適切な配置により、障害者が主体性をもって仕事に取り組む老人福祉施設
2004年度作成
| 事業所名 | 社会福祉法人宝樹園 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 香川県丸亀市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 介護老人保健施設、特別養護老人ホーム | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 102名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 2名
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1.事業所の概要と障害者雇用の経緯
| この事業所は、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、在宅介護支援センター、デイサービスセンターを併設した社会福祉法人である。 昨今、高齢者介護の社会的必要性やそれに伴う問題等がクローズアップされており、全国に多数の施設がオープンしている。 そのような中、当初は障害者の法定雇用率に対する認識が薄かったものの、『福祉に関する業務を営むものとして、障害者を雇用することは当然』との認識に基づき、法定雇用率の基準を満たすためには1名採用するだけでよかったところ、2名を採用したのが始まりである。 ひとに接することが多い職種ゆえに、健常者と同等の職務を任せることは難しいが、障害者個人に適した配置を行うことで、障害者自身が主体的に職務に取り組めるよう考慮している。「適正配置による主体性をもった職務」という側面を中心に、この事業所の取り組みを個別の具体的事項ごとに取り上げる。 |
2.障害者雇用の取り組み内容
（1）配置場所への配慮 |
| 障害者のうち1名（内部障害者）は、通常の生活・業務等において健常者と変わるところがない。体調に配慮しながらも、健常者と同等の職務をこなしている。 知的障害者に関しては、重度障害者ということもあり、その責任能力などにも配慮し、入居者に直接対応するような配置は避けている。現状は、建物や居室の清掃を中心に従事しており、入居者とコミュニケーションをとりつつも、直接接することのない配置としている。 健常者の職員にとっては、清掃等の手間が空くことにより、入居者とのコミュニケーションをとる時間も増え、双方にとってプラスとなっている。
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（2）作業環境と安全への配慮 |
| 老人向け施設であるため、建物自体がバリアフリーとなっており、障害者にとっても特に問題はない。 ただ、清掃に際しては、洗剤等、体に害のあり得る薬物を使用させるのは避け、水拭きを中心に行っている。
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（3）健康面への配慮 |
| 障害者についても、健常者と同様な健康診断を受診させ、日常より体調などには注意している。 さらに、知的障害者については、本人の体調に配慮し、勤務時間等を柔軟に対応している。現在は時給制となっているため、特に問題は生じていない。 |
（4）生活相談員の役割 |
| 日常の業務については、生活相談員が要所を管理し、障害者を指導することで潤滑に行われている。 あくまでも障害者の主体性を尊重し、生活相談員は障害者が仕事を円滑に行ううえでのサポーター役を中心としている。 ただし、問題等が生じた場合は先送りにすることなく、その都度話し合いをもつことで、お互いが納得し解決を図る。 また、生活相談員のほかにも、不定期ながらジョブ・コーチ的役割の専門家を招き、指導やアドバイスを受けている。 |
（5）コミュニケーションを大切に |
| 家族とのコミュニケーションを大切にし、障害者を長い目でみていくというスタンスをとっている。 昼食時等は、障害者・健常者の分け隔てなく障害者も職場の一員ととらえ、仲間にとけ込めるよう配慮している。 福利厚生面についても健常者と同等。 時折、入居者との関係が馴れ合いになる場合もあり、入居者が逆に気を遣う場面が見受けられる。コミュニケーションは大切であるが、それぞれの立場の違いを認識してもらえるよう、その都度指導している。 |
3.全体としての評価
| この事業所は、障害者を雇用しサポートしていくうえで、きめ細かな配慮をしている。特に、福祉関連施設ならではの職場環境の中で、生活相談員や健常者である職員の日常的配慮が、障害者の職務を幅広くサポートしている。 また、ゆったりとした職場環境の中、障害者自身も主体性をもって職務に取り組んでおり、事業所としても自立の芽を育てていくことができればと考えている。 ただ、知的障害者に関しては、気分のむらが仕事に影響を与えることも事実で、まれに問題となることがある。このような場合でも、職員全体のみならず、場合によっては入居者までが、孫のような年齢である障害者をサポートし、一社会人としての自覚をもたせるべく努力している。 老人向け施設であることもあり、広々とした空間とゆったりとした雰囲気の中で、障害者の主体性が伸ばされ、それが健常者の職員にとってもプラスの相乗効果が働いている事例といえよう。 （執筆者：財団法人香川経済研究所主任研究員 川上浩志） |
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