システム化された鶏卵加工工場での障害者雇用｜障害者雇用事例リファレンスサービス

システム化された鶏卵加工工場での障害者雇用

2004年度作成

事業所名

株式会社　岡崎グル－プ本部

所在地

宮崎県都城市

事業内容

鶏卵卸問屋。仕入・販売・加工部門を集中管理するグループ本部を設立して都城市、宮崎市、延岡市、鹿児島県を中心に事業を展開している。

従業員数

47名

うち障害者数

11名

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	3
肢体不自由	1
内部障害	1
知的障害	6
精神障害	0

目次

事業所の概要と障害者雇用の経緯
障害者の採用と配置
労働条件と配慮事項
まとめ

1.事業所の概要と障害者雇用の経緯

（1）事業所の沿革

　昭和30年、鶏卵卸問屋として創業。「満足を味わう」食文化時代に豊富なノウハウをもとに若い活力と柔軟な発想で時代のニ－ズに的確な対応ができるシステムを確立し、独創性豊かな商品開発を推進し地場産業として定着し、昭和49年宮崎市に鶏卵問屋岡崎鶏卵宮崎店設立。昭和52年同延岡店設立。昭和57年鹿児島県志布志店・隼人店設立。同年、取扱量の増大にともない加工販売部（玉子焼及び健康食品）として（株）岡崎鶏卵加工販売設立。昭和63年、仕入・販売・加工、各3つの会社の集中管理を目的に食品加工団地に移転。（株）岡崎グループ本部設置。平成2年、宮崎ボイル工場うずら全自動システム機導入により新工場新設。平成10年、ステーキワン都城店オープン。平成11年、夢印たまご村宮崎店オープン。平成14年、都城鷹尾にグラースカフェをオープンし、食文化の地域発展に寄与し得る企業である。

（2）職場環境

　工場内は、空調設備が整備されており、快適な作業環境にある。作業設備機械は高額で最新鋭のコンピューター制御による一貫したパッキングシステムラインで、作業管理が行われている。

　作業手順としては、洗卵部では約60度のお湯でブラシによる洗卵を行い、乾燥部では温風とブラシで湿気を取り乾燥を行う。次に検卵部では蛍光透視で破卵、血卵等を除去し、計量部では1個1個の卵重を瞬時に計り、コンピューターによりセパレートレーンの指示を送る。「選卵部パックライン」により農水省規格に分けられ卵がパックに自動的に詰められ、ラベルが自動で入り、「選卵部モールドライン」では箱玉専用ラインでトレイに規格別に詰められ作業が進められる。「規格外ライン」は、農水省規格に適合しない（極小卵）ものとして処理される。

（3）障害者雇用の経緯

　当事業所の障害者は、下表のとおりである。障害者を雇用するに至った経緯は、昭和56年都城公共職業安定所紹介により重度知的障害者を雇用したのが始まりで、障害者が仕事を通じて職業人として社会的自立を図るという岡崎社長の熱意が障害者を多数雇用する原動力になったものである。
　平成8年9月に宮崎県障害者雇用促進協会長表彰、平成9年宮崎県知事表彰を受賞、その後厚生労働大臣表彰を受賞している。

2.障害者の採用と配置

（1）採用

　採用にあたっては、安定所紹介、県立養護・聾学校からの職場実習を1学期に2～3名を2週間行い、その中から進路指導担当の先生及び親の決断により採用している。その外に（社）宮崎県障害者雇用促進協会の障害者雇用コーディネーターが、安定所と連携をとりながら事業所及び学校を訪問し、進路指導の先生のアドバイスにより入職するケースもみられるところである。
　障害者雇用コーディネーターは、宮崎県と障害者雇用促進協会が県下に8名を配置して、以下を実施している。

ア	福祉施設を訪問して自立を希望する障害者を把握し、進路指導を行う。
イ	自立を希望する障害者の支援計画を作成し、関係機関と連絡調整のうえ適切なリハビリテーション施設を斡旋する。
ウ	関係機関と連携し、実習先や職場を開拓する。
エ	就職後の職業生活上の助言・指導を継続的に行い、職場定着を図る。

