事業所名

やまと鋳造工業株式会社

所在地

青森県八戸市

事業内容

鋳鉄製都市景観材、照明柱LEDソーラー灯、車止め、機械鋳物、ダクタイル鋳鉄異形管、各種機械加工塗装及び組み立て。

従業員数

28名

うち障害者数

7名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	5	製造・研磨
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	1	雑役
精神障害	1	研磨

目次

1. 障害者雇用の経緯
2. 聴覚障害者への対応
3. 資格取得
4. まとめ～物を作るという誇り

社屋正面

1. 障害者雇用の経緯

　やまと鋳造工業は、昭和36年5月に設立。
　昭和53年に、同業種で勤務経験のある聴覚障害者をはじめて採用した。特に障害者雇用にこだわったわけではないが、経験者でもあり採用してみたとのこと。
　「初めての障害者雇用でどのような対応を？」とやまと鋳造工業の担当者の方に質問したところ、「取り立てて難しいことは考えなかった。あくまでも業務の経験者という判断であった」と、淡々とおっしゃっていた。

　その後も、障害者採用にこだわったわけではないが、結果として、障害者従業員は現在7名になっている。
　知り合いからの依頼で知的障害者を1名、職業安定所からの紹介で精神障害者を1名採用、その他は全て聴覚障害者である。聴覚障害者については、他社の事例でもあるように、障害者同士の情報交換から応募してきたこともあったようである。

2. 聴覚障害者への対応

（1）雇用当初のとまどい

　取り立てての障害者雇用への身構えは無いとのことであったが、何か話題の種は無いものか話を向ければ、次のような思い出話を聞くことが出来た。
　現在、聴覚障害者との連絡や意思疎通の呼びかけには、社員みんなで気を付けるようにしているが、聴覚障害者を雇用した当初は、社員みんなが呼びかけの方法が分からず、聴覚障害者に気づかせるために、悪気はないまま、聴覚障害者の視界に入るように物を転がして気づかせるという方法をとっていた。聴覚障害者本人から「物投げ」ではない方法にしてほしいとの要望があり、それ以来、直接本人の近くへ出向き肩を叩くようにして呼びかけるように変えた。
　障害者とのやり取りの呼吸が分からない同僚たちが、障害者本人からの申し出に快く対応を変えていく職場の暖かさが感じられる一件である。

（2）手話でないコミュニケーション

　聴覚障害というと一般的には「手話」が必要と考えてしまうが、当事業所では「手話」を前提とした体制は取っておらず、仕事上も特に問題なく、気にしていないとのこと。
　必要な事は多少の身振り手振りで十分であり、ゆっくりとした話し振りなら会話は成立するとのことであった。相手の気持ちをくみ取ろう、こちらの気持ちを分かってもらおうという事さえしっかりしていれば・・・という職場状況は、我々が忘れていた人と人とのコミュニケーションの根幹を思い知らされる思いである。

3. 資格取得

　当事業所では鋳物製品の製造という比較的重量物や大型組み立て物を扱う関係で、クレーンや玉掛け操作業務がある。
　障害者の中でその操作業務に興味を持つ者がおり、会社側で資格取得挑戦を働きかけたところ、2名の聴覚障害者が希望し、結果として資格を取得した。資格取得後の仕事ぶりは、仕事に自信と責任感が生まれ、早朝出勤も厭わず楽しんで仕事をしている。
　「自分のやりたい仕事」が、「自分が出来る仕事」となり作業範囲が広がり、今では「自分でなければ出来ない仕事」を目標に仕事に誇りを持つようになったとのこと。技能職なだけに、自分の技能のレベルアップが手応えある資格取得というものに結びついた好事例であろう。
　年配者の障害者にも資格取得を働きかけたが、本人が年齢を考えての結論か、ジックリとした現状業務での希望となった。
　今回は、たまたま、障害者が資格を取り活き活き仕事をしている事例ではあるが、仕事に油の乗りはじめた年齢の資格へのチャレンジ意欲と、ベテランの腰を据えた業務をしたいという意識の違いは、障害者も健常者も無い経年による考え方の違いなのかもしれない。

4. まとめ～物を作るという誇り

　「障害者の従業員が、社員旅行の際に旅行先でたまたま目にした町中のモニュメント等を見つけては、『これは俺が作ったものだ』と楽しげに語っていますよ」と語る社長の表情は、本人たち以上に楽しげで穏やかな表情であった。
　物を作る者で無ければ味わえない感慨なのであろう。
　後世に残る仕事に携わる喜びは障害者も健常者も同じではあるが、あの汗にまみれた工場での仕事の成果が世の人に安らぎを与えているであろう事を考えると、当事業所を職場とする障害者の人たちの誇りある仕事ぶりに頷かされるものがある。
　訪問中の会話の中での社長の何気ない「健常者の若い人は製造現場を嫌うし、勤めても長続きしない。障害者の人は熱心に仕事してくれる。」という言葉に、一面で若年労働者の就職難や高い離職率が世を騒がせているが、就職指導の側に就職の何たるかの認識が不足しているのではないかと、ふと考えさせられた。