事業所名

日清医療食品株式会社　中部支店　北陸営業所

所在地

石川県金沢市

事業内容

病院、医院、老人福祉施設の入所者等に対する、給食受託業務及び食品販売業。

従業員数

610名

うち障害者数

10名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	4	調理補助
内部障害	0
知的障害	5	調理補助
精神障害	1	調理補助

目次

1. 事業所の概要と障害者雇用の経緯
2. 知的障害のあるN君のプロフィール
3. N君が受講した職業訓練
4. N君の就職活動と入社までの経緯
5. N君の仕事内容
6. 今後の課題・展望等

日清医療食品（株）中部支店北陸営業所

1. 事業所の概要と障害者雇用の経緯

　当事業所の事業内容は、病院、医院、老人福祉施設の入所者等に対する、給食受託業務及び食品販売業である。「食」を通じ医療 ・介護を支援させていただく事を使命と考え、信頼と満足を得る心のこもった食事を提供している。
　障害者雇用には前向きに取り組んでおり、ノーマライゼーションの理念の基で、障害のある人もない人も関係なく、同じ職場で一緒に働く仲間として受け入れている。
　中部支店北陸営業所（石川県・富山県）では、現在10名の障害者が勤務しており、内訳は身体障害者4名、知的障害者5名、精神障害者1名である。
　また、毎年開催されている公共職業安定所主催の「障害者就職面接会」には、積極的に参加してきている。
　今回は、知的障害のあるN君を、委託契約先の老人福祉施設で採用したケースを報告する。

2. 知的障害のあるN君のプロフィール

　N君は、23歳、男性。障害名は知的障害（療育手帳B）である。
　N君の特性は、明るくて社会性を持ち合わせている反面、内面的には不安定で他人との協調性にやや欠ける面も見受けられた。また、人と接する時に、本当の自分を認めてもらえないという不安感を持ち合わせているように感じられた。
　しかし、「就職」という目標設定ができてから、精神的に強くなり、同僚間の協調性、人間関係も良くなった。

3. N君が受講した職業訓練

（1）石川障害者職業能力開発校

石川障害者職業能力開発校

　N君が受講したのは、石川県石川郡野々市町にある石川障害者職業能力開発校である。一般の職業能力開発校で職業訓練を受けることが困難な、身体障害又は知的障害のある方に対して、職業能力開発を行うために設立された国立県営の公共職業能力開発施設で、障害者の能力に適応する職種について基礎的な「知識・技能」を習得させ、職業人としての職業の安定と地位向上を図ることを目的としている。

（2）受講した訓練科目

　N君が受講した生産実務科では、介護サービス、清掃管理、園芸、物流、応接、ワープロなどの訓練を通じ、就業に必要な職場適応能力を体得し、個々の能力・適性を引き出す基礎技能を学ぶ。

• 普通学科（年間：471時間）
  漢字の読み書き、簡単な四則計算のほか、「情操教育」としてのコミュニケーションの取り方、職業生活の自立に向けた応接法、道徳などを学習。
• 基礎学科（年間：158時間）
  家事援助を中心としたホームヘルパーの基礎学科を主体に、園芸、流通サービスなどの基礎知識を学習。
• 基礎実技（年間：803時間）
  介護サービス、清掃管理作業を主体に、園芸作業、ワープロ基本作業などを学習。

（3）職業訓練受講の評価と成果

ワープロ操作の実習

　N君は、職業訓練を受講する以前は某旅館に勤務しており、社会経験を持ち合わせていたが、職場における人間関係で悩んでいた。
N君の指導方針としては、グループ活動の中で感情のコントロールの仕方に焦点を当て、感情を言語化させ話させることにより、自分の気持ちを整理させるよう指導した。この結果、集団行動がとれるようになり、精神的な落ち着きが見られるなど感性のコントロールに改善、進歩が見られた。
技能習得の面では、ワープロ検定3級に合格し、介護サービス、清掃管理技能等の実技課題に積極的に取り組み、技能を習得し判断力も付き訓練効果が見られた。

4. N君の就職活動と入社までの経緯

　N君は、職業訓練を受講する以前から老人との会話やお世話などに興味を持っており、老人ホーム関係の職場で働くことを希望していた。
　そのような状況の中、石川障害者職業能力開発校では、生産実務科の訓練生に対して、介護サービス教科の一環として某老人ホームでの現場体験実習を実施した。N君は、入所中の老人達と親しく触れ合う機会を得ることが出来、福祉方面への関心を更に深め、老人福祉関係の職場で働く意志を強めていくことになった。
　また、石川障害者職業センターの指導により、「石川ワークトレーニング社」にて2週間の就業前訓練を受講する機会も得ることができ、基本的労働習慣や職業に関するトレーニングを体験することができた。
　そんな折り、平成16年9月の金沢公共職業安定所主催の「障害者就職面接会」で、老人福祉施設などで給食を賄うという当社の求人情報を入手した。前職で調理を担当していたという経験と好きな老人相手の職場ということが合い重なり、N君にとって最高の求職条件ということで入社面接を受けることになり、採用するに至った。
　入社にあたっては、石川障害者職業センターのジョブコーチ制度を2カ月間活用することができ、特別な問題点もなく職場に定着することができた。仕事に慣れ現場での本人の適性を見極めるための3カ月間の試用期間を終え、N君は現在、嘱託従業員として雇用されている。

5. N君の仕事内容

（1）N君の仕事ぶり

　N君の就労場所は、当社の契約先である「春日町ケアセンター」（石川県金沢市）である。
　勤務時間は9:00～18:00（1時間休憩）で、調理師の指導の下での調理補助員として非常に積極的に頑張っている。1日の仕事の流れは、食器の洗浄・昼食盛り付け・切り込み・（休憩）・食器の洗浄・夕食盛り付け等である。
　体制としては、毎日一緒に作業をする担当者を決め、その人と作業を共にしている。また、N君が1人で作業をしている時も必ず担当者が作業ぶりを確認するように努めると共に、丁寧にわかりやすく物事を伝えるよう心掛けている。
　現在では技術指導をする必要はほとんどなく、本人の様子を見てフィードバックすればよい程度である。

（2）通常業務のスケジュール

　 9:00　朝食用食器の洗浄作業
　10:00　昼食の盛り付け作業
　13:00　休憩（昼食）
　14:00　昼食用食器の洗浄作業
　15:00　食材の下処理作業（切り込み等）
　16:00　夕食の盛り付け作業
　17:00　厨房内の清掃作業
　18:00　終業

春日町ケアセンター

食器の洗浄作業

（3）N君の評価

　N君の仕事への意欲は人一倍強く、一度言ったことはほとんど忘れることなく、与えられた作業に精を出している。今では1日の仕事の流れを自分のものにしており、メニューを見ただけで当日の作業内容をつかむことが出来、スムーズに作業をこなしている。
　入社当時は、緊張していたためか口数が少なかったが、休憩中の会話をする際に、N君にも積極的に話しかけコミュニケーションを図るように心掛けた。その結果として最近では仲間とうち解けあい、朗らかに世間話もするようになり、仲間からも可愛がってもらっている様子である。

6. 今後の課題・展望等

　当事業所の障害者雇用に関する取りくみの現状としては、公共職業安定所等を通じて積極的に障害者の雇用を行っている。今後も更にマニュアル等も踏まえ、障害者と健常者が共存して働きやすい環境作りをして行く中で、サービス業として対応できる人材の育成並びに、障害者が自立できる職場体制を整えたいと考えている。