障害者雇用のための設備改善とコミュニケーション
- 事業所名
- 株式会社ミヤモリ
- 所在地
- 富山県小矢部市
- 事業内容
- スポーツカジュアルウェアの企画・設計・製造
- 従業員数
- 138名
- うち障害者数
- 4名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 2 スポーツウェアの刺繍・縫製 肢体不自由 1 スポーツウェアの仕上げ 内部障害 1 生産管理(主に外注管理) 知的障害 0 精神障害 0 - 目次
1. 事業所の概要
(1)事業内容
当社の事業内容は、スポーツカジュアルウェアの企画・設計・製造で、主な取り扱いアイテムは、スポーツウェア(ニット主体)、トレーニングシャツ、パンツ、トレーナー、ポロシャツ、レディスカットソー等ジャンルは広い。ミヤモリグループ全体として、スイムウェアからカットソー・布帛まで、大ロットから小ロットまで短納期オーダーでフレキシブルに対応し、製品の企画・設計段階から手がける一貫生産体制をとっており、お客様の多様なニーズに対応できるのが特色である。年間生産量は100万枚余である。現在の代表者は宮森利隆氏。
(2)沿革
1966年 | 前々社長の宮森外吉氏(故人)と実弟の宮森慶男氏(前社長、現取締役会長)の2人で小矢部市の平桜地区(現北陸道小矢部IC付近)で創業。従業員5人、総勢7人でスタート。 |
1970年 | 法人化。 |
1972年 | 業績の伸長にともない埴生工場新設。 |
1978年 | 石動工場を新設、TQC(全社品質管理)活動を推進。 |
1984年 | 現在地にFA工場を増設、CAD/CAMシステムを導入し、設計から製造までの自動化ラインを導入。 |
1991年 | スポーツウェアの企画製造専門の姉妹会社「(株)アクトリー」を設立。 |
1998年 | ISO9001を取得 |
(3)設備等
・工場屋内面積 | 5,500平方メートル | |
・主な生産設備 | CAD/CAMシステム イートン社製のハンガーライン ・・・ 2連 自動刺繍機 ・・・・・・・・・・ 10連 ミシン ・・・・・・・・・・ 200台 検針機 ・・・・・・・・・ 3台 |
2. 障害者雇用の経緯・背景
当社がはじめて障害者を雇用したのは、現会長の宮森慶男氏が専務をしていた平成3年7月に遡る。当時はバブル経済の最盛期で、世間はたいへんな人手不足であり、かつ当社工場が郊外にあって通勤に時間がかるという立地条件も重なって女性労働者の確保に苦労していた。
求人のため、公共職業安定所を訪問した際に、担当官から障害者の雇用を強く勧められた。障害者を雇用していくうえで設備改善等を要する場合の助成金制度があること、障害者を雇用する義務があることなどの指導をうけた。また、そのときにもらった障害者を雇用している他社の好事例を紹介した冊子を読んで、障害者が健常者と共同作業を行っているいきいきとした姿や、作業改善など環境整備を行えば健常者の能率とほとんど変わらないことがわかった。それまでは当社では、障害者の雇用ははなから「むずかしい」との認識であった。
同年10月に、聴覚障害者のA子を採用した。京都の電器メーカーで電機部品の検査工をしていたという前職があったが、本人の希望をいれて刺繍工程に配置した。その後、A子からの改善提案や職場改善推進チームによる作業改善や環境整備をすすめた。その後、随時障害者を採用して、現在4名の障害者が就業するにいたっている。
障害者雇用に関する表彰は以下のとおり。
1987年 社団法人富山県障害者雇用促進協会長表彰受賞
1994年 富山県知事表彰受賞
2004年 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構理事長表彰受賞
3. 作業工程及び障害者の作業場所
(1)主な作業工程のフロー
(2)障害者の受け持ち作業
- 聴覚障害者 2名
刺繍工程または縫製工程 - 下肢障害者 1名
仕上げ工程 - 内部障害者 1名
生産管理(外注発注管理)
4. 障害者雇用の具体的な取り組み
(1)先行企業の見学
会長はじめ障害者職場定着推進チーム、改善推進チームのメンバーが県内の障害者雇用のモデル事業所を見学し、障害者雇用に係る取り組み状況や障害者と健常者との関わりなどについて体感した。
(2)設備およびレイアウトの改善
ア | 作業中に異常(刺繍糸の切断など)が発生した場合における異常検知センサー改善や異常を知らせるパトライト(青、黄、赤の各色)の設置、異常発生時の機械自動停止装置の設置等設備改善を行った。 |
イ | 作業工程間の移動距離を解消又は短縮するための作業セル改善およびレイアウトの改善を行った。 |
ウ | 作業場の床の段差を解消しバリアフリー化した。 |
(3)手話の習得
コミュニケーションは当初すべて筆談であったが、聴覚障害のA子は休日にはボランティアで手話サークルの講師をするようになり、また、天性ともいえる明るい性格で職場の仲間ともすぐに打ち解けた。まもなく会社からの支援もあり、職場の仲間が次々と手話サークルに入会して手話の勉強をするようになった。
(4)健康管理
従業員の健康の維持・向上ならびに従業員間のコミュニケーションの広がりを期待して、エアロバイクやウォーキングマシンなどの運動器具類を配置したフィットネスルームを新設した。これは、従業員からの改善提案を採用して実現したものである。
(5)情報の伝達方法の改善
ア 朝礼等での伝達事項のうち重要なことは原則文書で伝達する。
イ 掲示板を増設した。
(6)職場巡回
トップの職場巡回回数を増やし、できるだけ声をかけて励ます。(もちろん他の従業員にも同様に!)
5. 障害者雇用の効果とメリット
(1)社員の理解
障害者であっても、設備・作業工程・作業環境等の改善を積み重ね、また、本人の努力と周囲の人々の理解と協力によって殆ど健常者とかわらない生産活動ができることを周囲が理解するようになった。
また、他の職場の従業員も触発されて自主的に手話サークルに参加して日常会話が手話でできるようになり、障害者とのコミュニケーションの輪が広がった。現在では、通常の業務連絡程度の内容は“口話”だけで理解しあうことができるようになった。
(2)社員の社会参加意識
会長はじめ会社のトップから従業員までが、小矢部市主催の身障者運動会など身障者行事に広く参加するようになるなど、従業員の社会参加意識が高まった。
(3)品質管理活動の推進
TQC(全社品質管理)活動の一環として小集団活動(サークル活動)や改善提案活動を続行しており、例えば改善提案の一人当たりの年間目標件数は10件であるが、障害者の方からの提案件数は全従業員の平均をはるかに上回っている。
高嶋リーダーの話では、障害者の積極的な参加が全員参加のTQC活動推進の支えになっていると言っても過言ではない。
(4)今後の展望
いま国内繊維産業は海外との競争が熾烈であり、当社も奮闘している。商品戦略をさらに強化して業容の拡大を図り、従業員全員で築いてくれている“宝”をさらに光り輝かせたいと考えている。(宮森会長談)
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