JAの成り立ちからして障害者雇用は当然の使命
2004年度作成
| 事業所名 | おおいた県南柑橘農業協同組合連合会 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 大分県津久見市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 柑橘の生産、柑橘の集荷、市場出荷、選果・選別・箱詰め作業、販売、品種の改良等の指導事業。 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 47名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 4名
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1.事業所の概要
（1）事業所の概要 |
| おおいた県南柑橘農業協同組合連合会は、3市（津久見市・臼杵市・佐伯市）6町（佐賀関・上浦・弥生・鶴見・蒲江・宇目）3村（米水津・本匠・直川）の県南部農協の連合体である。 従業員は47名であるが、4月、5月、12月は柑橘類出荷の最盛期のために、パート労働者を募集し100名を超す人が働いている。 |
（2）作業工程と障害者の配置 |
| 荷受け（＊） → 予措 → デバレタイザー → コンテルスケール → 回転式ダンパー → 一次選別（＊）→ 前処理 → アポログレーザー等級選別 → 糖酸度センサー（＊）→ 自動秤量機 → 全自動封函機（全自動製函機） → 製品ストレージ → パレタイザー → 出荷（＊） 全自動化の中に、手作業でなければできない部分がある（工程中の＊印を付した部分）。この部分で知的障害者の適性に合った仕事を当てている。具体的には各作業の補助、商品の移動、積み込み作業等である。
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（3）関連業種 |
| JA大分のぞみ、JA佐伯豊南、全農おおいたである。 |
2.障害者雇用への思い入れ～JAの成り立ちからして当然の使命
| 障害者雇用についてのお考えを伺ったところ、JA綱領を詳細に語られた。 「私たちJAの組合員・役職員は、協同組合運動の基本的な定義・価値・原則（自主、自立、参加、民主的運営、公正、連帯等）に基づき行動します。そして、更に地球的視野に立って環境変化を見通し、組織・事業・経営の革新をはかります。さらに、地域・全国・世界の協同組合の仲間と連携し、より民主的で公正な社会実現につとめます。 このため、わたしたちは次のことを通じ、農業と地域社会に根ざした組織としての社会的役割を誠実に果たします。 （1）地域の農業を振興し、わが国の食と緑と水を守ろう。 （2）環境・文化・福祉への貢献を通じて、安心して暮らせる豊かな地域社会を築こう。 （3）JAへの積極的な参加と連帯によって、協同の成果を実現しよう。 （4）自主・自立と民主的な運営の基本に立ち、JAを健全に経営し信頼を高めよう。 （5）協同の理念を学び実践を通じて、共に生き甲斐を追求しよう。 この綱領に沿って、地域の振興と農業者所得の向上を目的とし、地元労働者の雇用並びに流通経費の削減を図ることが使命だと考えている。 従って、障害者も地域の一員であり、地元労働者の一人であることから、障害者という差別をもたずに、20数年前に雇用し、今日まで継続雇用に至っている。」 平成14年度には、障害者雇用優良事業所として（財）大分県総合雇用推進協会、協会長賞を受賞している。 |
3.職場改善に取り組んだ経緯と内容
（1）障害者雇用のきっかけ |
| 20数年前、農協合併以前の津久見市農協選果場の時代、当時は路地みかんが主流で、今日のようなハウス栽培はまだなかった時代である。若者の都市部への流出現象が当地でもおこり、みかん業者が出荷時を迎えても人手が足りない状況が生じた。 折しも、何かの会合の席で、津久見市の知的障害者施設「うばめ園」で即戦力になりそうな知的障害者がいる、就職の道を探しているとの情報を入手した。早速、実習をかねて試しに使ってみよう、場合によっては雇用も考えようと言うことで話し合いが成立し、双方の合意のもと4名を受け入れ、みかん集荷時に助手として使ってみることにした。 結果が思いのほか好評で、そのまま雇用と言うことになり現在まで続いている。 その4名は、現在、自家用車1名、社員送迎バス2名、自転車1名で通勤している。 |
（2）雇用後に生じた問題点 |
| 健常者に比べて理解するのに時間がかかること、また何でもないことに思えることでも、本人にとっては自尊心を傷つけられたと感じていることなど、知的障害についての正しい理解に欠けていたために、人間関係の些細なトラブルが頻繁にあったと聞いたことはあるらしい。しかし、何しろ当時のことを知っている人が、現存していないので、詳細は分からないとのことであった。 現状では4人共に何ら問題はないとのことであった。 |
（3）職場改善の取り組み |
| 当時の4人が継続雇用されているので、彼等に対する現状の取り組みの様子をうかがった。 ア 些細な事項についても、当人と保護者に報告・連絡・相談をすることを心がけている。 イ 単独行動はできるだけ避け、必ず誰かと一緒に行動させる。そしてチェックをする。 ウ 安全対策には特に留意し、機械化のために事故が生じることがないように格段の心がけをしている。 エ 女性が多い職場のため、お互いの言葉遣いなどに支障がないように，朝礼等で常々説諭している。 ごく当たり前であるが、このような取り組みが彼等の継続雇用に貢献しているのではないかとのお話しであった。 |
4.今後の課題・展望
| 現在、農業を取り巻く環境は農業従事者の高齢化、後継者不足が深刻であり、さらに追い打ちをかけるようにBSE問題や、鳥インフルエンザ、果菜類については無登録農薬や残利用農薬などの問題で大変厳しい状況である。当地においても、このような中、農業従事者と取り扱い量が激減している。この状況では、人員の合理化を行わざるを得ず、新規に障害者を雇用するということは現状では考えられないとのことであった。 また、障害者理解を従業員に徹底するため各種の講習会や指導者養成機関の利用などにつとめなければいけないと感じている。 印象として、障害者自身の努力がここまで雇用が続いている一番の要素であり、更に、彼等の可能性を引き出し、高めていこうとする会社の理念、従業員の理解、この2つが障害者の雇用の継続に必要な条件だと感じた取材であった。 （執筆者：別府大学短期大学部初等教育科 佐藤賢之助） |
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