障害の程度・能力に応じた職場配置～障害者という意識を持たずに～
2004年度作成
| 事業所名 | 南四国部品株式会社 | |||||||||||||||||||||
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| 事業内容 | 自動車用組電線（ワイヤーハーネス）の組立製造 介護サービス（デイサービス・訪問介護サービス） |
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| 従業員数 | 349名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 9名
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1.事業所の概要と障害者雇用の認識
（1）会社設立の背景、経緯 |
| 南四国部品株式会社は、矢崎総業グループの国内関連事業所として、昭和63年の瀬戸大橋開通と同時に高知県に設立された。 事業内容は、自動車用の組電線（ワイヤーハーネス）の組立製造であり、生産拠点は社名の通り、高知県の越知町（本社）・田野町・梼原町、愛媛県の愛南町など、南四国エリアに設けられている。 ワイヤーハーネスとは、エンジンやライトなど自動車に搭載されているエレクトロニクス設備を、正確に作動させるために必要な電線や情報回路をコンパクトに束ねたものであり、その組立作業には多くの人手が必要とされる。こうした事業の特色が、地域の雇用確保や地域産業の活性化につながっている。 また、海外生産の拡大に伴う国内生産の減産に対応するため、平成12年から介護事業に参入するなど、従業員の働く場の拡大と地域貢献ができる会社の運営に重点を置いている。 現在、自動車用組電線業務に283名、介護サービスに66名が従事している。ワイヤーハーネス工場の社員283名のうち、障害者は、事務職で2名、現場の製造ライン責任者で1名、部品加工で4名、部品セット準備で1名働いている。また、介護サービスの社員66名のうち、障害者1名が働いている。
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（2）企業理念 |
| 会社の操業の経緯については、地域雇用・地域経済貢献の意図もあり、「地域と共に」を理念として、地域社会から必要とされる会社を目指している。 |
（3）障害者雇用についての認識 |
企業としては、「障害者といっても、それぞれの能力と技能を持っているため、今後とも、働く意欲がある障害者を受け入れ、その能力を発揮できる機会を提供していきたい」と考えている。 |
2.施設・設備などハード面の工夫
| ハード面の工夫も含め、「社員が働きやすい職場の提供」を心がけている。工場内はバリアフリーとなっており、休憩コーナーとして休憩広場「オアシス」なども設置している。 また、もともとワイヤーハーネスの組立製造という仕事は、3K（汚い・キツイ・危険）のない職種であり、個人の能力レベルや障害の度合いに合わせた職場の提供を行っている。
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3.ソフト面の工夫
（1）募集・採用 |
| 現在は、働く意欲と本人の条件が合えば、いつでも受け入れを行っている。 |
（2）賃金 |
| 賃金については、能力・職務配置により決定しており、月額112,000円から180,000円となっている。また、アルバイトや期間契約を除いて、年2回の賞与が支給される。その他、通勤手当、所帯手当などが社内の規定で支給される。 |
（3）昇格・昇進 |
| リーダー格・主任・課長と管理職の登用も本人のやる気と業務レベルにより登用される。現在も製造ライン責任者として、障害者の女性社員が1名起用されている。 |
（4）労働時間 |
| 労働時間は、朝8時から17時まで（休憩1時間を含む）、原則週40時間であり、週休2日制をとっている。また、年末年始・春・夏の長期休暇が6～8日ある。 |
（5）職場配置・定着 |
また、女性の多い職場であるが、男女ともに働きやすい職場環境となっている。 |
（6）教育・訓練 |
| 教育は、OJT（On the Job Trainingの略称）という、仕事の現場で業務に必要な知識や技術を習得させる研修を中心としており、作業標準に基づく手順の定着を重要視している。 |
（7）福利厚生・健康管理 |
| 健康管理としては、年1回の法定の健康診断を実施している。福利厚生としては、「なかよし会」として、従業員の旅行、スポーツ、懇親慰労会などを企画し、実施している。 |
（8）業務の厳しさ |
| ワイヤーハーネスは、自動車部品に電気を伝える人間で言えば、神経・血管に値する大切な役割を果たしている。したがって、品質管理には細心の注意を払っている。 そのため、作業の標準、作業のルール、出来栄え知識についての教育と訓練を重要視している。
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4.まとめ
（1）職場の雰囲気 |
| 現場の雰囲気としては、「正直なところ、みんな1人前の仕事をしているので、障害者という意識を持って周りの人は接していない」と思う。健常者、障害者にかかわらず、個人の能力にあった職場配置の中で、1人ひとりが会社の目標、自分の仕事の目標に向かって取組んでいる。 また、「仕事の一連の流れの中で、改善のアイディアや提案を出しやすい職場づくりに努めており、働く人みんなに会社の中の組織の1人という自覚を持って、業務に専念してほしい」とのこと。 |
（2）今後の課題 |
| 「一般的に、現在の障害者の職場環境をみると、必ずしも最適であるとは言い難いが、当社に勤務されている障害レベルへの適用は、問題ないレベルの環境と考えている」とのこと。 しかし、現在障害の度合いに応じた幅広いレベルでの就業の機会を提供しているとはいえ、事務部門は別としても、現場の製造部門は立ち仕事である。そのため、環境的には、すべての障害者のレベルに配慮しているとはいえないということが今後の課題である。 |
（3）障害者雇用の考え方 |
| 障害者雇用のための職場環境について考えてみると、障害者の受け入れのために、施設・設備などハード面を改善しているケースもみられるが、受け入れるための環境について不安を持っている企業は多い。 障害者受け入れに当たっては、現場レベルで「対応をどうすればいいか」「必要なものは何か」については配慮が必要であるが、障害の種類によって職種を限定することは、雇用の機会を難しくしかねない。今後は、企業側も「障害者＝就業困難」と考えるのではなく、幅広い視点で就業可能な職種を考えることも必要である。 南四国部品株式会社の事例を参考に、障害者雇用のための環境について考えてみると、「バリアフリー」の環境を整えるという面だけではなく、その人の能力をみて「その人が社内のどのポジションであれば活躍できるか」を考えていくことも企業側として大切であるということが分かる。 （執筆者：株式会社くろしお地域研究所調査研究部長 浜口忠信） |
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