聴覚障害者雇用の当初の課題と対応
2004年度作成
| 事業所名 | 島津電子工業株式会社 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 鹿児島県鹿児島市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 電子部品製造 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 45名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 10名
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1.事業所の概要と障害者雇用の状況
（1）事業所の沿革 |
| 昭和59年、島津電子有限会社として設立、鹿児島松下電子株式会社の協力工場として集積回路IC部品の検査等開始。昭和61年10月、島津電子工業株式会社へと組織変更。その後、ホトインタラプター・オプト生産開始。平成8年、現在地に新工場開設（小山田町）。 作業工程としてはオプト・マーキング・挿入・特性検査・外観検査・包装の流れで業務運営している。
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（2）障害者雇用の経緯と状況 |
| 採用時の経過ははっきりしないが、1995年に障害者雇用の話があり、会って話を聞いてみましょうということで、面接に望んだ。その障害者が、非常にはきはきして好感を持ったので採用したのである。 結論的だが、最初に採用した方の仕事に対する姿勢・態度が非常によく、障害者といえどもこんなに立派に業務処理ができるのであれば、障害者・健常者という考え方からの採用ではなく、あくまでも業務遂行・姿勢等考慮して採用を考えるべきではないかと考えるようになった。 聴覚障害者の採用が多いのは、最初の方と同じ障害者ということで、業務能力的にもよいのではないかということで雇用している。 処遇面においては、言葉の不自由はあるが仕事遂行上は何等障害はないので健常者等と変わりなく公平に対応している。
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2.障害者雇用の課題と対応
（1）障害者を雇用して直面した課題 |
| 当初は、会話・仕事上の指示等コミュニケーションができないことから、同僚や上司間の意思の疎通を欠いたり作業手順の不徹底があり、非効率的作業になった。当社は、障害者雇用するのは初めてであり、周囲もそれまで前例がなかったため、障害に対する無知、不安や戸惑いがあった。職業能力・適性、そうして業務内容や環境についていかに対応すれば良いかなど想像もつかなかった。 また、会話ができないので、どのようにして仕事の教え方・指示等していいのか困った。仕事の指示をするとうなずくので理解していると思っていると、指示どおりの仕事ができていなくて他の従業員が後の処置をするという二重の時間を要するなど、指示等がわかるまでは何回となく同じことを繰り返すという連続であった。 |
（2）課題への対応 |
| 障害者職業生活相談員を選任し、ケースバイケースで問題点・反省点を分析した。 対応策等を検討して実施してきたと同時に、健常者に障害者への理解をするよう社内教育も徹底した。また必要以上に関与せず、ある一定の距離を置きながら指導するようにも心がけた。 仕事の教え方、コミュニケーション等については、当初は筆談や口を大きく開けてカタコトの言葉で話す等いろいろやっていた。その後は、従業員も簡単な手話ができるようになり、それを契機に最初に雇用した方が中心になり、手話講習会を開いたりして、なんとか仕事上の指示等はできるようになり、障害者の方も内容がわかるようになった。いったん覚えると、あとは非常に楽になり楽しい雰囲気になった。 配置については、障害になることが言葉の不自由さだけであるので、工程上の話をして本人の希望を多少取り入れて考慮している。 作業経験が長くなり作業能力が向上した障害者には、いろいろな職場・職務ができるよう指導していく（人材育成）。 余暇活動に参加できるよう配慮し、従業員同士の慰安、また地域社会の催しものにも積極的に参加し、地域住民とのふれあいを図っている。 |
3.障害者雇用の結果
（1）障害者雇用の進んだ理由 |
| 当初は、障害者雇用についてのノウハウなどなく、ただ障害者雇用というのが先になったのである。最初に雇用した障害者の勤務態度等が非常に良好であり、作業能力の向上が見受けられたことから、障害者・健常者という偏見がなくなり、その後の障害者雇用の増大につながった。 その間、多少の問題の発生もあったが、それはあくまでも当社の障害者雇用というものに対する認識不足からである。つまり、知識・認識がなく、また適切な指導員の不在など相互の意思疎通が欠いたことから、作業能力がありながらそれを生かしてあげられないことなど、職場環境づくりに欠けていたことである。 このマイナス面をプラス思考に考え、従業員同士が真剣に考えることが芽生え、逆に会社の社訓・理念の一つである「和」、つまり仲間がとけあうチームワークにつながり、働きやすい職場環境が整うことによって、障害者の作業能力・職場定着率も向上し事業拡大にも貢献している。 職場も明るい人が多く笑顔が絶えない。環境的にも非常に優れていると思うので、今後も意思疎通がいつでもできるような方針で対処していく。 処遇面においても、障害者だからという観念ではなく、仕事遂行能力に応じて対応し、できる障害者であればそれなりの処遇をし、公平にとり扱っている。 |
（2）今後の課題 |
| 責任者ならびに指導員の資質の向上・自覚等の社員教育を行う。 家族との連携をもち、それを作業工程上に生かし、作業向上に努める。 現在の経済情勢、生産拠点の海外移転等から、仕事量の減少傾向が懸念されるなかで、障害者雇用維持・確保を行う。 |
（3）今後の展望 |
| 企業は良い製品を生産し、市場へ送り出す使命がある。それを生かすためにも働く人の能力をいかに引き出す環境づくりに努め、また創造力・行動力を発揮できる人材育成に努めたいと考えている。 （執筆者：鹿児島県障害者雇用促進協会雇用管理アドバイザー 山口兵衛） |
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