　以上のような福祉から雇用への円滑な移行を進めており、このように地道な活動が障害者の雇用に大きく貢献していることがうかがえるところである。

＜障害者雇用状況＞

NO	性別	年齢	勤務年数	障害種別	仕事の内容
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11	男男男男女男女女男女男	54歳 50歳 49歳 35歳 35歳 45歳 46歳 57歳 64歳 30歳 18歳	22年11ヶ月 22年11ヶ月 20年 1ヶ月 19年 6ヶ月 18年 6ヶ月 12年 1ヶ月 9年 5ヶ月 7年10ヶ月 6年 4ヶ月 5年 9ヶ月 6ヶ月	知的・重度知的・重度じん臓知的・重度知的・重度知的・重度聴覚聴覚身体・下肢知的・重度聴覚	空カゴの洗浄、整理空箱の整理、組立商品仕分、出荷積込機械への入卵割卵商品仕分機械による製品製造玉子焼製造玉子焼製造玉子焼製造機械による製品製造

（2）障害者の職場配置

　障害者の職場配置については、流れ作業のシステムであるので障害者の適性・能力に適合する場所に配置して作業を行っている。

　職場内の作業の流れをみると、障害のある人を積極的に採用することで、職場の意識やムードも変わり、偏見はもちろん、やさしいだけのあいまいな接し方が一掃された。同じ立場で働くことで仲間意識が生まれ、他の作業員と渾然一体となり作業が進められることで、彼らの姿勢が他の社員に刺激を与えている。結果、職場に和気あいあいとした雰囲気がかもしだされ、作業効率が上昇する等、戦力向上にも十分貢献していることがうかがえる。しかも、部署によっては障害者がその能力を認められ、主任として職責を遂行している。
　一方、システム外で作業に従事している障害者については、空カゴの洗浄・整理、空箱の整理、機械への入卵、割卵等の作業に適材配置されている。
　ここでは、知的障害者が従事しているが能力にあった作業が与えられており、指導員が知的障害者を十分理解して指導しておられた。

3.労働条件と配慮事項

（1）労働条件

ア	労働日数月間平均労働日数23日であるが、1年単位の変形労働時間制を適用し、週40時間を達成している。休日数は年間92日を確保している。
イ	勤務時間 8：00～17：00であるが、休日数の関係から休憩時間で調整し、1日7時間40分勤務で対応している。
ウ	給与最低賃金を適用
エ	保険等社会保険・労働保険適用

（2）安全対策

　作業設備機械がコンピューターによる精度の高い機械であるため、事故制御装置は整備されているところであるが、一瞬の気のゆるみからのいわゆるヒヤリハットの事態を防止するため、社内に「安全心得」を掲示して災害の未然防止に努めている。

（3）人的支援

　障害者の指導にあたっては、業務遂行援助者1人、生活指導員2人を配置してその指導にあたっている。特に、障害者通勤対策として通勤バスを配置している。
　また、知的障害者の場合、知的レベル、身体発達、社会生活能力、素直さ、持続性等があるが、問題は作業能力に合ったところで能力を伸ばすことであり、そのためには根気よく指導する必要がある。5人の知的障害者は、それぞれ能力に合った仕事をしており勤務年数も5年以上22年の勤続であり、残存能力の開発を目的とした指導訓練が行なわれた結果、長期勤務が可能となっているもので、その成果は高く評価されるところである。
　指導方法としては、健常者とコンビを組ませ、作業の円滑化を図っており、業務遂行援助者が些細なことまで配慮し、確実かつ安全に作業できるよう個別指導されている。
　知的重度障害者が2人暮らし（兄弟）のため、生活相談員及び送迎バス運転手が家庭の生活状況を逐一把握し、適宜な生活指導をおこなっている。

（4）福利厚生

　手話教室の開催やボーリング大会、1泊ないし2泊3日の慰安旅行を実施する等、従業員とのコミュニケーションを図り、厳しい中にも和やかで明るい職場づくりがなされている。

4.まとめ

お話を伺った伊藤専務

　岡崎社長の運営方針として、“仕事を通じて社会参加”をモットーに障害者雇用に重点的かつ積極的に取組んでいる。昭和56年職業安定所紹介により重度知的障害者2名を雇用したのが始まりで、“障害者の職業的自立と社会的自立を図る”という社長の熱意で、養護学校、聾学校、宮崎県障害者雇用促進協会の雇用コ－ディネーターを通じてハローワーク経由で現在11名の障害者を雇用している。
　障害者雇用率も非常に高く、今後も障害者雇用の意欲は強く雇用が期待できる事業所である。

（執筆者：社会保険労務士　長友　安弘）

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