流通業界における障害者雇用の取り組みについて
2004年度作成
事業所名 | 佐川急便株式会社四国支社徳島店 | |||||||||||||||||||||
所在地 | 徳 島 店 徳島県板野郡松茂町 本 社 京都府京都市 四国支社 香川県高松市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | 貨物輸送業 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 130名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 3名
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1.障害者雇用の経緯
(1)取り組みのきっかけ |

これまで、徳島県内の流通関係の会社では、今回のように組織的な取り組みの中での知的障害者を雇い入れする事例はなかった。 今から3年半ほど前の2001年11月に、県内にあるあっせん型障害者雇用支援センター(現 障害者就業・生活支援センター)が開催していた「事業主のための雇用セミナー」へ、当時の佐川急便徳島店担当者の方が参加されたのが、今回の雇用へのきっかけとなった。担当の方は「障害者を雇用したいと思うが、どうしていいのか方法がわからない」とおっしゃっていた。 そこで、地元のハローワーク、あっせん型障害者雇用支援センター、障害者職業センター等とが一緒になり障害者雇用に向けての話し合いが始まった。 |

(2)仕事内容の整理(職務分析→職務設計) |

どういう仕事が実際にやれるのだろうか?これは会社側も支援機関も感じるところであった。 そこでまず、実際に会社へ地元のハローワーク、あっせん型障害者雇用支援センター、障害者職業センターが出向いて職業分析を行った。どういう仕事が向いているのか、また仕事をしていく中でどういう工夫が考えられるのか、どういう感じの人だったら向いているのか等話し合いがされていった。次に職業分析をもとにして職務設計を行い、職場実習(雇用前の実習)を受け入れる準備をしていった。 それと同時に人選も行った。ハローワークと障害者職業センター、あっせん型障害者雇用支援センターが就職希望者を募った。仕事内容の説明だけではわかりにくいため、実際に見学をしてやる気のある2名が面接に望んだ。 |

(3)制度活用・支援体制(雇用前・雇用後) |

2002年5月、約1ヶ月の実習を経て2名とも晴れて社員になった。 社員になったといっても、課題はたくさんあったため、2名の方が定着して働き続けられるように、就職後も途切れずにサポートする体制がとられた。障害者職業センターのジョブコーチ支援事業を活用し定着へ向けての支援が始まった。 Oさんは自閉的傾向があり、言葉でのコミュニケーションだけではなかなかうまくいかなかった。会社からの連絡事項が全く生活の支援機関(知的障害者通勤寮)に伝わらなかったため、連絡ノートを作成しやり取りをすることになった。また、自分で考えて行動することや状況を判断することが苦手だったため、空いた時間にボーっとしてしまうこともあった。そういうときのために、待機中の過ごし方についてのルール決めを行い、仕事がスムーズに行えるように工夫していった。そういう取り組みの中で、事業所は2名の方の性格や障害特性を十分に理解し、その上で会社の一員として彼らに向きあっている。 2004年4月、障害者就業・生活支援センターの実習を活用して、聴覚と知的の重複障害がある方1名の実習が新たに始まった。聴覚障害という新たな特性はあるが、障害者職業センターのジョブコーチ支援事業を活用し5月から雇用となった。それぞれの特性をわかり、仕事の内容や就業時間の調整など事業所側から提案をしている。 |

(4)事業所の変化 |

この数年間、事業所や本人は支援機関と一緒にさまざまな問題を解決してきた。週に1回のミーティングや連絡ノートなどで、個人のことを知る機会を増やしたり、人間関係の調整を行ったりと複数の支援機関が混ざり合いながらの取り組みが続いている。そういう取り組みの中で「どう雇用したらいいのかわからない」から「こういう風にしたらうまくいくのでは!」と事業所自体の考え方や関わり方が変わってきたようである。 現在3名の雇用については、事業所側の障害者への理解がもたらした結果といえると思われる。 |

