなってきた。
ただ、今から4年半前、会社の状況が思わしくなく健常者、障害者ともに人数を減らさざるを得ない時期があり、障害者も減少した。 昨年から、トライアル雇用を通じ3名を雇用し、現在13名という状況である。これからも可能な限り障害者雇用に取り組んでいきたいと考えている。 |

2.ソーセージ製造工程の機械導入による改良
(1)KFC工場 |

「KFC」とは、Kindness(親切)、Friendship(友情)、Collaboration(共同)の略で、スロープ、障害者用トイレなどを含めバリアフリー環境が整えられている。 この工場では、主に畜産加工品を製造しているが、従来、スティックタイプサラミソーセージ(長さ21cm)の製造工程では、計量作業、サラミソーセージと脱酸素剤(エージレス)の袋入れとチェック、賞味期限印字の確認という3工程で熟練や巧緻性が要求され、知的障害者には対応が困難であった。しかし、特にサラミソーセージ製造の機械は使いやすいように工夫されており、知的障害者も主にこの製造ラインについている。 |

(2)計量作業の改良 |

スティックタイプサラミソーセージは細長い状態で製造されるが、同じ長さにカットしても太さに大小があり、それぞれの重量に差が発生する。そのため重量の規格を以前は手作業で計量器にかけてチェックしていた。 ◆改良 カットされたサラミが一本づつ均等な間隔で供給されるように「サラミ供給機」を導入した。
規格が瞬時に選別されるため、この位置では障害者1人で対応できるようになった。 ◆改良 カットされたサラミが一本づつ均等な間隔で供給されるように「サラミ供給機」を導入した。
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(3)ソーセージと脱酸素材の袋入れ作業の改良 |

サラミソーセージと脱酸素剤(エージレス)を袋に入れる作業は、従来手作業で行っていた。 ◆改良 バキュームにより自動で袋を1枚取り出し、コンベアの上に載せる「袋取り出し装置」を導入した。
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(4)賞味期限印字の確認作業の改良 |

賞味期限印字は、従来は目視による確認を行っていた。 ◆改良 透過型光電気管により自動で印字の有無をチェックする「捺印有無検知装置」を導入した。
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(5)手作業や機械操作 |

現在は、袋にトレーを入れる機械も導入し、全自動作業の工程もあるが、納品先の規格によっては少量多品種のため、手作業で行う方が効率的な場合もある。 袋内で片寄ったサラミを均一にならす作業など、単純で正確な作業、スピーディで細かい作業、また機械操作も、ある程度任せられる障害者もいるので、このような作業は、むしろ知的障害者にとって重要な活躍の場となっている。
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3.雇用管理と福利厚生
(1)保護者との連絡 |

会社側から保護者に対して、各部署の長を紹介し、職場における現況、就業中の態度・様子、休憩中の様子、出勤状況、衛生管理面等を報告する。保護者側からは各家庭での様子、生活態度、悩み等を聞かせていただく。その後で、各自、自分の子供が職場で働いている姿を観察してもらう等々で、約半日をかけている。 日々の連絡事項や問題点については「連絡ノート」で通知、報告するようにしてはいるが、会社からの一方通行になることも多い。 |

(2)定例打合せ会 |

各部署の班長、次長、衛生管理者、部長などで週1回、生産、安全、衛生関係等について職場討議を行っている。 その中で、障害者の作業状態や健康状態などについて、ちょっとした変化の報告があった場合、即対応するようにしている。 |

(3)健康・衛生管理 |

食品を取り扱う企業であり、健康状態や衛生管理には気を遣っている。 髪や爪の長さ、体調について、朝礼でチェックし、検便も定期的に実施している。また施設、家庭とも連携を密にしている。 衛生面でも、白衣、帽子、マスクの点検、手洗いの励行など特に配意している。 |

(4)レクリエーション |

明るく楽しい職場作りのため、毎年春は花見、ボーリング大会、秋は社内旅行を実施している。また従業員で構成している「従業員会」からは、各部署毎に全員参加の行事に対して補助(年1回)を行い、ほとんどの従業員が参加して、おおいに親睦を深めている。 |

4.まとめ
(1)今後の課題 |

障害者雇用の面では、1.8%という障害者雇用率はクリアしているが、厳しい経済状況の中、企業にとっては、会社を存続させていくことが最重要課題である。障害者雇用についても、会社の存続のうえに成り立っているわけで、利益を確保しその上で、彼らに社会生活の場、就業の場を与えることは、事業主としての社会的責任があるわけである。 周知のとおり、障害者の雇用が進むにつれてさまざまな問題も出てくるが、中でも加齢に伴う今後の障害者雇用の在り方については、重度障害者多数雇用事業所に限らず、すべての雇用事業所が頭を抱えていると思われる。在宅就業に対する支援、雇用形態の多様化(短時間労働、派遣労働)、地域における協働による雇用の促進等、「今後の障害者雇用施策の充実強化について」という労働政策審議会からの意見書も提出されているようであるが、雇用の入り口と同様、出口の対策についても、早急な行政の施策が待たれる。 さらに、障害者雇用を企業や障害者自身の努力に委ねることなく、国、地方自治体も必要な施策を総合的に講じ、障害者や企業の努力が、真に実を結ぶよう援助をお願いしたい。 |

(2)所感 |

執筆者が所属している知的障害者通勤寮、福山市浦上寮と株式会社キング食品との関わりは古く、現在も5名が勤務している。うち2名は、昨年トライアル雇用を経て社員になり、更に1名が現在実習中である。 障害者雇用に積極的に取り組み、障害者の適性を活かし、辛抱強く見守って接していただき、また各職場の同僚や上司の人も適切に対応してくださっており、常々感謝しているところである。彼女たちが従業員として戦力になり、仕事に取り組んでいる姿にも頭が下がる思いである。 また、障害者の人たちは、働く意欲があってもいろいろな問題を抱えていることがあり、通勤や勤務時間などで就労を考える人たちもいる。そのため、会社のバス送迎は障害者にとって有意義でありがたいと思っている。 キング食品では、従業員の永年の努力によって、会社内が自然体でハンディのある人ない人にかかわらず、皆さんが会社の戦力として働いている。障害を持った人たちの安定した雇用の継続は、会社の繁栄にもつながると思う。企業の社会的責任の意識をさらに高めて、障害者雇用に積極的な取り組みをお願いしたい。 今後も障害を持つ人たちに雇用の場を与えていただき、彼女らが働くこと、生活の糧を得ること、仲間とのつながり、自分の可能性を発揮することによって居場所を見つけ自らの存在を実感できるように願っている。 1人でも多くの障害者を雇用していただくためにも、今後益々のご発展を祈る。 (執筆者:社会福祉法人福山愛生会女子通勤センター福山市浦上寮寮長 野村守) |

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