知的障害者が保育園の先生になった～保育所における知的障害者の雇用事例～
2004年度作成
| 事業所名 | 社会福祉法人恵福祉会 つぼみ保育園 | |||||||||||||||||||||
| 所在地 | 沖縄県豊見城市 | |||||||||||||||||||||
| 事業内容 | 保育所 | |||||||||||||||||||||
| 従業員数 | 27名 | |||||||||||||||||||||
| うち障害者数 | 1名
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1.事業所の概要と障害者雇用の経緯
（1）事業所の概要 |
| つぼみ保育園は昭和53年4月に保育所として開所。乳幼児の福祉を積極的に取り組み、職員・家庭・地域が一体となった保育を行うことを目的としており、乳児保育をはじめ子育て相談事業、子育てサークル育成援助、障害児保育を行っている。異年齢交流活動や老人施設との交流活動等、子どもの明るく豊かな心を育めるような活動を行っている。 平成13年4月より子育て支援センターも開所しており、育児相談や園児との交流保育、育児講座等さらなる児童福祉の充実に努めている。 |
（2）障害者雇用の経緯 |
今回がはじめての障害者雇用であるため、雇用に当たって職員からは、「障害に関する知識がない」「障害者にどのように接していけばいいかわからない」などの不安の声もあがったが、雇用に踏み切ったとのことである。 |
2.知的障害のあるAさんの採用と家族・学校との連携
| 保育園の近所に住んでいるAさんは、養護学校高等部に在籍中は、生徒会長を務めており、子どもが好きで保育士になりたい！という希望をもっていたため、園長は「この子ならできる」という確信をもった。これまで保育園での障害者雇用の事例を聞いたことがなく、通勤距離の便利さと本人の希望の合致という好条件において、ぜひとも雇用を成し遂げたい、という園長の強い希望のもと、採用を決定した。 とにかく家族の支援が最も重要と考えた為、園長は家族と本音で向き合い話し合った。 Aさんは、性格的に人見知りをするため、勤務当初は仕事内容を質問することができずにこだわり行動を起こしたり、アレルギーのため身体中をかきむしったりする等、仕事に支障をきたす行動があった。園長と母親で話し合うことで、家庭においても基本的な挨拶ができるよう、また、アレルギーの治療にも協力してもらうことで継続につなげるよう努めた。現在は、職場においてささやかな進歩があった場合や、保育園の行事を通してAさんの働きぶりを見に来てもらえるよう文書でお知らせしている。 養護学校との連携としては、雇用の際に制度に関して相談に乗っていただいた。園長の娘も養護学校に在籍していたということもあり、学校とは連絡の取りやすい状況であったためである。
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3.知的障害者雇用のための工夫・対策
（1）同僚の理解 |
| 雇用主だけが障害者理解を示すだけでは継続にはつながらない。現場の同僚に障害者理解を促すと共に、家庭での支援体制も重要である。職員が障害を理解することは、実際の現場においてのサポート体制の確立につながるため、障害者の仕事に対する不安感・負担感の軽減になり、継続的な雇用が可能となる。 「笑顔で挨拶ができた」「布巾をきれいに絞れるようになった」など、毎日接する上で発見できる些細な進歩を見つけてあげ、困難点・改善点は同僚が指導し、無理がある場合は監督者（主任）が指導を行うよう努めている。 |
（2）仕事の明確化 |
| 子どもの支援方法が年齢ごとに異なるため、仕事の明確化を図る上で、Aさんの担当クラス（対象年齢児）を固定化した。対象園児を固定化することで、仕事の手順や子どもへの接し方が固定されるため、仕事に対する混乱を防止し、スムーズに仕事をこなせるようになった。 子どもを見る仕事であり、やはりAさん一人に子どもを任せることはまだ不安な部分もあるため、常に他の職員がサポートという形で配置している。発表会などの行事の際は、全職員に共通したシナリオを作成し、プログラムに沿って、各職員の役割分担まで細かく記すことで円滑に行えるような工夫があった。 |
（3）労働条件 |
| 給与に関しては、ハローワークに相談して固定給を支給している。週40時間以内の勤務（月～金）と定めているが、土曜日も出勤したいという態度を示しており、仕事に対しての意欲的な態度が認められる。 |
（4）社員交流 |
| つぼみ保育園では、園の行事の打ち上げや忘年会など、職員交流が盛んである。職員交流の飲み会の席で、初めてのお酒で二日酔いを経験したAさんだが、積極的に参加している。当初、このような集まりの際には園長が送迎を行っていたが、現在では職員同士で分担してAさんとの親睦も深まった。実際に働いている現場では、他の職員と同様に活き活きと働いている姿が印象的だった。仕事をする上でも、職員間の連携が重要となってくるため、このような交流の場を活用してどんどんコミュニケーションを図ってほしいと考えている。 |
4.今後の展望
| 知的障害者の働きやすい職場として、保育園は適しているということを同業者にもアピールしていきたい。園長らが集まる機会があれば積極的に啓蒙していきたいと考えている。 障害者雇用に関して抵抗のある事業所が多くあると思われるが、支援機関との連携により助成金制度等を活用したり、相談を受けて頂くといった関係を築いていくことで、雇用に関する困難点・不安感は取り除くことが十分にできる。「職員の障害理解」は最も重要な課題であるが、これができれば障害者の継続雇用は可能である。職員には障害者と接する機会を多くもってほしいと願っている。 （執筆者：琉球大学教育学部障害児教育講座助教授 田中敦士） |
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