2.事業所としての取り組みのポイント
(1)本業での雇用 |

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(2)雇用前、雇用直後における教育計画 |

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(3)職場定着への取り組み |

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3.取り組みの効果
(1)本人にとって |

Oさんは言う、「これからもずっと今の会社で働きたい」と。以前働いていた会社ではうまくいかず、退職するころには会社で一言もしゃべれないくらい自信をなくしていた。今と何が違うのか尋ねてみると、「今の会社は仕事は厳しいけど、優しいし、楽しい」と笑顔で答えてくれた。連絡ノートについて尋ねてみると「あれなかったら忘れてしまうな(笑)」とのことである。 一緒に仕事をし、できるようになると任される。こういう会社の取り組みがOさんの自信を回復させ、仕事への意欲を起こさせているようである。 |

(2)事業所にとって |

就労意欲が高く、出来る業務の範囲も徐々に広がり、現在では路線管理システムへの実績データ入力等の難易度が高い作業も問題なく行っている。 イ ノウハウの習得 受け入れ会社として当初は戸惑いがあったものの、各方面からの支援サービスを受けさせて頂いたことにより、障害者雇用に関してのノウハウを習得することが出来た。 ウ 社員全体の定着率向上への貢献 障害者雇用を行ったことにより「これをやって」から始まっていた現場教育を、説明して「やって見せる」という教育体系が自然に現場へ浸透し、健常者の新入社員育成にも良い影響を及ぼした。結果として入社1年以内の退職率が目に見えて改善してきた。 エ 今後の課題 本人の意欲、能力が高まるにつれて「仕事に対する評価」や「キャリアアップ」といった新しい課題が発生してきた。プレッシャーを与え過ぎないものを検討していきたい。 |

(3)支援機関にとって |

徳島県内の流通業界では初めてとなる知的障害者の雇用だったが、会社と支援機関の連携が取れたことで会社自体の障害者理解も高まった。初めは支援機関を通して彼らへのサポートが行われていたが、今では会社のほうから的確なサポートが行えている。 今までは「障害者には危険な仕事だから」と会社に受け入れらにくかった職種だが、今回の取り組みによって、「仕事の内容と環境面の整備、それと障害者への正しい理解があれば決してできない仕事ではない」ということを実践の中で証明している。この取り組みで新たな道が開けたと思われる。 |

4.まとめ~流通分野での障害者雇用
(1)全社的な取り組み |

当社では現在、会社全体で32,000名の従業員が在籍しており、法定雇用人数に換算すると403名の雇用が必要となる。障害者雇用を行う上での企業ポリシーとして、特別な会社を作り障害者雇用を促進するのではなく「健常者と障害者が一丸となって本業に取り組み、共に汗を流し、苦労を分かち合い、目標達成の喜びを共有する」という真の障害者自立社会を形成するという概念を持って取り組んでいる。 雇用率の推移をみると、平成14年4月度では1.43%と法定雇用率には程遠いものだったが、全社が一丸となって取り組みを始めてからは急激に伸ばすことが出来、平成14年12月度には2.02%と法定雇用率を達成し、除外率の変更があった現在も1.95%と法定雇用率を達成している。 また、取り組みの効果でも紹介したとおり、健常者にも良い影響を与えている。今後も更に幅広い範囲での障害者雇用を促進させ、共に発展し続ける組織作りを進めていきたいと考えている。 |

(2)まとめ |

今回のような組織的な取り組みでの障害者雇用は、徳島県においては初めてである。今後、流通関係の分野にも障害者の職域が拡大されていくことと思われる。「雇用したいと思うがどうしていいのかわからない」、そう思われている事業所がたくさんある。今回の取り組みを紹介することで、今後雇用を考えられる事業所側の不安が解消され、新たな雇用の場へのチャンスが生まれるだろう。 事業所は障害者を理解し信頼し一緒に働く。彼らは事業所に信頼され働くことで自分の中の自信を回復する。そのことが大切であり、それに対してサポートをし続けることを支援機関は求められていると再確認できる事例であるように思われる。 (執筆者:就業・生活支援センターわーくわく就業支援ワーカー 内田良子) |

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