一企業一人雇用～障害者の少人数雇用事例～
2004年度作成
| 事業所名 | 合資会社名護不動産商事 21世紀ゴルフクラブ | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 沖縄県名護市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 不動産業、ホテル21世紀、21世紀ゴルフクラブ、（有）ナチューラ（農場） | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 20名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 2名
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 21世紀ゴルフクラブ |
1.事業所の概要と障害者雇用の動機
（1）事業所の概要 |
| 名護不動産商事は、昭和53年5月に設立され、名護市を拠点とした不動産事業以外にも、沖縄の観光特色を活かしたホテル経営やゴルフ場経営を行っている。人が好きで、人の喜ぶ顔をみたい、困っている人の力になりたいという想いから、障害の有無を問わず誰でも働ける場所の提供として、農場を運営している。この農場では、薬草を中心とした沖縄の特産品の有機栽培と障害者雇用支援を目的としている。実際に畑を耕し、機械操作を行い、物を生産するという過程を通して働く喜びが得られることを願ったものである。 |
（2）障害者雇用の動機 |
| 障害者雇用については、特に障害を意識していない。障害者雇用のきっかけは、知人のすすめで、ホテルのルームメイキングとして雇用したことからはじまり、現在は、肢体不自由者1名、知的障害者1名、計2名を雇用している。 |
（3）ゴルフ場のグリーンキーパー |
| 今回は、ゴルフ場においての障害者雇用を中心にお話を伺った。 知的障害者のAさんは、当農場で働いていたが、農作業を通して体力もつき、機械操作にも慣れてきたということもあったので、ゴルフ場のグリーンキーパーとして適しているのではないか、という判断からゴルフ場での採用を決定した。働くことのできる場所の提供は、働く意欲を引き出すことに加え、ステップアップの可能性を持っているという好事例である。
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2.障害者雇用のための工夫・対策
（1）家庭・学校・雇用支援機関との連携 |
| 仕事を継続する上で、生活習慣が大きな影響を与えるため、家庭の果す役割が重要となる。Aさんは屋外での作業が多いため、冷房のきいた部屋で過ごすことを控えさせることや、水分補給の習慣づけ等、季節によって異なる健康管理を中心に家庭の協力を得た。 養護学校からの実習受け入れも行っている。通常は、養護学校からの依頼によりスケジュールなどを調整して受け入れている。しかし、「仕事を教える際に、ジョブコーチ的役割の人が必要と感じることもあり、ハンディの重い実習生にどう対応していいかわからずに困ったことがある」と語っておられた。障害者雇用に対する前向きな姿勢はあっても、障害者の雇用支援に関する情報不足のために、障害者雇用は困難と考えてしまう事業所が少なくないことも指摘された。 |
（2）少人数雇用 |
| 障害者雇用に対して配慮している点は、障害者の少人数雇用である。彼らは注目されたい！という意識をもっていることと、障害者を多数雇用すると、目が届きにくく職業支援体制がおろそかになる恐れがあるためという理由からである。障害者雇用は、障害者を中心に置いた連携が必要となってくる。障害者に焦点を合わせることで、学校・家庭・各関連機関等、彼らを取り巻く支援者と連携してサポートしていける態勢を整えることができる。 |
（3）同僚の理解 |
| 障害者雇用の継続は、雇用者だけでなく同僚の障害者理解が大きなカギとなってくる。障害を理解し、優しく支えながら何度も繰り返し教えていくことが必要だからである。同僚が障害者の作業を支援していく際には、障害者ができることは認めてあげ、できないことを支援する体制を形成することで、両者の仕事の負担は軽減されるという。 Aさんの仕事内容に関しては、グリーンキーパーということもあり、機械作業なども含まれる為、安全性を考えると、ひとりで作業させないようにしている。炎天下の作業の際には、水分補給を忘れがちになるため、ペットボトルに工夫をしたり、パートナーが飲むときに一緒に飲むよう意識付けを行っている。
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（4）賃金 |
| 賃金に関しては、県で定める最低賃金より100円低く設定している。その理由は、誰かと一緒に仕事を行うことは可能だが、まだ不十分な面が多々あるため、モチベーションという意味でも技術・能力が上がることで昇給も考えており、本人・家族共に了承済みである。 |
（5）コミュニケーション |
| 「休日のボランティア活動をはじめ、職場以外でもAさんと共に活動できる場を見つけ、コミュニケーションをとる機会を増やしたい」と話しており、Aさんという人間について知るために色々な視点から接したい、という社長の姿勢がみられる。 |
3.障害者雇用のメリットと課題
（1）接客姿勢の向上 |
| 社員を対象として、障害に関する勉強会を開くものの、実際現場に出たときにそれらの知識が生かされないことがしばしばあった。しかし、問題に直面するたびに何度も説明し解決していくことで、次第に障害者に対する理解を示すようになった。「これが正しいことだよ」と示すことにより、従業員が障害者の見本となる行動をとるようになった。 また、接客業であるため、障害者と接することで以前よりも優しい気持ちで心の底から接客する姿勢が形成されてきた。「障害者を雇用することで多くのことを得ましたよ」と笑顔で話してくださったように、これらも障害者雇用の隠れた大きなメリットと言えるであろう。実際に働いている現場では、Aさんと他の従業員らは打ち解けた雰囲気で笑顔が絶えず、のびのびと作業している光景が印象的であった。障害者と健常者の隔たりがない職場であった。 |
（2）今後の課題 |
たとえば、雇用側からの要望として、「仕事をしていく上でコミュニケーションスキルは重要であり、最も基本的なあいさつはできるよう、養護学校卒業までにはしっかり定着させてほしい」といった条件を学校側に提示する一方で、「卒業後の就職を目標としているため、実習生を受け入れてほしい」といった養護学校側からの要望を積極的に受け止めていくといった関係である。このような考えを持った事業所が増えていくことを願っている。 お話を伺った東江司社長は、中小企業同友会でも障害者雇用に関する部会を企画するなど他の企業へも積極的に啓蒙し、障害者雇用の促進を願っておられた。こうした事業主の方々の地道な努力と実践が障害者雇用促進のカギを握っている。 （執筆者：琉球大学教育学部障害児教育講座助教授 田中敦士） |
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