進取・挑戦・試み~知的障害者雇用で障害者観が変わる~
2004年度作成
事業所名 | アクト化成株式会社 | |||||||||||||||||||||
所在地 | 大分県宇佐市 | |||||||||||||||||||||
事業内容 | 農業用資材製造販売、建築資材製造販売 | |||||||||||||||||||||
従業員数 | 45名 | |||||||||||||||||||||
うち障害者数 | 7名
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1.事業所の概要と障害者雇用の状況
(1)事業所の概要 |

作業工程(培土生産ライン)は以下の通りである。
関連会社は、(有)アクトグリーン(農場経営)、(有)アクト物流(運送業)、(株)アクトチャレンジ(不動産管理)、(株)アクトケア(ケアホーム経営)。関連施設は、医療法人玄々堂(泌尿器科、整形外科)である。 |

(2)障害者雇用のきっかけ |

ある企業経営者の会議の後で、友人のA氏が障害者雇用について熱っぽく語ってきた。もともと福祉や企業の社会貢献については関心が高かったので、早速ACT(アクト)、よいと思ったことは直ぐにやれ、善は急げである。翌日、その方の紹介で養護学校の先生に来てもらい、会社の経営理念、工場見学と工程の説明をする。翌週から実習開始の運びとなる。1996年から知的障害者の雇用を開始した。 最近では、先生方が会社を熟知し、会社が望む人材を推薦してくれるようになっている。 現在雇用している障害者の居住の場は、糸口通勤寮3名、自宅1名、グループホーム3名である。 |

2.職場改善に取り組んだ背景
(1)雇用した当初のトラブル |

社員が、養護学校の卒業生と言うだけで「からかう」「過干渉をする」。「彼らを雇うぐらいなら私たちの給料を上げてくれ」「実習での様子を知っているので、仕事ができるか?苦労するのはわれわれ従業員である」といった不満が出た。 また、指導を任された健常者が、彼らの特性を理解していないために、操業中に口論になる事態が頻繁に生じた。 |

(2)on the job trainingでの気づき |

雇用後に、以下のような事実がいくつも報告されるようになった。
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3.職場改善の取り組み内容と効果
(1)社員訓示の徹底 |

彼らが気持ちよく働けない会社は、たいした会社ではない。私たちは試されているのだ。障害者雇用の意義や会社経営の理念を毎朝の朝礼で、言葉を換えて、喩えを変えて、くどいほど全社員に説いた。 |

(2)知的障害社員の長所を評価 |

彼らの良さを引き出すチャンスを設定し、賞賛する機会を多く作った。彼ら自身が頑張って、彼等の地位を勝ち取ったと考えている。 朝礼で「職場の教養」と言う雑誌を毎日順番に読んでいる。ここで彼等を差別せず、下手でもよいからと、彼等がいやがるのを説得し、健常者と同等に扱ったことが功を奏した。当初、知的障害ということで、多少軽蔑的に見ていた社員が、驚くほど彼等がよく読めること、先輩社員よりじょうずに読めるし意味も理解していることが分かって、自分たちの偏見に気づき態度を反省する会話が聞かれるようになった。 昼休みも特段することがないのか、片づけをしたり、午後の準備をしたりなど、言われたわけではないのにせっせと体を動かすなどが好感を持って受け取られた。 「今日は忙しいようだから、私は残って仕事をします。」等と、自分の判断で残業の申し出をしたり、休日出勤を申し出たりするようになった。 こうしたことの繰り返しのなかで、通勤の送迎を、社員が自主的、積極的にしてくれるようになった。 |

(3)福利厚生面の改善 |

毎日、給食会社から、弁当を購入し、会社が半額負担する。忘年会、社員旅行など、親睦にも力を入れるようになった。彼らのために始めたことが全社的なものになり、喜ばれている。全社的な営業成績のアップにつながっている。 |

(4)社員の障害者観の変化 |

障害者雇用の最大の効果は、社員が優しくなったことである。思いやりの心で、かつての過干渉から自然な感じで諭す。そんな雰囲気が会社のなかに出来上がった。障害者を雇用して、一番得をしたのは会社である。 師弟関係のようなものが自然に芽生えてきた。また、呼び捨てをしなくなった。 従業員の障害者観が変化するのが、如実に見えだした。仕事に対して自信がついてくるに従い、彼らの顔つきが変わってきたことを従業員が噂をするようになった。 「彼らは、仕事ができないのではない。少しゆっくりなだけである。飲み込むのに時間がかかるだけで、理解が進めば、自分たち以上に仕事ができる。自分から工夫してすることは苦手でも、いわれたことはかたくなまで丁寧にやる」。 また、できることやできたこと等、彼らのすぐれた点を普段に喧伝することが大切であることに気づき、「数を数えきらなくても、積み方、形、その他もろもろの視覚的手段で、例えばパレット60とか、パレット50とかの数を高さや幅で判断する生活知を持っていることが社員に分かり、安心感・信頼感が芽生えてきた」など、知的障害者の特性や能力が理解されてくることで社風が一変した。 |

(5)父母会の開催・会社見学、通勤寮の職場見学 |

親や施設の理解が進み、安心して子どもたちを預けられますという感謝の念をいただいている。 |

4.障害者雇用の思い入れと今後の課題
(1)社長のことばから |

「社会貢献と思い雇用したが、多分、工程に乗っかった仕事はできないだろう。ゴミを拾ったり、けがをしないように気をつけながら掃除をさせたり、助手ができれば・・・程度のことしか考えてなかった。ところが、機械が使えるし、ショベルカーが動かせる。毎年スキルアップするので今では知的障害者観がまったく変わった」、「起業家として、生産性が上がり、物流が進み、雇用が進み、社員が育ち、人の成長が見られることほど嬉しいことはない。障害者雇用をはじめたお陰である」。 最賃適用除外の申請について問うと、「そういう制度があること自体知らなかった。当然していないし、しようとは思わない。仕事ぶりを見てください、完全に戦力になってます。女性のパートを雇っている感覚です。12万も出せば女性が雇えるが、彼らはそれより上の仕事ができます。賞与も当たり前に出しています」と、話されるお顔は、新進実業家としての自信にあふれている。 この取材の1か月後ぐらいに、ある大手新聞社が介護保険制度の特集を組んだ際のパネラー(関連企業のところであげたが医療法人の病院や福祉法人の老人ホームの経営もされている)として、独特な福祉観を述べられていたが、障害者雇用にもその精神がなみなみと流れていることを感じた。 |

(2)今後の課題 |

(執筆者:別府大学短期大学部初等教育科 佐藤賢之助) |

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