一人ひとりの力が生かされている職場
2004年度作成
| 事業所名 | 株式会社馬渡商会 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 佐賀県武雄市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | コンクリート製品の製造販売、瓦の製造販売・施行 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 112名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 6名（平成16年11月1日現在）
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1.事業所の概要と障害者雇用の経緯
（1）沿革 |
| 昭和26年6月、武雄市にて馬渡商会を設立し、粘土瓦の生産を始める。その後、セメント瓦やコンクリートブロックの製造販売等を経て、総合的なコンクリート製品の製造・販売・施行と事業を拡大し現在に至っている。 |
（2）障害者雇用の経緯 |
| 従業員数は112人で、そのうち障害者の雇用数は6名、雇用率は8.33％となっている。 障害者雇用については、昭和50年6月、公共職業安定所等から障害者の雇用要請を受けて身体障害者（肢体不自由者）を採用したことから始まった。知的障害者については、公共職業安定所や養護学校、施設等の依頼により職場実習を受け入れたところ、実習態度や仕事の習熟等良好であったため、昭和61年頃から雇用している。 その後、順次、障害者の雇用拡大を行い、現在6名の障害者が本社工場や新堀工場で働いている。実際、訪問時も知的障害者施設から体験実習として1名が実習指導を受けていた。 |
（3）障害者雇用が進んだ理由 |
| このような障害者雇用が進んだ背景には、会社の方針として、障害者雇用は、社会全体の共通の使命であり、責務であることを十分理解し、積極的に取り組んでいくという基本的な考え方があったためと考えられる。また、株式会社馬渡商会の主な事業内容がコンクリート製品の製造・販売であるため、製造過程に、鉄筋の切断作業、型枠の清掃、完成品の検査、鉄筋への部品取り付け等障害者の能力や障害の状況に応じた作業工程が継続的、かつ、安定的に存在していたことなどがその要因と考えられる。 障害の種別では知的障害者の雇用が4名と最も多い。これは、職場実習を実施することで職場での作業環境への適応性や、作業工程への適性を見定めることができることや、真面目に一生懸命に作業に取り組む姿勢が評価されたためと考えられる。
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2.取り組みの内容及び効果
（1）身体障害者への対応と効果 |
| 身体障害者については、聴覚障害者は品質管理のための事務作業を、下肢に障害のある社員は販売等の営業に配置されている。また、聴覚障害者の作業場には、手話ができる職員が配置されており、コミュニケーションの面でも作業環境への配慮がなされている。 身体障害者の場合、基本的に作業効率は健常者とほとんど変わらない。また、聴覚障害者の場合も、言語でのコミュニケーションは困難であるが、手話や筆談等の対応をすれば仕事上の障害は見られない。 |
（2）知的障害者への対応と効果 |
| 知的障害者については、その能力に応じて、鉄筋が型枠に接触しないようにスペーサーを取り付ける作業、鉄筋を均等に切断する作業、瓦の修正作業、型枠の組み立て、清掃作業等の工程に配置し、それぞれの作業部署にベテランの職員が配置されている。 知的障害者の場合は、作業工程の適性を検討し、指導体制をとっていても、作業効率という視点からみれば健常者と同じではない。例えば数の理解が不十分な場合があり、忙しいと焦って数を間違えたりするので、鉄筋1本から取れる量をあらかじめ計算して、事前に必要な本数を準備しておくなどの配慮をしなければならない場面もある。 しかし、欠勤をしないこと、仕事に対する一生懸命さや、決められたこときちんと守るという勤務態度は、職場全体に良い影響を与えている。特に、製造部門は、安全管理が重要であるが、最初にマンツーマンで指導を受けると、一度覚えたらその手順は必ず守るという態度が、他の社員の模範にもなっている。 |
（3）安全面等の配慮 |
| 障害者の雇用上、特に注意していることは怪我をさせないということである。専用の作業台を作り事故防止に努めたり、障害者の作業箇所には、責任者やベテランの従業員を配置し作業状況が把握できるようにしている。また、作業を円滑に行うために良好な人間関係の保持にも留意している。 |
（4）生活面での支援 |
| 障害者の作業工程ごとに責任者が配置されているため、仕事に関することだけでなく生活面についても相談ができ、細やかな配慮がなされている。また、不定期ではあるが焼肉会等の懇親会も随時行われており、従業員全員が参加して障害者とのコミュニケーションが図られている。 会社として特別に生活面での支援というのは講じられてはいないが、家族の理解や協力は欠かせないため、障害者の家庭との連絡は随時行っている。障害者の家族の中には14年間毎日欠かさずバス停まで家族が送迎を続けているというところもあり、家庭との連携は雇用継続の大事な要素となっている。 知的障害者施設や養護学校、雇用促進協会等関係機関とは、必要に応じて連絡調整ができる体制がとられており連携が取れている。特に、知的障害者の雇用が多いことから、知的障害者施設との連携は緊密になされている。しかし、現在のところ、雇用要請も各方面からなされているが経済的見通しが不良なため新規雇用には至っていない。 |
3.今後の課題・展望
| 現在、最も長く雇用している身体障害者の勤務年数は30年程で、知的障害者も10年から19年と、いずれも雇用期間は長期間になっている。身体の障害面を考慮して残業をさせていないという者もいるが、現在のところ、加齢による体力面の問題は生じていない。 最近、障害者の雇用促進ということで関係機関や障害者施設、養護学校等から新規雇用の要請や依頼が多く寄せられているが、景気の動向が思わしくなく、コンクリート製品の製造販売は特に景気に左右されることが大きいため、現状では、6名の障害者の雇用継続が精一杯のところで雇用拡大は困難な情況にある。 株式会社馬渡商会においては、障害者の雇用に様々な配慮がなされていた。特に知的障害者については、一人として同じ作業工程はなく、それぞれの適性を考慮して各工程に配置されており、休息時間に訪問した折も職場での人間関係には和やかさがあった。また、聴覚障害者に対しては手話ができる従業員が配置されており、障害者が働く環境としては、一つのモデル事例となりうるものであった。 このような職場で障害者の新規雇用が進んでいくためには、一刻でも早い景気の回復や、経済の安定的な成長が必要であることを痛感した。 （執筆者：西九州大学健康福祉学部助教授 田代 勝良） |
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