根気強くきちっと仕事をする社員
2004年度作成
事業所名 | 横田きのこ有限会社 | |||||||||||||||||||||
所在地 | 高知県高知市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | きのこ(エノキダケ)の生産 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 15名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 6名
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1.事業所の概要と障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要 |

事業内容は、エノキダケの製造であり、培木に穴を開け、種を植え付け、それを1か月間培養し、発芽したものをさらに1か月間生育していくという一連の作業を年間通して行っている。 「そのころは、農業の中でも安定的に収入になる作物は少なかったが、エノキダケの栽培は比較的収入の良い仕事だった。昔は今ほど生産者が多くなく、この土地はエノキダケの栽培にも適していた」とのことである。以後、生産者が安定的収入を得ることができ、かつ消費者がいつでも安心して買い求められるエノキダケの栽培を目指してきた。 |

(2)障害者雇用の経緯 |

その後、現在の横田きのこ(有)を設立し、10数年前に、職業センターの訓練生を初めて雇用した。次いで、職安を通じて養護学校との関わりを持ち、職場実習等を経て、雇用に至っている。 「障害者雇用のきっかけは、職業安定所からの声かけが始まりだったが、以前から知的障害者の働きぶりを知っていたから、雇用してみようと思った」という。「雇ってみると、1人ひとりに特性があり、個性もばらばらだが、それは健常者も同じこと」とのこと。現場では、上司の指示等は理解し、作業中(機械が動いている間)は、みんなまじめに働いており、意志疎通等も良好である。 現在、社員は15名おり、そのうち聴覚障害者1名、知的障害者5名が働いている。 |

2.施設・設備などハード面の工夫
(1)安全面 |

「事業所にある機械は、すべて安全性の高いものを入れている」という。途中で何かトラブルがあったらブザーが鳴り、自動的に止まる仕組みとなっている。また、人間が機械を極力操作せず、スイッチ1つで動かせるようになっている。
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(2)生産面 |

障害者の中に、運搬したり、所定の場所や機械へ向かうコロの上に製品等を置いたりする作業を行っている人がいる。その作業への配慮として、仕上がった製品に目印を付け、障害者が運び出しやすいようにする等工夫している。
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3.ソフト面の工夫
(1)募集・採用 |

以前は、職業センターの訓練生を雇用していたが、現在は公共職業安定所からのルートにより雇用している。 |

(2)賃金 |

賃金は、時間給なので仕事の量によって異なるが、平均すると月1人あたり10万円前後であり、最低賃金はクリアしている。 |

(3)労働時間 |

労働時間については、「農業なので季節ごとに異なる」とのこと。栽培の1サイクルが2か月間なので、1日ごとには決まったノルマはない。これは「きのこの栽培は気候に左右され、毎日の作業時間に波がある」からだという。そのため、春・夏は週休2~3日制で、8:00~14:00または8:00~15:00の1日6~7時間勤務である。最盛期の秋・冬には、日曜にも交代出勤があり、8:00~16:00の1日8時間勤務となっている。 |

(4)職場配置・定着 |

現在働いている6人の障害者のうち、聴覚障害者1人は、計量・包装作業を行っている。知的障害者5人は、エノキダケ製造の4工程(機械操作)の中で、ペアで運搬(押す、引く)する作業、所定の場所及び機械へ向かうコロの上に置いたりする作業、菌が成長するビンや機械類の清掃する作業の3つを行っている。 働いている障害者は全員が比較的健康で休むこともなく、定着率も良いという。その理由として、「女性が多い職場であるため、現場も障害者が働きやすい雰囲気なのでは」とのこと。
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(5)教育・訓練 |

「現場の仕事には、あまり難しい作業はないため、実際に働き始めて3か月くらいでみな仕事を覚えていく」とのこと。「機械が動いている間は、みんな真面目に働き、仕事もきちっとする」という。そうして覚えたことをこつこつと行いながら働く姿が印象的であった。 |

(6)福利厚生・健康管理 |

事業所としては、定期検診を年1回行っている。健康管理は、本人や家族にとって大切な問題であり、日々の健康管理には本人や家族はもちろん、会社も気を配っている。 |

(7)父兄・養護学校との連携 |

父兄との連絡は、定期的には行っていないが、休んだり、病気をした時など何か問題があったときに相談をする場合がある。また、普段はみんな徒歩や自転車で通っているが、雨の日は保護者が車で送って来たりするので、何か相談や連絡がある時はそのときに話をしている。 養護学校とは、毎年行っている職業体験での実習生の受け入れについて、打合せを行っている。新規の採用をここ5年ほど行っていないが、学校の先生が年1~2回ぐらいの頻度で、卒業生の様子を見に来ている。 |

(8)助成金や各種支援制度の活用 |

雇用開発協会の助成金により、以前に設置している作業施設等の改善を行っている。また、常用雇用労働者数が300人以下の事業主で、一定数(各月の常用労働者数の4%相当の年間合計数、又は72人のいずれか多い数)を超えて、身体障害者又は知的障害者を雇用している中小企業事業主に支給される障害者雇用報奨金の支給を受けている。 |

4.まとめ
(1)働くことを通じて |

障害者対策を、食べるところ、住むところ、働くところとトータルに考えていくと、企業(働くところ)は、障害者が自立して生活するための収入を稼ぐところに過ぎない。しかし、働くことを通じて、その成果を周りの人にほめてもらう、認めてもらうことが本人の自信につながり、障害者自身の生きる意欲にもつながっていると考えられる。 |

(2)お互いを知って |

「今後とも、障害者1人ひとりの個性を大切にし、職業体験の実習生の受け入れも継続して行うなど、障害者雇用機会の提供を行っていきたい」という。 現在、障害者を募集する際に一般的な方法は、ハローワークで求人申し込みをし、求職登録をしている人の中から紹介を受けるというものである。また、ハローワークでは障害者合同面接会なども実施している。 しかし、横田きのこ(有)では、以前行っていた箱をつくる内職の仕事を通して、もともと知的障害者の働きぶりやその特性を知っていたことが現在の障害者雇用につながっている。そういう意味では、企業も障害者もお互いをよく知った上でその後の雇用につなげるといった方法も大切だということが分かる。 企業側も、障害者を受け入れる余地がないと最初から考えずに、「この障害にも可能な業務がないか」という視点から障害者雇用を考えていくことも大切であろう。 (執筆者:株式会社くろしお地域研究所調査研究部長 浜口忠信) |

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