清掃業における多様な障害者に対する就労形態と作業用具の工夫
2004年度作成
| 事業所名 | 鳴門美装株式会社 | |||||||||||||||||||||
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| 事業内容 | 病院、公共施設、航空機内等の清掃業務及び電話交換業務、当直業務、リネン検収業務等の事業を展開。 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 92名（2005年2月末） | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 11名
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1.はじめに
| 鳴門美装株式会社は、ビルメンテナンス業として1967年に設立し、鳴門市を代表とする「健康保険鳴門病院」の清掃業務を一手に引き受けて業務がスタートする。その後、公的施設や徳島空港に離発着する航空機の機内清掃、鳴門競艇場の清掃と業務が多岐になる中、1999年5月より鳴門病院内での清掃業務において知的障害のある方を雇用し始める。 今回のモデル事例では、さまざまな清掃業務（業務形態、内容、勤務地）により、障害種別を問わず可能となった障害者雇用の特徴について取り上げる。 また、障害種別を問わず雇用できる現状を企業の工夫とその取り組みから紹介し、今後さまざまな企業における障害者雇用の取り組みに何らかの形で少しでも参考となるように紹介する。 |
2.各勤務地での就業者、就業形態（時間）、業務内容
鳴門美装において、障害種別を問わず雇用が可能となっている状況を、勤務地・就業形態・就業時間・業務内容等から説明する。
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3.取り組みの内容及び効果
| 当社においては、障害種別によって適材適所で障害者雇用を行っている。身体・知的・精神障害者が持っている特性を最大限に生かしつつ、それぞれが抱える障害ゆえのさまざまな問題点や企業側が配慮すべき点を考慮し、何らかの取り組みを行ったうえで効果的に清掃業務に従事してもらっている。 その中で生じてくる改善すべき部分や問題点については、各支援機関との連携を密に行い、長期的に継続した形で障害者雇用を進めている。 それらの点をふまえて、本事例における企業の取り組み内容及びその効果について述べる。 |
（1）鳴門病院 |
| 鳴門病院においては、常に2人1組の体制をとっている。健常者のパートナーの方から指示を受けながら分担して清掃業務にあたっている。知的障害のある方の特性を生かしながら、必要に応じて（MRSA居室などの清掃で病院側からの注意点がある場合）パートナーのサポートを受けることで効率的に作業を行っている。 効果として、病院清掃では、衛生面での注意点や非常に高度な作業の質を求められるため、知的障害のある方が、作業について常に確認できる体制をとることにより正確な作業ができている。このような就業形態をとることは非常に有効な点である。 |
（2）鳴門競艇場 |
効果としては、精神障害のある方の体調の状況に配慮することにより、長期的な就業が可能となり、本人の精神的負担（時間に追われる、他人を気にする等）を軽減する重要な要因となっている。（写真1） |
（3）鳴門ウチノ海総合公園 |
本人の就業に対する意欲を尊重するため、企業側からも何らかの形で業務遂行が可能となるような工夫をしたい、ということで障害者職業センターの事業主支援（業務遂行用具の作成）を利用することとなる。その結果、現場の担当者の協力で清掃用具ができあがった。（写真2） 清掃作業にかなり必要な腕の機能に障害があるという点で、就業が可能となるのか企業の不安は大きかった。しかし、障害者就業・生活支援センター、障害者職業センターとの連携で効果的な器具ができたことにより、難しいと思われた清掃業分野に従事できることとなった。企業の努力と関係機関との密な連携により、この分野への門戸が広がったといえる。 その結果、鳴門競艇場においても、重複障害の方が右腕に障害があるものの、これまでの成果が基となり就業に結びついている。 |
4.障害種別に関係なく就労が可能な理由
| これまで障害者をそれぞれの障害特性に合わせ、適材適所で雇用しその成果を上げている現状について述べてきたが、何故そのような雇用が可能となっているのかについて確認する。 |
（1）高齢化対策としての多様な勤務形態 |
| 当該事業所において、従業員の高齢化に伴う様々な対策を講じていることにそのポイントがある。 高齢者の就業を可能とするために、改善してきた点として、多様な勤務形態による選択的な働き方の提示が挙げられる。従業員（高齢者）の体力、生活ニーズに合わせて、6時間40分の勤務形態をベースとして、2時間の短時間勤務まで13種類の勤務時間を作り上げている。この改善が、障害者に対しても活用できる結果となっている。 精神障害者の場合、就労の意欲はあるが長期的に継続して働くには、短時間労働から始め、体を慣らしていく事が必要な時がある。そのような際、この多様な勤務時間を選択できることは非常に有効である。 |
（2）教育訓練と作業機器の改善 |
| 個々の能力開発の拡充による活性化を促進するため、教育訓練の場を設けさまざまな研修を行っている。 また、障害者が的確・安全に業務をこなせるようにするために作業機器等の改善を積極的に行っている。その現れとして身体障害者が多く雇用されており、障害者雇用率も一般民間企業の法定雇用率の3.5倍以上となっている。 |
5.まとめ
| 今回、このようなモデル事例に当該事業所を取り上げたことで、各支援機関が関わらず（本人の意向や支援機関との接点がなかったため）雇用されている障害者が多数存在することが確認できた。これまでの障害者の雇用経験を活用することで、当該事業所による効果的なナチュラルサポートを行うことができ、障害者の継続雇用に繋がっている。 必ずしも支援機関が介入しなければならないという訳ではないため、さまざまな形で自然に雇用されていくことが重要である。このような中、何らかの形で支援機関の介入が必要となった場合、これまでの当該事業所の取り組みに対し、連携を密に行い協力体制を構築できているという既存のシステムを用いることは非常に可能となる。そこで、改めて当該事業所での継続した就労ができていけるように創意工夫していくことも、今後必要となってくるのではないだろうか。 これまで、当該事業所が行ってきた障害者雇用の経験と実績を有効的に活用すれば、必ず可能となるはずである。 また、これまでに当該事業所における従業員の高齢化という点に触れているが、障害者も年を重ねいずれは就労についての配慮（勤務地転換、勤務形態の見直し、勤務時間の短縮等）が必要となってくることになる。そのような際にも、これまで当該事業所が行ってきた工夫が有効となる。 今後も、一支援機関として当該事業所と連携して、より一層このような障害者雇用が継続し、充実していくようにしていきたい。 （執筆者：障害者就業・生活支援センターわーくわく就業支援ワーカー 松尾 貴範） |
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