食品産業の支え手として働く
2004年度作成
| 事業所名 | 株式会社経済連総合食品 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 佐賀県杵島郡江北町 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 鶏肉加工・肉用種鶏の種卵生産・ふ化販売、健康食品・菓子の製造販売 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 263名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 12名（平成16年10月1日現在）
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1.事業所の概要と障害者雇用の経緯
（1）沿革 |
| 昭和42年4月、JA佐賀経済連全額出資により会社設立、昭和43年4月、本社工場にて、ひな供給を開始する。以来、昭和45年、佐賀チキンフーズ工場を操業、昭和53年、伊万里チキンフーズ工場操業、昭和56年、伊万里食品工場操業、昭和63年には、健康食品（卵油）を販売開始、平成3年、菓子工場を操業するなど順次事業を拡大し、肉用種鶏の種卵生産からひなのふ化販売、鶏肉や鶏卵を活用した食品や菓子の製造販売等を行う総合食品産業の担い手として現在に至っている。 |
（2）障害者雇用の状況 |
| 従業員数は263人で、そのうち、障害者の雇用数は12名、雇用率は7.22％となっている。 障害者雇用については、昭和53年3月、伊万里チキンフーズ工場の操業開始を機に、2名の障害者を雇用したことから始まった。その後、養護学校や知的障害者施設、公共職業安定所などからの雇用要請を受けて順次障害者の雇用拡大を行い、平成16年10月現在、養鶏センター、佐賀チキンフーズ工場、伊万里チキンフーズ工場で12名を雇用している。 障害の種別は、身体障害者が4名で、そのうち聴覚障害が3名、知的障害が8名となっている。 |
（3）障害者雇用が進んだ理由 |
| このような障害者雇用が進んだ背景としては、平成元年前後のバブル経済時代に事業拡大を推進し、雇用拡大していくなかで、要員確保対策の一環として障害者雇用を検討した。その結果、工場の作業工程によっては、知的障害者にとって健常者の作業効率とあまり変わらない部署があったこと。 また、雇用した結果、聴覚障害者や肢体不自由者の場合、オンラインでの作業は健常者の作業能率とほとんど劣らない状況であり、知的障害者についても作業工程を考慮して配置すれば真面目に一生懸命働いてくれることが雇用拡大につながっていった。
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2.取り組みの内容及び効果
（1）身体障害者への対応と効果 |
| 身体障害者については、仕事の内容を理解し体得するまでは、一般の作業員と同じ作業箇所に配置し、作業工程を増やしていくなかで障害者本人の能力・適性・希望等を考慮していけば、特に問題は見られない状況である。 聴覚障害者の場合、就労していくうえで支障となる上肢障害のある者はいないため、作業工程や配置を考慮すれば作業効率は他の健常者とほとんど変わらないので、雇用の効果も基本的には一般と同じである。 また、体幹障害者の作業内容は養鶏場での採卵であるため、障害による支障はみられない。 |
（2）知的障害者への対応と効果 |
| 知的障害者の場合は、他の一般作業員との人間関係や作業の理解等慣れるまで時間がかかるため、健常者を一対一に近い形で配置し、個別的な教育、訓練を行うとともに、定期的な所内ミーティングを行い、問題点や改善点を検討、協議し対応されている。 知的障害者の作業内容は、チキンフーズ工場での鶏肉の解体、分別作業等で、流れ作業になっている。最近は機械化・自動化が進んできたが単純な作業も残っており、人手を使って確認しながら作業を進める箇所もあるため、知的障害者の適性を考慮して作業箇所を決めている。 知的障害者の場合、慣れるまで時間がかかるが、本人が理解したら言われたことは確実にやるし、与えられた仕事を真面目に取り組むという態度は共通して見られるところである。また、そのような仕事に対する姿勢は、一般の職員にもよい影響を与えており、全体として、知的障害者の存在が職場全体を和やかなものにしている。 職場が食品産業ということもあり、衛生面の管理については特に注意されているが、この点においても、手洗いや防塵対策、清潔な身なりなど最初にきちんと教えておけば他の職員の範となるような態度で取り組んでいる。 |
（3）生活面での支援 |
| 障害者の雇用期間は、7年から22年と比較的長期間雇用されているものが多く、障害者にとっては安定した職場となっているが、知的障害者の場合、雇用されて4～5年すると職場に慣れて緊張感が薄れてくるのか、知的障害者間での対人関係のトラブルが起こりやすくなったり、仕事外での遊びなどに関心が向き仕事を辞めてしまう場合がある。その期間を乗り越えると定着するので、現場の班長が生活面や対人関係の調整等対応をしている。 大切なのは、家族の理解と支援であり、家庭環境が良いということも安定した雇用環境になるので、家庭と連携を図りながら生活面での支援が行われている。 障害者全員が自宅通勤者であり、マイクロバスで送迎がなされているため、通勤途上での問題等はないが、家族の理解や協力がここでも大切な要素となっている。 ある程度長期間雇用されている障害者が多く、現在は比較的安定した状態であるため、特別生活上の問題は見当たらない状況であるが、職場の親睦会が行う職員旅行や忘年会、焼肉会、鶏魂祭等の行事を通して、障害者とのコミュニケーションを図る努力が行われている。 |
3.今後の課題・展望
| 障害者の雇用期間が比較的長期間であることが会社の特徴ともなっているが、これは、障害者が定着していくために障害特性に配慮した雇用努力がなされているためである。 特に、知的障害者に対しては、作業内容が理解しやすい作業箇所を機械化せずに残しておいたり、作業に習熟するためにマンツーマン体制をとるなどして、知的障害者が働きやすい労働環境の設定が意図的に進められていることがその要因と考えられる。 しかし、雇用期間が4～5年と経過したなかで生活面の乱れや家庭の協力が得られずに辞めていく場合など、専任の生活支援職員がおらず対応に苦慮することもあり、今後、このような課題に対処していくためには、障害者就労支援センターや障害者職業センター等との連携を図り、役割分担を通して障害者の就労支援を推進していくことが重要になってくるものと考えられる。 株式会社経済連総合食品は、障害者の雇用について、定着しやすいための配慮やしくみが考慮されていた。2回目の会社訪問をした折、知的障害者施設からの職場実習生が一生懸命箱洗いの作業をしており、実習態度は良好なので雇用を検討しているとのことであった。そこには、食品産業の支え手として、可能性を持つ新たな障害者の姿があった。 （執筆者：西九州大学健康福祉学部社会福祉学科助教授 田代 勝良） |
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