家族のような気持ちで働く花束加工場
2004年度作成
| 事業所名 | 株式会社 花新 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 福岡県宗像市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 生花園芸用小売、スーパー向け生花の製造、ガーデニング教室（むなかた市民学習ネットワーク、古賀コスモス大学、TNC西日本文化サークル香椎校）、冠婚葬祭、ブライダル。 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 17名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 9名
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1.事業所の概要と障害者雇用の経緯
| 昭和54年に、地元のスーパーに花の販売をしたのが始まりである。 美しい花、可愛い花を商売上の商品にとどまらず、花を通して人々が愛し合い、助け合い、慈しみ合って平和な世の中になることを願い、すこしでも世の中の助けになることがあったら、喜んでお手伝いをさせて頂きたいというのが本会社の経営方針である。 平成4年に、社長は、交通事故により3ヶ月入院した。この入院生活が、今までの生き方を反省する機会となったそうである。そして、知的障害者の施設である若久緑園の実習生を紹介され、家庭に迎え入れ仕事を始めた。 その後、北九州高等学園（知的障害養護学校）より3名採用した。3名までは家庭に受け入れていたが、家族と生活を共にすることには限界があり、一般の宿舎からは入居を断られた。そのことが契機となり、平成13年11月に花束加工場と女子寮を完成させた。 従業員はパート従業員を含め、全部で31名である。そのうち、障害者は9名であり、知的障害者が8名、精神障害者が1名就労している。知的障害者8名のうち、6名は保護者がいない。
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2.取り組みの内容及び効果
（1）雇用管理の方針 |
| 障害者だからといってできないことはないと考え、各人の得意なところを見いだし、誉めて作業をさせている。また、従業員には、知的障害とは言わない。自然に分かればそれでよいという方針である。 雇用計画に関して、新規採用については検討中である。福祉施設や養護学校からの職場実習は、申し込みがあれば年2名程受け入れている。配置については、障害の適性を配慮して適材適所に配置している。 |
（2）従業員の成長 |
| 知的障害がある上に親がいないという境遇にあったために、今までいじめにあって暗い性格であったが、家族のような気持ちで経営者や従業員が接するうちに、明るく、自信を持って作業にあたり、逞しくなった。 このことは、花新さんの創立記念誌に見られる、出身養護学校、施設職員や従業員の声の中に読みとることができるので、その中のいくつかを紹介する。 ア 養護学校からのメッセージ 「・・・・・・ハンディを持たれた方々への理解と思いやりなど、振り返れば、知的障害児の体験実習を快く受け入れて頂いたのを始め、Kさんの雇用に関する問題などを通じて数多くのことを教えられ、また元気付けられてもきました。今回、工場と寮が完成したことをお聞きして、自分のことのように嬉しく、良かったと感動しています。その反面、正直に言わせて頂ければ、これからも一段と大変なことだといった感もうけました。・・・・・・」 イ 福祉施設からのメッセージ 「Mちゃん、株式会社花新様にお世話になって早くも6年になりますね。16歳で不安な表情で天使園を出て行くMちゃんを心配しながら見送った日がつい先日のことのようです。『身体ひとつでどうぞ』と、社長様のご家庭に迎え入れて頂きました。ご家族の皆様に愛され、Mちゃんのために良いとおもわれることをいつも考えられて、お母さんのこと、成人式、日々の関わり、本当に良きに計らって頂きましたね。 また、スタッフの方々、ひまわり寮の皆様、多くの人々との出会いや温かな交わりの中で、Mちゃんの素晴らしさをたくさん引き出して頂き、素敵な女性に変容しました。逢うたびに明るい笑顔を見、礼儀正しく振る舞い、思いやりのある姿に感心させられていました。嬉しさと感謝の思いでいっぱいです。 これからも感謝の心を忘れず、Mちゃんの優しさ素直さを大切にしてもっと輝き、周囲の人々にとって喜びの種になってください。シスターもずっと応援しています。」 ウ 働く従業員からのメッセージ1 「若松養護学校の先生と初めて花新の面接に行きました。あまりおぼえていませんが、緊張していたと思います。面接が終わってから、花新に実習がきまりました。住み込みで実習をしました。 一度も家庭に入ったことがないから、はしのもちかたがおかしくて注意されることもありました。実習が終わって、学校へ戻って練習をしました。それができないと社会に出てはずかしいことだと思います。 実習に来て、はじめての家庭のお正月をむかえました。あせち料理やおぞうになどがでました。とてもおいしくいただいたことをおぼえています。あたたかくむかえてくれたことを感謝しています。 私が花新に来て6年になります。1年1年早いです。花新にきてよかったと思います。社長さん、マネージャーさんいつもしんぱいしてくれて、ありがとうございます。そして、新しい作業場と私たちの家ができたことが、とてもうれしいです。ひまわり五人ががんばったから、新しい家ができたと思います。ありがとうございました。作業場に行ってもわからないことがありますけど、がんばりたいと思います。」 エ 働く従業員からのメッセージ2 「はじめて花新にきたときは、なにをしていいかあまりわからなかったけど、だんだんやっていくうちに花の名前をおぼえていきました。まだ、そだてかたをおぼえてないので、だんだんおぼえていきたいです。 3年目になったのに、まだ仕事がおそくて、へんじもあまりできていません。へんじをしても小さくて、人にとどかないような声だから、きこえないんだろうなと思っています。早くへんじもできて、仕事もできるようになりたいです。 これからは、なんでもできるようになりたいです。だから、頑張ります。それから、リボンもできるようになりたいです。いろいろおぼえないといけないので、とてもたいへんです。これから、一生懸命頑張ります。 これからもいろいろめいわくをかけるかもしれませんが、どうぞよろしくおねがいします。」 |
3.今後の課題・展望
| 家庭的な雰囲気の作業場と、生活の憩いの場としての寮生活の特徴を維持・継続しながら、従業員の作業の種類の拡張と精度の高揚が期待される。 また、経営者の主張のひとつである地元宗像市の企業・商店主に障害者を是非一度は雇用して欲しいという願望の実現であろう。 （執筆者：福岡教育大学教育学部教授  ） |
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