障害者に活躍できる場を与えることにより全体の生産効率を上げる
2004年度作成
| 事業所名 | 有限会社共栄グリーン | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 香川県高瀬町 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 園芸用土製造・販売 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 16名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 5名
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1.障害者雇用の経緯
| 園芸用土製造・販売という業種は、扱うものが土などで作業現場にホコリも多い。また、作業も単純単調なものが多いため、希望しての働き手が少ない、また、雇用しても定着率が低いなどの問題点があった。さらに、季節的な要因で仕事量の増減も激しく、事業所側も安定雇用の継続という点で頭を悩ませていた。 そのような中、この事業所の役員が養護学校と個人的人脈を有していたこともあり、養護学校側から採用依頼を受け、障害者を雇用するようになった。 障害者を雇用してみると、個々の障害の程度や家庭、その他の事情などで「知的障害者」ということばでは一括りにできない多様性への対応など、様々な課題に対処していく必要性もあった。 この事業所がすすめている取り組みを「適正配置による生産効率の向上」という側面を中心に、個別の具体的事項ごとに取り上げて参考の事例とする。
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2.障害者雇用の取り組み内容
（1）配置場所への配慮 |
| 園芸用土製造工程においては多くの作業があるが、知的障害者は複雑な作業には適していなかったため、袋詰めなど単純作業に配置している。 単純作業であるため、健常者では飽きがきて続きにくいものの、知的障害者はまじめに取り組み、不満等もあまりもらさない。また、指示したことを正確に処理してくれている。 単純作業とはいっても多少の技術を要するものであるが、障害者自身が工夫することで、順調に作業が進められている。 一日に千袋以上の袋詰めを行っているが、障害者自身が作業した結果が積み上げられた袋として目に見えるものであり、数字としても分かるものであるため、作業効率を上げることに対しての励みともなっている。 |
（2）作業環境と安全への配慮 |
| 作業は、かくはん機から排出された土を分量ずつ袋に詰め、袋を密封、運搬用の台に積み上げていくというものだが、大型の機材を使用するため、障害者が動きやすいよう、作業場所を広くとっている。 そのため、現場の班長などの目が行き届きやすい。また、専務取締役などが現場を訪れ、障害者に声かけもしやすく、日常的なコミュニケーションにも役立っている。 作業現場は、袋詰めされた園芸用土を運搬するためにフォークリフトが往来することがあり、安全への配慮は不可欠。作業場所が広いことが安全に資しているものの、現場の班長などが日常的に教育指導し、事故・けがなどに対して最大限の配慮を行っている。
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（3）健康面への配慮 |
| 障害者についても、健常者と同様な健康診断を受診させ、日常より体調などには注意している。 さらに、重度障害者については、家庭での判断を尊重し、体調不振の時などは有給休暇扱いで休みを取らせている。 |
（4）職場を第二の家庭として |
| 普段はまじめに作業に取り組む半面、気分のむらなどで作業効率が低下することもある。これは個人の育ってきた環境によって左右される部分が大きいが、雇用する側にとっては問題である。 幸い職場内には年輩の女性もいることから、彼女たちを職場における母親的役割とし、精神の安定や家庭的温もりを障害者が感じることが出来るように配慮している。 知的障害者は人の前に立って発言するなどが苦手な場合も多いが、朝礼においても障害者に発表の機会を与えるなど、周りがサポートしながらも中心的役割を担わせることで、積極性も出てきている。
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（5）多面的サポート |
| 障害者への対応を現場だけに任せず、事務担当者、援助者、家族等ともコミュニケーションをとり、悩みや問題等へ親身になった対応をしている。 福利厚生面にも配慮し、社員一同の食事会なども開催、障害者も喜んで参加してくれている。職場内だけに限定せず、幅広いコミュニケーションを心がけている。 指導員や養護学校教諭などがある程度定期的に様子をうかがいに来てくれる。普段から接していないものの目を通して障害者をみてもらうことで、事業所側が見逃していた変化などにも対応できるようにしている。 |
（6）一社会人として |
| 一社会人としての自立も目指し、事業所として生活習慣や勤務態度なども含めて指導している。 養護学校からの取材なども受け入れ、後輩障害者たちへの職場における好事例として紹介してもらうことで、障害者自身の励みにしている。 |
3.全体としての評価
| この事業所は障害者を雇用し、サポートしていくうえで、幅広い取り組みを行っている。しかし、個々の取り組みは決して特別なものではない。日常的な職場運営のうえで、数多くの細かな配慮をしていることが特筆できよう。 また、障害者を雇用し始めて約15年にもなることから、職場に障害者がいることが当たり前となっている。厳しい経済情勢の中で企業として生き残りを図るうえで、障害者を特別扱いする余裕がないことも、様々な企業にいえることである。障害者にも事業所の一員として活躍できる場を与え、サポートすることにより、健常者以上の生産効率も上げることを社員全員が十分理解しており、さらに健常者の生産効率向上に資する場面もあるなど、相乗効果を生みだしている。 従業員数16名という小規模な事業所であるが、それが故の家庭的配慮が障害者にとって、また事業所自体にとってプラス作用に働いている事例といえよう。
（執筆者：財団法人香川経済研究所主任研究員 川上浩志） |
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